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タイ・ASEANの今がわかるビジネス経済情報誌アレイズ

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多様な観点から経営学を説く経営学の可能性

サシン経営大学院日本センター 藤岡資正所長コラム

経営学とブリコラージュ

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    南米のある先住民は、ジャングルを歩きながら何かを見つけるたびに、それが何の役に立つか分からなくてもひとまず拾い、持って帰るようです。その後、彼・彼女らの生活の観察を続けていると、その時は用途が分からないようなものを必要な時に上手に活用しながら生活をしていることが分かりました。

    このように、一見すると何の役に立つのかよくわからないガラクタのようなものを非予定調和的に収集しておき、後の場面で役立てる能力を「ブリコラージュ(bricolage)」と名付けたのが、フランスの社会人類学者であるクロード・レヴィ=ストロースです。彼はエンジニアとの対比のなかで「ブリコルアー(bricoleur)」という概念を提唱しました。エンジニアは作業を行うためにある特定の手順に従う人であるのに対して、ブリコルアーは手元にあるものは何でも利用する人のことを差しています。

    ここでのポイントは「手元にあるものを必要な時に役立てる能力」です。ごく簡単な例を挙げると、ペットボトルは飲料を入れておくツールですが、震災時に水が止まってしまった場合には、砂利を詰めて水をろ過するツールにもなり得ます。

    こういった予期せぬ事態に直面した際に、道具が作られた本来の目的にこだわるのではなく臨機応変に役立てる能力が大切なのです。

    国境を越えた経営では、予期せぬ事態に直面することが多々あります。組織では様々なシナリオを想定して役割やルールを決め、計画を立てます。しかし役割やルールにこだわり過ぎると、事前の想定とは異なる不測の事態が生じた際に破滅的な結果をもたらすことに繋がります。

    米国の特殊警察部隊SWATは緊急時、チームで互いの経験を信頼し、当初のプランにはなかった対応を素早く実行に移すことができると言われています。事前に必要だと思われる情報のみを効率よく収集し、自分の決められた責任や役割の範囲でのみ物事を考え、現場での緊張感のなかでの創造力や構想力が欠けていては、こうした臨機応変力は醸成されないでしょう。

    既存の常識が通用しない「ニューノーマル」と言われるポスト・コロナ禍においても、信頼に基づくブリコラージュは重要になります。しかしながら、この臨機応変力は危機が生じることや、逆境に直面することを全く予知していない組織には醸成することができません。

    これまでの日本の常識やあらゆる前提が根底から揺さぶられる現代において、危機や逆境を予知する能力の欠如は日本のあらゆる組織に見られます。備えが欠如した組織には直感や創造性が働かず、即興的対応に必要な信頼に基づく組織的行動を起こすことも、組織的なブリコラージュを発揮することもできないのです。

    不測の事態を回避できない場面はもちろんありますが、危機を悲劇にしてしまう組織と、即興的な対応力により最悪の事態を防ぐことができる組織の違いはこうした側面からも捉えることができます。

    寄稿者プロフィール
    • 藤岡資正プロフィール写真
    • チュラロンコン大学
      サシン(Sasin)経営大学院日本センター所長
      明治大学専門職大学院教授

    • 藤岡 資正 Professor Takamasa Fujioka, PhD.

      英オックスフォード大学より経営哲学博士・経営学修士(会計学優等)。チュラロンコン大学サシン経営大学院エグゼクティブ・ディレクター兼MBA専攻長、ケロッグ経営大学院客員研究員などを経て現職。NUCBビジネススクール、早稲田ビジネススクール客員教授。神姫バス(株)社外取締役、アジア市場経済学会理事、富山文化財団監事などを兼任。
      撮影:石田直之

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