当ウェブサイトでは、サイトの利便性向上を目的に、クッキーを使用しております。 詳細はクッキーポリシーをご覧ください
また、サイト利用を継続することにより、クッキーの使用に同意するものとします。

タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

ArayZロゴマーク

【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

鴻海とPTTとの提携が持つ意味

  • この記事の掲載号をPDFでダウンロード

    メールアドレスを入力後、ダウンロードボタンをクリックください。
    PDFのリンクを送信いたします。

メールアドレスを入力後、ダウンロードボタンをクリックください。PDFのリンクを送信いたします。

    入力いただいたメールアドレス宛に、次回配信分からArayZ定期ニュースレターを自動でお送りいたします(解除可能)。個人情報の取り扱いについてはこちら

    台湾の鴻海精密工業(Foxconn)がタイの国営石油PTTと、EVとその部品の生産で提携することを発表した。これにより、タイのEVメーカーは鴻海のオープンプラットフォームを利用できると表明。世界最大の受託生産で知られる鴻海のタイ参入は、タイでの早期EV普及に懐疑的な見方が多い日系自動車業界にも衝撃が走った。

    EV開発期間の短縮などが可能に

    鴻海とPTTの協力の可能性

    鴻海は2020年10月、EVのオープンプラットフォーム「MIH」を発表し、自動車メーカーや部品メーカーなどに参加を呼びかけ、既に1,620社が参加を表明している。

    「MIH」は鴻海が1,000億ドル以上投資して開発した。プラットフォームとは車の基本的な構造となる車台であり、EVであればモーター、バッテリー、バッテリーマネジメントコントロール(BMC)、足回りなどで構成される。

    鴻海は自社開発のプラットフォームをオープンにすることで、自動車メーカーのEV開発の短縮化、低コスト化、リソースの節減に貢献できるとアピールしている。資金や資源の制約がある中堅自動車メーカーや新興メーカーは特にメリットが大きい。

    鴻海は共通プラットフォーム及びその部品を多数のブランドに提供しながら、必要であれば完成車の組立まで引き受ける。スマートフォンの受託生産で培ったビジネスモデルのEV展開である。

    既に、新興EVメーカーのFiskerとは23年から米国で年25万台の受託生産することで合意。同社はソフトウェアのプラットフォームの開発も進めており、自動車・部品メーカーなどにEVや自動運転関連のアプリケーションやソリューションを提供し、ハードからソフトまでのプラットフォーマーを目指している。

    PTTと提携した背景には、鴻海が受託生産拠点を探していたことが挙げられる。それはベトナムの新興メーカーVinFastに、EVの生産ラインの買収を提案したという報道からも伺える。

    「MIH」はまだ開発・試作段階であり、今後量産拠点の確保が必須となる。その拠点としては製造コストが安く、サプライチェーンが発展し、輸出インフラが整備されているタイが望ましい。PTTも国営企業として政府に協力する形で、リチウムバッテリーの開発や充電スタンドの設置などEVバリューチェーン全体に投資する方針を打ち出していた。

    鴻海からプラットフォームが提供され、量産化まで協力を得られるのなら、PTTは早期にEVの生産が可能となり、上流から下流までバリューチェーンへの参入が実現する。また、PTTが開発している部品がグローバルバリューチェーンで流通する可能性もある。

    今回の提携はこの2社に留まらず、より多くの自動車・部品メーカー、その他サービスプロバイダーなどが加わることで、将来的に幅広い「事業プラットフォーム」に発展させることを視野に入れている。鴻海が生産拠点をタイに持つことで、より多くの新興メーカーがタイのEV市場に参入する可能性が拡がる。

    一方で、今回の提携では誰が車両モデルを構想し、車体をデザイン、販売し、アフターサービスを提供するのか、全体のバリューチェーンが見えない。PTTのガソリンスタンドなどを活用できるとしても、鴻海とPTTには車全体を設計し、安全評価する能力はない。機能ごとに別々の会社と提携すれば、コストアップや調整コストは避けられない。

    いずれにせよ鴻海のタイ進出は「オープンプラットフォーム」と「受託生産」により、ブランド、工場、サプライヤーの間で水平分業体制が形成・拡大される余地が生まれ、これまでの自動車メーカーを頂点とした垂直的な業界構造を揺るがす可能性もある。

    寄稿者プロフィール
    • 田口 孝紀 プロフィール写真
    • 野村総合研究所タイ
      マネージング・ダイレクター田口 孝紀

    • 山本 肇 プロフィール写真
    • 野村総合研究所タイ
      シニアマネージャー 山本 肇

    • 野村総合研究所タイロゴマーク
    • TEL : 02-611-2951

      URL : www.nri.co.jp

      399, Interchange 21, Unit 23-04, 23F, Sukhumvit Rd., Klongtoey Nua, Wattana, Bangkok 10110

    《業務内容》
    経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション

    \こちらも合わせて読みたい/

    第42回 EVの全バリューチェーンへの展開目指す タイの新興企業Energy Absolute

    • この記事の掲載号をPDFでダウンロード

      メールアドレスを入力後、ダウンロードボタンをクリックください。
      PDFのリンクを送信いたします。

    メールアドレスを入力後、ダウンロードボタンをクリックください。PDFのリンクを送信いたします。

      入力いただいたメールアドレス宛に、次回配信分からArayZ定期ニュースレターを自動でお送りいたします(解除可能)。個人情報の取り扱いについてはこちら

      人気記事

      1. 2023年のASEANの自動車市場の見通しと注目されるトレンド
        2023年のASEANの自動車市場の見通しと注目されるトレンド
      2. タイ国外への支払いにかかる源泉所得税・前編
        タイ国外への支払いにかかる源泉所得税・前編
      3. タイの新たな電気自動車(EV)奨励策
        タイの新たな電気自動車(EV)奨励策
      4. タイ鉄道-新線建設がもたらす国家繁栄と普遍社会
        タイ鉄道-新線建設がもたらす国家繁栄と普遍社会
      5. メコン5の2022年の振り返りと2023年の見通し
        メコン5の2022年の振り返りと2023年の見通し
      6. Dear Life Corporation CEO 安藤 功一郎
        Dear Life Corporation CEO 安藤 功一郎
      7. 中国NEV最大手BYDのタイ進出〜日系メーカーにとって黒船到来となるのか〜
        中国NEV最大手BYDのタイ進出〜日系メーカーにとって黒船到来となるのか〜
      8. WP取得者数などで日中逆転
        WP取得者数などで日中逆転
      9. タイのEV充電ステーションの方向性
        タイのEV充電ステーションの方向性

      広告枠、料金など詳しい情報は
専用ページをご覧ください。

      広告枠、料金など詳しい情報は
      専用ページをご覧ください。

      広告掲載についてページを見る

      お電話でのお問い合わせ+66-2651-5655

      タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌

      閉じる