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【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

ローカル・外資主導で進められるEVエコシステムの形成

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    タイでは最近、EV関連のエコシステムへの投資が、ローカル企業や中国、ヨーロッパなどの外資系企業を中心に進展しており、日系企業の影は薄い。本稿では、充電ステーション・インフラ関連の主なエコシステムのプレーヤーを取り上げる。

    タイの充電ステーションの状況

    言うにも及ばず、EVの普及には充電ステーションのインフラ整備が欠かせない。EVの走行距離が短いために、公共の場での充電インフラが充実しないと、目的地まで辿りつけない懸念があるからである。

    タイでは充電インフラは2021年1月時点では647ヵ所に留まっており、しかもその約8割は普通充電タイプ(AC)で、タイではEVがまだなかなか普及しない要因の一つとなっている。このように充電ステーションの数がまだ限られている理由の一つとして、充電事業者に対する補助金が少ないことが挙げられる。

    17年~19年の間にエネルギー省の補助金により150ヵ所の整備を計画されたが、補助金事業は19年以降打ち切られている。これが、コストがかさむ急速充電タイプ(DC)への投資が進まない理由ともなっている。

    相次ぎ発表される拡大計画

    しかし近年、①石油・発電・送電関連を中心とする公共企業、②グリーンエネルギー関連民間企業、③スタートアップ企業、④自動車メーカーなどの4つのグループが連携しながら、充電ステーションを中心とするエコシステムが徐々に形成されようとしていることが注目される(図表1)。

    タイのEV充電ステーション関連のエコシステム

    しかも20年以降、コロナ禍にあるにもかかわらず、各社が積極的に充電ステーション拡充計画を発表している。

    例えば、石油会社のPTTは21年3月に充電ステーションを現在の30ヵ所から今年中に100ヵ所、22年までに300ヵ所への拡大を計画している。

    また、セブンイレブンを展開するCPグループのCPALLは〝7 Go Green〟のスローガンの下で、100ヵ所のセブンイレブンの店舗での充電ステーションの設置を打ち出した。また、地方電力公社PEAは22年までに132ヵ所を整備するロードマップを発表した。

    その一方で、グリーンエネルギー系のEnergy Absoluteの傘下にあるEA Anywhereは、業界最大の405ヵ所の充電ステーションを持ち、21年には1000ヵ所に拡大する方針である。BOIから事業者で唯一充電ステーション事業の投資優遇措置の認可を取得し、アジア開発銀行(ADB)などからの融資を受けて、投資を加速化する方向である。

    スタートアップ企業も積極的に他業種の事業会社とのアライアンスを拡大している。例えば、ShargeはPTTと協力してガソリンスタンドにステーションを設置したほか、セントラルグループ、コンドミニアムデベロッパーのSansiri等と組みながら、ステーションを700ヵ所まで拡大する計画である。

    これらのタイのローカル企業がEV関連投資拡大している背景となっているのが、世界的なEVの普及の加速化や事業の「創造的な破壊(ディスラプション)」に備えた新規ビジネスへの投資拡大、政府による充電インフラ事業者に対するコスト軽減措置(電気料金など)などのEV支援策の拡大、ADBのEAへの融資のようなESG関連の資金調達の拡大などが挙げられる。

    外資系企業の積極的な動き

    外資もここに来て積極的にEVエコシステムに向けての投資を拡大している。

    BMWは早くからスタートアップ企業のThe Fifth ElementやGLT Greenと協力しながら充電ステーションChargeNowをエンポリアムやセントラルデパートなど約40ヵ所に展開している。

    上海汽車傘下のMGは販売店を中心に100ヵ所に充電ステーションを設置済みなど、自動車メーカーの中で投資に最も意欲的。EAなどと提携しながら、21年までにショッピングセンターやコンドミニアム開発事業者などと提携して500ヵ所までに拡大する方針である。EVモデルを多数投入していることから、その販売促進のためには自らEVエコシステムに投資する構えである。

    また、台湾系の電子メーカーのデルタエレクトロニクスはタイでEV充電機を供給しており、BOIからEV関連設備事業の投資認可を取得している。また、日産、三菱自動車と販売店での充電ステーションの設置に関して包括的な提携関係を結んでいる。

    出遅れる日系の参入

    以上の各主要プレーヤーの動向から見ると、日系企業の出遅れ感は否めない。日系スタートアップのFOMMがBOIの最初のEV生産事業の認可を取得したが、FOMMのタイ事業に出資したのはエネルギー・石炭事業会社のBANPUであった。

    最近になって、タイでの投資の盛り上がりを見て、非自動車分野の日系大手企業もエコシステムへの参入に関心を高めているが、まだ本格的な投資には至っていない状況にある。

    これは前稿でも説明したように、タイでは日系自動車メーカーがハイブリッドを中心に電動化を進めてきたことが影響していると言えよう。

    寄稿者プロフィール
    • 田口 孝紀 プロフィール写真
    • 野村総合研究所タイ
      マネージング・ダイレクター田口 孝紀

    • 山本 肇 プロフィール写真
    • 野村総合研究所タイ
      シニアマネージャー 山本 肇

    • 野村総合研究所タイロゴマーク
    • TEL : 02-611-2951

      URL : www.nri.co.jp

      399, Interchange 21, Unit 23-04, 23F, Sukhumvit Rd., Klongtoey Nua, Wattana, Bangkok 10110

    《業務内容》
    経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション

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