セントラルグループ

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セントラルグループ企業概要
- 業種:食品&ブランド 他
- 設立:1947年
- グループ会社:50社以上(世界13ヵ国)
- 従業員数:約8万人
- 総売り上げ:推定約80億米ドル※2020年12月時点。売り上げが確認できた企業情報を基にMURC概算
基本情報
タイ小売における最大手・セントラルグループはデパートやスーパーマーケットを含む食品&ブランド事業、ホテルや飲食店を含むホスピタリティ事業、大型商業施設やオフィスビルを含む不動産開発事業といったハード面の他、近年は金融・ファイナンス事業、デジタル・Eコマース事業など多岐に渡るビジネスを展開。なかでも着目すべきは、食品・ファッション、ハードウェアなどの小売・ブランド事業を担うCentral Retail Corp. PCL(1947年創業)で、タイでは51県約1,980店、海外ではベトナムとイタリアで約140店の小売店を展開する。特に食品事業は収益の40~50%を占め、店舗はTopsマーケット、セントラルフードホール、ファミリーマートなど。2020年にはタイ証券取引所に上場。
小さな書店から巨大グループへ
巧みな世代交代で事業拡大
「タイの人々のより良いライフスタイルを創造する(CENTER OF LIFE)」を理念として事業展開する巨大コングロマリット、セントラルグループはタイに留まらず、アジア、世界各国へとその名を轟かせる。コロナ禍においてもその体制は揺るがず、感染状況が落ち着いた2022年に入ってからは攻めの姿勢に転じている。
同2月には、香港の物流大手ケリー・エクスプレスのタイ法人と大型商品の宅配サービスを開始する旨を発表。アフターコロナの小売形態への備えとしてデジタル・Eコマース事業の強化を図っている。一方で従来型の小売でも攻勢を仕掛けており、今後5年間で約643億円を投資し、商業施設ロビンソン・ライフスタイルの新規出店や既存店のリニューアルを行う計画を発表している。
セントラルグループの強みとして挙げられるのは、一族によるファミリー経営の上手さだ。同グループは、海南島出身の華僑であるChirathivatファミリーによって今日までの地位が築かれている(図表1)。
同家は、経済誌『フォーブス・アジア(21年7月号)』が発表した純資産ランキングでタイ国内第4位(116億米ドル)だったが、そもそもの始まりは創業者Tiang氏が1947年に始めた小さな輸入書籍・雑誌店である。
その後2代目にノウハウが継承され、足元では第3世代の総裁であり、同グループのExecutive Chairman兼CEOのTos氏が事業を担っている。また一部では、すでに第4世代の育成と移行が進んでおり、着々と世代交代の準備がなされている。
ここまで順調に継承を行えている事例は、タイ財閥の中でも珍しい。軋轢や偏りを生まなかった一つの対策として挙げられるのが、2代目総裁のSamrit氏が一族で同居することを重視し、家族や親戚で常に集まり幼少期からファミリー間での交流を図っていたこと。 加えて、ポイントとして挙げられるのが、小売・ブランド事業を担うCentral Retail Corp. PCL(1947年創業)のVice Chairmanで第2世代のSuthichai氏が率いる「家族評議会」の存在である。同会は年に4回ほど開催され、事業運営や株式の所有権の問題についての話し合いや、グループ事業に関与していない家族も含め、医療や教育、住宅などの費用の給付について議論する。これによりファミリー・グループが組織化され、事業運営と意思決定の効率化を実現していると考えられる。
ベトナムに350億Bの投資
強まる海外での存在感
Tos氏は、長期的な事業展開に向けた3つの戦略を以下のように掲げている。
①ライフスタイルとサービスの小売リーダーになること
②海外事業の拡大
③M&Aによる事業強化
近年、特に力を注いでいるのが ②海外事業の拡大である。その一つとして着目しているのがヨーロッパであり、スイス(Globus)やイギリス(Selfridges)で展開される高級デパートに出資するなど話題を呼んでいる。
その一方で、メコンエリアでのビジネスも活発である。なかでもベトナムは、同グループの今後の成長の鍵を握る最重要市場として位置付けられている。21年には、今後5年間でベトナムでのネットワーク拡大に向けて350億バーツの投資を予定していると発表。小売分野での各業態への積極展開を進めている。
それ以前にも、15年には現地の電化製品チェーンであるNguyen KimとスーパーマーケットLanchi Martに出資。また16年にはBig C(現地名:GO!)ベトナムを買収し、ハイパーマーケット・食料品店や百貨店・ファッション店、3つのオンライン・プラットフォームといった事業をすでに現地で展開している。
Big Cは、ベトナムでは「GO!」として事業を展開(16年に買収)
本稿では、ベトナム事業をはじめ同グループの主力である小売事業を中心に紹介したが、足元では配車アプリGrabへの追加出資などデジタル・Eコマース分野での積極的な動きも目立つ。ニューノーマルの中で同グループがどう変貌を遂げていくのか注目に値する。
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MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.
池上 一希 Managing Director日系自動車メーカーでアジア・中国の事業企画を担当。2007年に当社入社。大企業向けの欧米、中国、アセアン市場での事業戦略構築案件を中心に活動。18年2月より現職。バンコクを拠点に東南アジアへの日系企業の進出戦略構築、実行支援、進出後企業の事業改善等のテーマに取り組む。
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MU Research and Consulting (Thailand) Co., Ltd.
金 勲貞(キム フンジョン)Senior Consultant韓国で大学卒業後、主に米国系事業会社にて営業支援、人事、マーケティングなどを経験。2006年に渡日、一橋大学大学院にてMBA取得後、日系大手事業会社で人事、国際業務、新規事業企画などを歴任。15年よりタイに移住、日系企業タイ現地法人にてマーケティング、人事、その他管理全般を経験。18年に当社入社。
MU Research and Consulting(Thailand)Co., Ltd.
Tel:+66(0)92-247-2436
E-mail:kazuki.ikegami@murc.jp(池上)
【事業概要】 タイおよび周辺諸国におけるコンサルティング、リサーチ事業等
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