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ワクチン接種に関する労務問題

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      度重なる緊急事態宣言の延長や事業・移動の制限命令にも関わらず、タイは新型コロナウイルスの新規感染者が連日2万人(※本稿執筆時)を超えている。ワクチンの供給不足にも関わらず、一部の都県でワクチン接種を義務付けるルールが公表されるなど、ワクチンの取扱いに関しては混乱が見られる。

      そこで、今回は新型コロナウイルスのワクチン接種に関連する労務問題について私見を述べる。なお本稿は一般企業における問題を想定している。

      会社がワクチン接種を義務付けることは可能か

      日本では、改正予防接種法第9条により予防接種は努力義務とされており、ワクチン接種を法的に強制することはできない。

      他方で、タイにおいてはいくつかのメディアで報じられている通り、感染症法等に基づき、国や都県等がワクチン接種を義務付けることは可能であると考えられているようである。

      しかし、一般企業に関していえば、ワクチン接種の判断はあくまでも個人の自由意思に基づかなければならず、雇用契約によって企業が労働者に接種を強制することは許されないと考える。

      企業としては事実上の強制とはならない形で、ワクチン接種を推奨することができるに留まるだろう。

      副反応のために会社を休んだ従業員の扱い

      前提として、企業が従業員に対してワクチン接種を推奨した場合において、「ワクチン接種を受けるための時間は労働時間になるか」という点について触れる。

      この点、上述の通りワクチン接種は強制できず、ワクチン接種を受けるための時間は労務から解放されており、労働時間性はないと考える。

      したがって、従業員がワクチン接種のために出勤できない場合、当該従業員が有給休暇を利用するなどの事情がない限り、当該期間に対して給与を支払う義務はない。

      企業が進んでこれを認めるとすれば、それは福利厚生の問題である。

      ワクチン接種後の副反応発生時に特別休暇を付与するべきか否かについては、副反応発生時には発熱や体のだるさなどの病状が発症することを考慮しなければならず、これらの副反応が生じている期間について病気休暇が利用できることに異論はないだろう。

      ただし、従業員にそれらの症状が生じていない場合にまで、出勤しないことを正当化する合理的な根拠はない。

      したがって、副反応による病状が現実に生じていない限り、企業が休暇を与える法的義務はないといえる。

      ワクチン非接種者の配置転換は可能か

      企業によっては、ワクチン接種していない従業員を、窓口業務等の人との接触の多い業務から、人との接触の少ない業務へ変更したいというニーズもあろう。

      この点、職務内容の変更(配置転換)について、タイの判例には、①命令の理由が正当なものであって、②配置転換後の職位が現在を下回らないものであり、かつ③配置転換後の給与・福利厚生が現在のものを下回らない場合には、会社は従業員に対する配置転換を命じることができる、と判断したものがある。

      感染予防という観点から言えば、ワクチン接種の有無によって当該従業員の対人接触可能性を調整する命令は合理的だといえ、職位や待遇の降下を付随しないのであれば、企業がそのような一時的な配置転換を命じることはできるものと考える。

      ※本稿執筆時点での勅令等を前提とする
      寄稿者プロフィール
      • 藤江 大輔 プロフィール写真
      • GVA Law Office (Thailand) Co., Ltd.
        代表弁護士藤江 大輔

        2009年京都大学法学部卒業。11年に京都大学法科大学院を修了後、同年司法試験に合格。司法研修後、GVA法律事務所に入所し、15年には教育系スタートアップ企業の執行役員に就任。16年にGVA法律事務所のパートナーに就任し、現在は同所タイオフィスの代表を務める。

        URL : https://gvalaw.jp/global/3361
        CONTACT : info@gvathai.com

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