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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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新たな視点で時代の動きを読み取る ASEAN経営戦略

Roland Berger

ニューノーマルにおける地域統括会社の在り方とは

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      東南アジア諸国連合(ASEAN)における様々な業界の旬なトピックを、ドイツ発のコンサルティング会社ローランド・ベルガーが経営戦略的な観点から解説する。今回は、ニューノーマル(新常態)における地域統括会社の在り方について。

      日系企業の海外での地域統括会社の在り方に変化が起こっている。地域統括会社の再編や機能・役割の見直しについての相談はコロナ前から増えつつあった。それがニューノーマルという文脈を加え、より複雑性を増した喫緊の経営課題として扱われているのが今である。今回は、これからの地域統括会社の在り方についての重要論点を提示していきたい。

      コロナ禍で議論がなされたサプライチェーンの再編

      コロナ禍初期に活発化した議論の一つが、サプライチェーンの見直しだ。国や地域を跨ぐ人の移動、そして商品・原材料のやり取りが難しくなった中、サプライチェーンのローカル内での完結や調達先の地域多元化を進めるべきという議論が為された。

      その後のASEANで言えばRCEP(地域的な包括的経済連携協定)という新たな要素も加わり、サプライチェーン検討の難易度はさらに増している。

      サプライチェーンの在り方は、それぞれの地域統括会社がどのような調達・物流機能を持つかに特に影響する。

      例えば、仮に調達先多元化を進めるのであれば、各国毎に自律的な調達機能を分散させ、地域統括会社としては調達全体を管理する機能に留めるのが良いかもしれない。

      もちろん、物流なども含め多面的に検討すべきため一概には言えないが、地域統括会社の論点では少なくとも今後のサプライチェーンを考慮すべきことは間違いない。

      Eコマースの進展・多様化による地域統括拠点の機能の変化

      コロナ禍でASEANのEコマースは進化を遂げた。一般的なB2CのEコマースに限らず、B2Bオンラインプラットフォームや食品デリバリー、日用品の宅配など多様性を見せていることもASEANの特徴だ。

      営業・マーケティングにおいて、Eコマースと実店舗では根本的に異なる組織・機能が求められる。ゆえに販売チャネルの中でEコマースの割合が高まれば、営業・マーケティングの持ち方も変わってくる。

      単純化して言えば、実店舗ではローカルに密着した営業機能が求められる一方、EコマースではASEAN全域を見据えたデジタルマーケティングがより重要となる。実働の営業部隊とEコマースでは販管費構造が大きく異なるため、コスト面を捉えた検討も必要だ。さらには細分化されたEコマースも含め、リテールポートフォリオを定めていくことは、まさに地域統括拠点に求められる機能だろう。

      前述の通りEコマースはもはやB2C商材に限らない。B2Bプレイヤーもこれらの点を検討していかなければならない。

      オンラインコミュニケーションの一般化に伴う論点

      コロナ禍でオンライン会議を余儀なくされた結果、オンラインでも必要最低限の議論や意思決定ができることを多くの企業が実感した。このことは、地域統括会社における人材の物理的配置に影響を及ぼす。物理的な地域統括会社の所在に、そこに属する人材を集約させる必要はなくなるのだ。

      品質管理の統括は製造拠点のあるタイ、マーケティング統括はシンガポールなど、オンラインコミュニケーションを前提にすれば今まで以上にフレキシブルな統括機能人材の配置が可能となる。

      極端なケースを言えば、バーチャル組織としての地域統括会社もあり得るかもしれない。組織図上、地域統括機能はあり所属人材も存在する。だが、地域統括会社として物理的な存在はなく、人材だけが域内で最適な場所に配置されるような形態だ。

      イノベーションハブ/リビングラボとして

      最後に地域統括会社が持つべきイノベーションハブ/リビングラボとしての役割について触れたい。これはコロナ前から議論されていたことでもある。

      例えば、有望なスタートアップが多く誕生するシンガポールなどで革新的な事業を生み出すことへの期待は大きい。柵だらけの日本本社内で新規事業を生み出すことの難易度を考えると、ASEANで新たなチャレンジをするほうがハードルが低いと考える日系企業は多い。

      ASEANの地域統括会社を域内事業の効率化だけでなく、全社単位でのイノベーションハブ/リビングラボとしての在り方を期待する傾向は強まっている。

      以上は、新たな地域的統括会社の在り方という観点で挙げた論点である。もちろん、税制や地政学リスク等、従来から考慮しなければならない要素を無視して良いわけではない。

      だが、アジアがより重要な市場になる今後(これはコロナの影響に関係なく)、形式的な地域統括会社ではなく、アジアでのビジネスを真にブーストさせる地域統括会社を目指すべきことは間違いない。

      寄稿者プロフィール
      • 下村 健一 プロフィール写真
      • Roland Berger下村 健一

        一橋大学卒業後、米国系コンサルティングファーム等を経て、現在は欧州最大の戦略系コンサルティングファームであるローランド・ベルガーのアジアジャパンデスク統括に在籍(バンコク在住)。ASEAN全域で、消費財、小売・流通、自動車、商社、PEファンド等を中心に、グローバル戦略、ポートフォリオ戦略、M&A、デジタライゼーション、企業再生等、幅広いテーマでの支援に従事している。

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