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ミャンマーの最新ビジネス法務

ビジネスと人権

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      はじめに

      昔は人権と企業法務や企業活動は無関係とも考えられていたが、徐々に企業活動の人権に対する考え方は社会にもたらす影響の一つであるとの認識が高まり、企業活動における人権の尊重への関心も高まるようになってきた。

      特に、新興国においては法整備の不備や行政機関による監督が不十分なこと等の理由により、人権侵害が生じやすい状況となっている。最近では、中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区で強制労働が横行しているとして、アメリカが一部の綿製品の輸入を禁止した。

      ミャンマーにおいても民政移管以降、ロヒンギャ問題が起こった際に国軍と関係する企業に対してNGOから批判の声が上がったが、クーデターの発生によりさらに人権とビジネスの問題が注目されるようになっている。

      このような状況下において、企業として人権についてどのような点を考慮する必要があるかについて関連する指針や取り組みを解説する。

      指導原則

      ビジネスと人権を考えるに当たり、確認する必要のある枠組みとして、2011年に国連の人権理事会の関連決議により承認された「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合『保護、尊重および救済』枠組実施のために」(以下「指導原則」)が存在する。

      指導原則は、主に以下の3つの枠組みを提示している。

      1. ①人権を保護する国家の義務
      2. ②人権を尊重する企業の責任
      3. ③効果的救済にアクセスする被害者の権利

      特に、企業と関係する上記②において、企業には人権方針の策定と人権リスクの特定・予防・軽減、そして救済のための人権デューデリジェンスの実施等が求められる。

      企業が留意すべき点としては、指導原則は自社の従業員のみならずサプライチェーン上の取引先の従業員や、事業を行う場所の地域社会全体に属する住民の人権の尊重をも対象にしていること。さらに順守すべき法令についても、各国の国内法のみならず、世界人権宣言や国際人権規約等の非常に幅広い法源を対象にしていることだ。

      他国の関連法

      指導原則については、違反に対する罰則等は規定されていない。

      しかし欧米を中心に、取引先の工場などで強制労働といった人権侵害のリスクがないか等の確認義務を企業に課す法令の制定が広がっている。

      英国では15年に現代奴隷法が成立し、一定規模以上の企業にサプライチェーンを含めて強制労働や人身売買のリスクがないか検証を促し、取り組みの開示を義務付けた。現代奴隷法が対象とする「現代奴隷」には、①奴隷および隷属・強制労働と ②人身売買に関する犯罪類型が含まれる。

      そして、他人を奴隷または隷属の状態に置く行為、強制労働を要求する行為及び人身売買は現代奴隷法上の刑罰対象となる。

      英国以外でもオーストラリア、フランス、オランダで類似の法律が制定されている。アメリカでは、10年にカリフォルニア州がサプライチェーンにおける透明性確保のための法律を制定している。日本は指導原則に基づき、「『ビジネスと人権』に関する行動計画(2020-25)」を20年10月に策定したが、法律上の義務付けは未だなされていない。

      今後の対応

      以上のとおり、日本では人権とビジネスの観点からの具体的な法律は制定されておらず、人権デューデリジェンスも義務化されていない。しかし、人権デューデリジェンスを実施しているファーストリテイリング等の例も存在する。

      また、上記で紹介した他国の法令の中には、対象企業が当該国の企業に限定されていないものも存在し、外国で事業を実施するに当たり、現地法上の違反がないかの確認のみならず、他国の人権関連の法令に違反していないかの確認も必要となる。特に、他国に法人を有していたり商品を販売していたりする国の法令は詳細を確認する必要がある。

      たとえ法令に違反しないとしても、人権侵害があればレピュテーションリスクが生じたり、消費者の不買運動などに繋がることもある。

      ①人権指針の策定 ②人権デューデリジェンスの実施 ③救済メカニズムの構築を行っていない場合には、これらの対応を行うことにより、他国の人権関連の法令にも違反する可能性が低くなり、さらにはESG投資の対象にも含まれやすくなるため投資を呼び込み、より多くの国で事業を展開する礎になると思われる。

      寄稿者プロフィール
      • 堤 雄史 プロフィール写真
      • TNY国際法律事務所共同代表弁護士
        堤 雄史(つつみ ゆうじ)

        東京大学法科大学院卒。2012年よりミャンマーに駐在し、駐在期間が最も長い弁護士である。TNY Legal (Myanmar) Co., Ltd.代表であり、グループ事務所としてタイ(TNY Legal Co., Ltd.)、マレーシア(TNY Consulting (Malaysia)SDN.BHD.)、イスラエル(TNY Consulting (Israel) Co., Ltd.)、日本(弁護士法人プログレ・TNY国際法律事務所)、メキシコ(TNY LEGAL MEXICO CO LTD)が存在する。タイ法、ミャンマー法、マレーシア法、日本法、メキシコ法及びイスラエル法関連の法律業務 (契約書の作成、労務、紛争解決、M&A等)を取り扱っている。

        Email:yujit@tny-legal.com
        Tel:+95(0)1-9255-201
        URL:http://tny-myanmar.com/
        URL:http://tnygroup.biz/

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