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Roland Berger

アジア圏におけるQコマースの可能性[前編]

Qコマースの可能性
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    Qコマースの勃興

    ここ最近、Qコマース(クイックコマース)という言葉をメディアでもよく目にするようになった。Qコマースを敢えて説明的に言い換えるならば「即時配達Eコマース」になるだろう。通常のEコマースが早くても数時間、場合によっては数日間デリバリーに要するところを10~20分で届ける。日本であれば近所のコンビニやスーパーに買いに行くのを、代わりに配達させるというコンセプトだ。欧米等を中心に注目されている新たな流通形態であり、Gopuff、Gorillas、Flink、Getir、Glovoといった多くのプレイヤーも登場している。

    手前味噌ながら、筆者はコロナ禍以前からその普及に確信を持っていた。そこからコロナ禍を経た2022年、ZホールディングスのQコマースへの本格参入も発表され、日本でもいよいよ熱を帯びてきたと感じる。

    Qコマース成立要件とプラットフォームとしての可能性

    このような仕組みを持つQコマースであるが、コロナ禍での外出制限がその需要を大きく後押ししたと言える。需要に呼応しようとする形で、供給側としてQコマースのプロバイダーが増加しているというのが現状だ。だが、Qコマース浸透におけるボトルネックは、しばらくはプロバイダー側であると筆者は考える。

    なぜならQコマースに対する潜在需要は大きいものの、その要求水準は決して低くないからだ。簡潔に言えば、「デリバリー時間」「デリバリー価格」「対応SKU数」における基本的な要求を高い水準で満たす供給ができなければ、本当の意味での普及は難しいだろう(図表1)。

    Qコマースの成立要件

    時間と価格は言わずもがなだが、対応SKU数、つまりはデリバリーできる商材の幅も重要なファクターになる。実際、弊社が実施した消費者アンケートでは、Qコマースに求めている商品の幅は想像以上に広かった。

    では、この3つを満たす供給体制はどのようなものか。シンプルではあるが、「配送拠点」と「配送車両(ドライバーを含む)」の2つが閾値を超える規模に至ることだ。配送する商品をストックしておき、そこからデリバリーするための配送拠点、そしてその商品を実際に消費者に届ける配送車両。前述の成立要件を満たし10~20分の即時配達を実現させるためにはこの2つが高密度で必要となってくる。

    配送拠点が多くなれば、消費者までのデリバリー距離が短くなる。配送車両が多くなれば、デリバリー待ちの発生を防げる。その結果、デリバリー時間の短縮に繋がり、また配送拠点数が増えることで、一つの配送拠点における1SKUあたりの在庫数を抑えられる。つまりはSKU数の増加が可能となり、より幅広い商品ラインナップを在庫できるというわけだ。

    加えて、各エリアで動ける配送車両が増えることによって、それら車両を拠点にネットワーク全体での在庫最適化オペレーションに貢献させることもできるはずである。デリバリー稼働していない配送車両には、特定SKUの在庫数が減った拠点に別の拠点から商品を持ってこさせ、拠点間補充の役割を担わせるのだ。このような高密度デリバリーネットワークがうまく稼働すれば、当然ながら規模の経済が期待でき、デリバリー価格も最小化されるだろう。

    さらに、Qコマースが秘める可能性は他にもある。日常的な購買ツールとして定着化すれば、消費者が日々そこにアクセスするようなプラットフォームになっていくはずだ。集客が増えることにより、プラットフォームビジネスとして広告収入や消費データ販売等、新たなマネタイズソースも生まれてくる。これはQコマースが従来のEコマース以上に、日常購買に使用され得るという特質を持つがゆえの可能性である。別のマネタイズソースが生まれれば、必ずしもデリバリー料を取らなくてもいい。そのデリバリー料が下がれば、より集客力も高まるという好循環に入るだろう。これがQコマースの持つ大きなポテンシャルである。

    寄稿者プロフィール
    • 下村 健一 プロフィール写真
    • Roland Berger下村 健一

      一橋大学卒業後、米国系コンサルティングファーム等を経て、現在は欧州最大の戦略コンサルティングファームであるローランド・ベルガーに在籍。プリンシパル兼アジアジャパンデスク統括責任者(バンコク在住)として、アジア全域で消費財、小売・流通、自動車、商社、PEファンド等を中心にグローバル戦略、ポートフォリオ戦略、M&A、デジタライゼーション、事業再生等、幅広いテーマでのクライアント支援に従事している。

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