カタチが変わる 岐路に立つ日本 米中対立下の通商主導へ

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世界の貿易額の3割を占める巨大貿易圏の誕生で世界の通商の枠組みが変わる。
日本や中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)などの15ヵ国が参加する「東アジアの地域的な包括的経済連携(RCEP)」が1月1日に発効。対象国同士の関税の引き下げやサービスの往来がスムーズになると期待される。
一方、経済連携協定(EPA)の枠組みを通じた各国の通商政策には米中対立の影響が及ぶ。大国のはざまで日本の通商交渉を主導する力量が問われる。(冨井哲雄)
半導体や蓄電池の確保に向けた経済安全保障やデジタル化などの潮流を受け、世界貿易機関(WTO)加盟国やEPAでの国・地域同士のルール作りなどによる経済秩序の構築が重要視されている。
EPAの一種であるRCEPは1日に日中やシンガポールなど10ヵ国で発効。未発効国も準備が整い次第、発効する予定だ。世界の国内総生産(GDP)や貿易総額、人口の3割を占める大型協定で、日本にとって貿易額の半分を占める地域をカバーできる経済的メリットは大きい。
日本が得意とする自動車用部品や鉄鋼、家電などの工業製品の品目数の92%の関税が撤廃され、参加国間でサプライチェーン(供給網)を構築しやすくなる。統一した規則を利用するため手続きが簡素になりコスト低減を見込める。「国内企業がRCEPから最大限の利益が得られるよう周知したい」(萩生田光一経済産業相)。
ポイントは中韓との初のEPA締結になること。日本の中韓との貿易額は全体の4分の1を占める。RCEPを通じて重要な貿易相手となる中韓とEPAを結べた意義は大きい。国際経済学の理論や政策を研究する学習院大学の伊藤元重教授は「日本単独では中韓との連携は難しかっただろう。ASEANや豪州が枠組みに入ることで中韓との連携が可能になった」とする。
次に熱い視線が注がれるのが環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)だ。参加準備を進める英国に加え、中国、台湾、韓国などが加入に向けた動きを見せる。米国がいないCPTPPに参加しアジア太平洋の覇権を目指す中国、中国の台頭をけん制したい米国。米中の思索が絡み合う。
さらに中国の加入を歓迎するベトナムやマレーシアなどのASEAN地域と、米国との関係が深いメキシコやカナダとの間で亀裂が生じ、CPTPPの結束が緩む可能性もあり得る。
ただし「原則的に例外規定がないCPTPPに中国が入るためのハードルは高い」(伊藤教授)。参加を望む中国に高レベルの決まりを守らせ、日本を含む参加国が築いてきた連携を形だけのものにされないよう監視する必要がある。
※記事提供:日刊工業新聞(2022年1月7日)
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