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ミャンマーの最新ビジネス法務

アメリカの経済制裁に関する留意事項

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      はじめに

      2021年2月1日に国軍が大統領やアウン・サン・スーチー国家顧問兼外相を拘束し、アメリカはクーデターと認定した。それに伴い同11日、アメリカの財務省が国軍出身のミン・アウン・フライン国軍総司令官、国軍出身のミン・スエ副大統領、ミャ・トゥン・ウー国防相、ティン・アウン・サン運輸通信相等の「行政評議会」に入ったメンバーを中心として10名をSDN(Specially Designated Nationals)リストに指定した。さらに、ミャンマー産の宝石を扱う3社をSDNリストに追加した。

      また、ミャンマー政府がアメリカに持つ資金10億ドル(約1,050億円)以上についても国軍幹部によるアクセスを制限し、国軍や国防省向けの物資の輸出も制限対象にした。なお、国軍幹部への制裁は少数民族ロヒンギャ問題で発動済みであった。

      クーデター発生後は2月5日にキリンホールディングスが、国軍系企業のミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)との合弁事業を解消するとの発表も行っている。もっとも、この動きについてはクーデター発生前から人権団体より批判されていた等の背景も存在する。

      これらの状況を踏まえ、アメリカの経済制裁の概要や法的留意点などについて解説する。

      アメリカによる経済制裁の概要

      The Office of Foreign Assets Control(OFAC・財務省外国資産管理室)は、特定対象国やテロリスト等によって米国の安全保障や外交政策等に脅威となる活動に関与した者に対する経済制裁や取引規制を行っている。

      あくまでもアメリカの法律に基づく対応であるため、対象となるのはUS Personである。この定義に含まれるのは以下の通りである。

      ① アメリカ国籍や永住権を有する個人

      ② アメリカ内の法令に基づいて設立された法人・団体

      ③ アメリカ内の外国法人の支店・営業所・駐在員事務所

      ④ アメリカに居住・訪問している個人(国籍を問わない)

      US Personに該当しない場合には、直接的な制限は受けない。ただし、特定の取引が制裁対象としてアメリカの経済制裁規制の対象となる可能性もある。また、ドル建て送金は影響を受ける可能性がある。

      制裁対象者はSDNリストにおいて指定される(制裁対象者が50%以上の持分を有する組織を含む)。OFACのウェブサイトにおいてSDNリスト掲載者は公開されている。

      今後の予測

      今後、より多くの国軍と関連する個人や企業をSDNリストへ追加すると思われる。他方、以前の軍事政権時代のように、ミャンマーへの投資を一律に制限するような、国全体を対象にした制裁を行う可能性は低いと思われる。

      その理由としては、そのような制裁を行うとミャンマーがより中国と連携する可能性があることに加え、以前と異なり既にVISAやMASTER等の大手アメリカ企業もミャンマーに進出しており、自国企業への経済的影響も大きいためである。

      なお、タイでも直近では2014年にクーデターが起きているが、この際もそのような制裁は行っていない。

      法的留意事項

      上述の通り、アメリカの経済制裁の直接の規制対象となるのはUS Personであり、日系企業の多くはアメリカに現地法人や支店を有しておらず、過度に経済制裁の影響を恐れる必要はないと思われる。

      その上で留意すべき点として、今後新たにミャンマー企業と合弁や取引を行う場合には、事前にSDNリストを確認し、相手方企業やその役員及び株主が掲載されていないかを確認する必要がある。

      また、契約書締結時点では掲載されていないとしても、その後追加で指定される可能性もあるため、そのような場合には損害賠償責任を負うことなく契約を解約することができる旨の条項を入れる等、契約書作成時にSDNリストについて考慮した条項を入れるよう工夫することが望ましいと解される。

      寄稿者プロフィール
      • 堤 雄史 プロフィール写真
      • TNY国際法律事務所共同代表弁護士
        堤 雄史(つつみ ゆうじ)

        東京大学法科大学院卒。2012年よりミャンマーに駐在し、駐在期間が最も長い弁護士である。TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.代表であり、グループ事務所としてタイ(TNY Legal Co., Ltd.)、マレーシア(TNY Consulting (Malaysia)SDN.BHD.)、イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co., Ltd.)、日本(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所)、メキシコ(TNY LEGAL MEXICO CO LTD)が存在する。タイ法、ミャンマー法、マレーシア法、日本法、メキシコ法及びイスラエル法関連の法律業務 (契約書の作成、労務、紛争解決、M&A等)を取り扱っている。

        Email:yujit@tny-legal.com
        Tel:+95(0)1-9255-201
        URL:http://tny-myanmar.com/
        URL:http://tnygroup.biz/

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