米ブルームバーグ、「ASEANビジネスサミット」開催、タイ・マレーシア両首相らが登壇

 タイが議長国を務めるASEAN首脳会議(6月22~23日)を控え、米総合情報サービス大手ブルームバーグは21日、バンコク都内で「第5回ASEANビジネスサミット」を開催した。3月の総選挙を経て、再任したタイのプラユット首相は、「景気は下降気味だが、タイの経済は将来の成長を支える基礎的条件が整っている」と講演し、政府はインフラプロジェクトと主要な工業地帯への投資、農業分野への支援を引き続き行う考えを明らかにした。他のASEAN諸国とは、貿易・投資・観光などの分野での接続性(コネクティビティ)を強化し、国民の生活水準の向上を図る。

 続いて行われたセッションには、同地域の政府機関や民間企業のトップが登壇し、デジタル経済、自動車、不動産から投資、インフラ、男女同権、観光まで幅広い分野について議論した。どの業界にとっても、事業活動の停滞につながりかねない米中の貿易・ハイテク戦争は懸念材料だ。

 次世代(5G)通信網構築の競争で中国の通信機器大手ファーウェイの後塵を拝する米国。ネットワーク機器の開発・製造大手、シスコ・アセアンのメノン社長によると、保険・金融・製造などの関連企業は個人と企業のデータをクラウドサービスに任せる傾向にあるが、自社のサーバー機やデータセンターなど複数のチャンネルを使い分けることが、有効なセキュリティ対策となる。

 中国経済の減速は不動産業界に及ぶ。シンガポール系不動産開発大手フレーザーズ・プロパティが、第2の重要市場とみる豪州の住宅価格が下落している。一方、伸びしろのあるベトナムで住宅や小売などの事業を拡大する計画だ。タイでは現在、バンコク中心地に大型複合施設「One Bangkok」を共同で開発中。パノーテCEOによると、第1フレーズは23年に完了し、25年に全面開業となる見通しだ。

 港湾などインフラ整備事業を透明性が欠ける中国に託したスリランカ、モルディブなどが、「債務の罠」にはまったとの批判に対して、アジアインフラ投資銀行の金立群総裁は口を濁した。一方、東部経済回廊(EEC)事務局のカニン局長は、中国のタイへの投資に期待を示した。

 1週間前にベトナム初となる国産車を発売したビングループ傘下ビンファストのトゥイ・レ会長は、「自動車の普及率はタイの10分の1で(人口約1億人の)国内市場の潜在性は投資に見合う価値がある」と自信を示す。同グループは国内最大の財閥で資金は豊富。輸出ほか、電動自動車の生産・販売を検討している。

 女優兼モデルで社会活動家のシンディ氏は、「アジアで男性による暴力・性的暴行を受ける女性が減らない。セクシーな服装を着ているからセクハラしてもよいと言った認識が依然残っている」と訴えた。職場での女性活躍を推進する資生堂アジア太平洋のシャリエ社長兼CEOは、「女性の社会進出度で日本は常に世界ランキングで底辺にいる。日本の本社は20年までに女性管理職の割合を40%に引きあげる取り組みを行っている」と述べた。

 トリを務めたのはマレーシアのマハティール首相。93歳の高齢にかかわらず、司会者の厳しい質問にユーモアを交えて答えた。中国との関係については、同国主導の高速鉄道建設計画を就任後に一度撤回したが、「200億リンギットの費用減となった」と再開する見通し。フェーウェイの通信機器導入も「現在のところ、安全保障上の脅威とならない」と前向きな姿勢を示した。「中国はアジアの超大国で東南アジア諸国は『一帯一路』構想に耳を傾けなければならない」「米国と中国のどちら側にも付かない。マレーシアはすべての国々と友好な態度で接する」と付け加えた。

 国の巨額な債務削減を、赤字経営の続くマレーシア航空の売却を含め、退任前に解決したい最大の課題に挙げた。スマートフォンなどに依存する若者が増えていることに懸念を示したが、「若者と(ハイテクに弱い)年寄りの組み合わせが理想だ。年寄りは年を取っているほどよい」とユーモアで聴衆の心をつかんだ。

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