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【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

インドネシアに再挑戦する現代自動車の算段

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    現代自動車(以下、現代)は、インドネシアのジャカルタ近郊チカランに15.5億米ドルを投資して、年産15万台の工場を立ち上げ今年後半から生産を開始する。市場シェアの95%以上を占める日系メーカーの牙城でなぜ生産拠点の設立に至ったのか解き明かす。

    近年はアセアンでシェア低迷

    現代のアセアンでの販売台数はこの数年7万台程度と低迷している。要因としてまず現地の量販セグメントにマッチしたモデルの不在が挙げられる。

    日系メーカーがアセアン市場に合わせたモデルの開発・改良を行っているのに対して、現代は主要市場である韓国・欧州・中国向けモデルを販売してきた。これまで新興市場では規模の大きい中国やインドに注力してきたこともあり、アセアン向けモデルを開発してこなかった。

    また、アセアンには韓国から部品を輸入して組み立てるノックダウン生産(CKD)拠点しかなく、アセアンの地域特恵関税を利用して輸出できなかった。CKDや完成車輸入による展開は投資コストを最小化できる一方、比較的マージンの高いセグメントしか販売できず、域内の量販セグメントで競争力のあるモデルを投入できない。

    アセアンでのブランド認知度は低く、特に主要市場のタイでは1990年代に品質問題を起こしたこともあり、イメージを完全に回復できていない。アセアンでのブランド刷新が必要とされた。

    政治的な目論みも選択理由に

    その中で現代の拠点化候補として選ばれたのがインドネシアだった。人口2億5,000万人で30年以降は年間販売200万台以上も見込まれる潜在市場としての期待に加えて、政治的な背景もあった。

    インドネシア政府としては国内市場は日系メーカーに独占される一方、輸出拠点にはライバルと目するタイが選ばれ、ハイブリッドなどの先進技術も投資する日系企業にかねてから不満を持っていた。

    そこで白羽の矢が立ったのは、他でもない日本車キラーとして台頭していた現代である。しかも、インドネシアは電動車の拠点化構想LCEV(低炭素排出車)政策を発表したが、2014年~15年に打ち出されたLCGC(低価格環境対応車)に既に投資し、過剰な生産能力を抱える日系企業の反応は鈍かった。

    現代はインドネシア政府の意向に応える形で、輸出及び電気自動車(EV)の拠点とすることを約束し、引き換えに多大な支援を受ける言質を得たとされている。同時期にインドネシアと韓国で二国間経済連携(EPA)を交渉しており、韓国側としても大きな土産を用意する必要に迫られていた。

    現代のアセアンでの成功のカギは、市場と製品のミスマッチを解消し、現地に適した製品開発によって廉価で量販できるかである。インドネシア生産拠点は転換点となるはずだ。

    インドネシアの投資調整庁(BKPM)によると、現代は2つのフェーズで投資する。21年までに年産15万台の工場を建設し、約半分を輸出。22年以降はEV・トラスミッションの生産、R&D拠点・トレーニングセンターの設置し、年産25万台まで拡大する。

    特に注目されるのは、インドネシアで4割以上を占める3列シート7人乗りのミニバンを現地向けに開発していることである。加えて、ブランドイメージ向上の一環として既にEVの販売を開始している。日系メーカーの牙城ミニバン市場と日系が手薄なEVにも先行投資する二段構えの戦略が奏功するか注目される。

    寄稿者プロフィール
    • 田口 孝紀 プロフィール写真
    • 野村総合研究所タイ
      マネージング・ダイレクター田口 孝紀

    • 山本 肇 プロフィール写真
    • 野村総合研究所タイ
      シニアマネージャー 山本 肇

    • 野村総合研究所タイロゴマーク
    • TEL : 02-611-2951

      URL : www.nri.co.jp

      399, Interchange 21, Unit 23-04, 23F, Sukhumvit Rd., Klongtoey Nua, Wattana, Bangkok 10110

    《業務内容》
    経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション

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