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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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新たな視点で時代の動きを読み取る ASEAN経営戦略

Roland Berger

在ASEAN日系企業から見るインド市場

在ASEAN日系企業から見るインド市場

日系企業にとってのインドの距離感

インドは日系企業にとって絶妙な距離感のある市場だ。

人口は中国に次ぐ世界第2位で現在13億人。2027年には中国を追い抜きトップに立つと言われている。

GDPは日本の半分強だが、こちらも29年には日本を抜き去るとの予測もある。大きなポテンシャルを持つ有望市場であることは間違いない。

一方で、中国やASEANと比較し、そのポテンシャルに比して日系企業がこれまで積極的に投資してきたとは言い切れない。実際、スズキやトヨタ等、一部を除いて、インドにおける日系企業の存在感は限定的だ。そういった意味で絶妙な距離感にあると言われている。  だが、コロナ禍を経て「インド検討」の機運が今またにわかに高まっている。

日系企業にとっての重要投資地域の見直し、サプライチェーンの再構築、デジタルイノベーション拠点の設置等、多面的なテーマでインド検討が再燃しているのだ。

弊社にもインドに関する相談はここ最近増えてきた。昨今の傾向として、インドに関する問い合わせが、日系企業本社からではなく在ASEANの地域統括責任者からなされることも増えた。これは、日系企業の在ASEAN統括拠点が、その統括範囲にインドを含めることも多いゆえだ。

しかし、ASEANとインドは全くの別物である。日本から見れば地理的な近さのため一緒に統括させたくなるのだろうが、正直言って無理がある。  在ASEANの日系企業人からすればインドは未知の市場であることも多い。そこで本稿では、極めて基本的情報でありながら、日系企業が抱きがちなインド市場に対する誤解について論じたい。

インド市場に対する誤解

インド市場への誤解は数多く存在するが、ここでは二つの典型的な誤解を紹介する。

インドを知っている方であればなんてことはないものだ。しかし、ASEANを主戦場としつつ、インドはローカルオペレーションに依存している統括拠点の立場だとすれば、これらの誤解を持つ方は意外と多い。

一つ目の誤解は「想像以上に低い経済水準」だ。インドのGDPは2・9兆ドルに対し、ASEANは全体で3・1兆ドル。インドとASEANの経済規模はほぼ等しい。

一方で、人口はインドが13億人でASEANが6・7億人と、インドがASEANの倍近い(21年)。単純に考えて経済水準(一人あたりGDP)はインドがASEANの半分ということになる。この点の認識にギャップがあることは少なくない。インドがASEANと比べて、経済水準でそこまで劣ると思っていない方は意外に多いのだ。

都市レベルにまで解像度を上げてみる。インドの6大都市(ムンバイ、デリー、ベンガル―ル、チェンナイ、ハイデラバード、コルカタ)の一人あたりGDP平均が4900ドルであるのに対し、例えばバンコクは1万4000ドル。主要都市の差異で見ると、インドの経済水準の劣後はより大きい(図表1)。

インド及びアセアンの主要都市別一人当たりGDP

さらに言ってしまえば、インド6大都市の平均4900ドルという数値は、バンコクを除くタイの他地域平均とほぼ同値である。

都市単位での市場攻略を考えた時に、インドの主要都市を狙うということが、タイの地方都市レベルの経済水準をターゲットとすることと同等だと言うことだ。この経済水準に誤解を持って、インド検討を始めてしまい価格戦略を誤ってしまうことも多い。

二つ目の誤解は「経済の分散性」である。ASEANには、タイ、マレーシア、フィリピンのように経済の一極集中度が高い国が多い。国全体のGDPに対して一都市で占める割合を見ると、バンコクは50%、マニラは45%、クアラルンプールは40%と、一極集中度は非常に高い。  他方、インドは最大の都市であるムンバイでも国全体のGDPの4%に過ぎない。インドの6大都市を全て足しても14%にしかならない。インドは経済の裾野が非常に広い国だと言える。

この点を考慮すると、一都市を抑えるだけでその国の半分の市場を攻められるASEANの国の方が効率的と言える。

GDP絶対値で見ても、ムンバイ1140億ドル、デリー1090億ドルに対してジャカルタが2570億ドル、バンコクが2530億ドルと、ASEANの都市の方が大きい市場規模を持つのだ(図表2)。

インド及びASEAN主要都市のGDP(2021年推定、単位:100万米ドル)

だが、インドはASEANと違ってひとつの国である。都市単位でなく国単位で抑えることも可能ではないかという声もあるだろう。しかし、残念ながら答えは否だ。

インドは想像以上に州による法律や規制、そして商習慣の差異が大きい。ASEANを一括りで考えられないのと同様、インドも国全体をまとめての検討が難しいのだ。

インドのデジタライゼーション

以上の内容から受ける印象は、「インドが魅力的な市場になるのはまだ先」というものかもしれない。それもひとつの真実だが、とはいえ全体で見た時の市場規模の大きさとその成長性は捨てがたい。

ここについてはまさに冒頭で述べた、これまでにインド検討が繰り返しなされてきた背景と言えるだろう。

加えて、近年は「デジタル」というキーワードでもインドはより魅力的な投資先になっている。

これまでのように、単なるオフショア開発の受け皿としてではない。インド発のスタートアップが新たなデジタル経済圏を創り始めている。ASEANや中国とはまた異なる形で独自のO2Oやフィンテックが進んでいるのだ。

これらテクノロジーは、ASEANへ横展開し得る魅力的な要素でもある。そのあたりについては、また別の機会に触れたい。

寄稿者プロフィール
  • 下村 健一 プロフィール写真
  • Roland Berger下村 健一

    一橋大学卒業後、米国系コンサルティングファーム等を経て、現在は欧州最大の戦略系コンサルティングファームであるローランド・ベルガーのアジアジャパンデスク統括に在籍(バンコク在住)。ASEAN全域で、消費財、小売・流通、自動車、商社、PEファンド等を中心に、グローバル戦略、ポートフォリオ戦略、M&A、デジタライゼーション、企業再生等、幅広いテーマでの支援に従事している。

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