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企業のSDGs情報発信、“分かりやすさ”が重要

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学生の声「用語難しい」「信用できない」
持続可能な開発目標(SDGs)達成に貢献する活動を分かりやすく発信してほしい―。記者がSDGsの活動に力を入れている千葉商科大学で学生に企業のSDGs関連の情報発信について聞いたところ、改善点が見えてきた。授業でSDGsを学ぶ学生も多く、具体性を欠いた発信は「表面的」や「信用できない」と映る。せっかくの活動を社会に伝えるため企業には情報発信の工夫が求められる。(編集委員・松木喬)
SDGs学生アンケート
千葉商大の協力を得て1年~3年生の学生29人にアンケートを実施した。「SDGs達成に貢献する」と宣言した企業のイメージについて27人が「良い」と回答しており、好感を持っている学生が多かった。企業のウェブサイトでSDGs関連の情報収集するか聞いた質問では「よくする」が1人、「たまにする」が21人、「しない」が7人で、閲覧頻度は高いとはいえなかった。
企業から発信するSDGs情報の受け止め方はさまざまだ。「自ら社会の問題に取り組み、発信しようとしていて素晴らしい」「企業の発信によって、さまざまな人がSDGsに関心を持てるため良い」「社会や人々の生活を豊かにするために取り組んでいる印象を得ることができ、素晴らしい」と評価する声があった。
一方で「難しい用語や固い言葉を使っていて信用できない」「表面的な貢献しかできていないのに堂々とアピールしている企業にうさんくささを感じる」「すべてをうのみにしていない。都合の良いことしか載せていないと思うため」「企業のSDGsに対する発信力は皆無に等しい」など厳しい見方があった。

活動の具体的記述・写真に好感

改善の参考になる感想も多かった。「ホームページに分かりやすく記載してあって難しそうな内容でも楽しみながら閲覧できた」「専門用語の説明が書かれている企業の発信は信用しやすい。分かりやすいので読む気にもなるし、その企業にも興味を持つことができる」というように、分かりやすい発信は信頼を得られ、読んでもらえる。
また「みんなに伝わる言葉で具体的な活動を述べた上だと信用できる」「詳細な説明と写真から、しっかりと取り組んでいると感じた」「活動の写真など具体的な内容が分かる企業は信用ができる」「もっと活動内容をオープンにしてほしい」など、具体的な発信も望んでいた。
さらに「企業内だけではなく消費者を巻き込んだ事業を展開した方がよい」という提案もあった。国連は社会課題を解決するためにイノベーションの発揮を企業に求めており、本質的な意見だ。

アンケートを受けて「具体的活動」に要望多く

学生と直接、会話する機会があり「うわべだけ取り繕った“SDGsウォッシュ”の見分け方は」「進んでいる企業は」「アルバイト先はSDGs企業と言えるのか」などの質問を受けた。企業の活動を見極めたいニーズがあるのだろう。難解な専門用語を並べても、せっかくの取り組みが社会に伝わらない。具体的な活動を知りたい要望が多く、SDGsの情報発信の参考となる声を聞くことができた。
※記事提供:日刊工業新聞(2021年10月15日)

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