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多様な観点から経営学を説く経営学の可能性

サシン経営大学院日本センター 藤岡資正所長コラム

経営学と志

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      自動車会社フォード・モーターの創設者であり、自動車王と称されたアメリカの実業家ヘンリー・フォードは叩き上げの経営者ですが、ある日、意地悪な知識人たちに「あなたは会社で何か問題が生じた際、どのように対応するのですか?」と聞かれ、「私よりも優秀な人たちを雇い、原因を究明してもらいます。その間、私の頭はすっきりとした状態に保つことができるので、より大事なことに時間を使います」と答えたそうです。

      次いで「あなたや会社にとって大事なことは?」という問いに対しては、「思考すること」と返したと言われています。つまり、フォードは知識や情報の量ではなく、自分の頭で「考えること」が重要であり、それができる人間は非常に限られていることを指摘したのです。

      現代の企業経営においても、競争に勝つことが目的となり、なぜ・誰のための競争であったのか、そもそも何のための経営であったのかについて問う機会が少なくなっています。

      かつて、アインシュタインは「手段はすべて揃っているが、目的は混乱している」と指摘したそうですが、様々な手段が利用可能な現代の経営を指しているとも言えるでしょう。

      情報というものは玉石混交であり、目的に応じて取捨選別することが大切です。時に、情報はオイルに例えられますが、オイルと同じように蒸留装置を通じて、それぞれの目的に応じて精製されなくてはならず、目的なくして情報を適切に精製することはできないのです。

      知識や情報はあくまでも思考のための潤滑油かつ「考える」ための手段であって、目的ではありません。これは実務家との交流やビジネススクールでも感じることですが、様々な情報に簡単にアクセスできるようになればなるほど、そして情報の量が増していくほど、人間は思考することを簡単に諦めてしまうようです。

      小説家であり活動家だった三島由紀夫は、日本の将来を誰よりも危惧していました。「このまま行ったら日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目がない、或る経済大国が極東の一角に残るのであろう」(『産経新聞』寄稿より)。

      経営から志が失われていく社会は、会社という組織から経営者の主体性が消滅し、空っぽの会社が宇宙ゴミのごとく目的なく彷徨う空虚な現代の社会経済のようです。

      また「学は立志より要なるは莫(な)し」(『言志四録』)、出生や身分ではなく「立志(志を立てる)」ことが大切であり、志あるものが己の運命を切り拓き、社会を先導するのだという江戸時代の儒学者・斎藤一斎の教えは、時代の大きな変革期にあって、明治という新たな時代を切り拓いていった若者たちに大きな勇気と希望を与えました。

      そのエネルギーが大きな原動力となり日本の未来を創造していったということを忘れてはならないのではないでしょうか。

      サシン経営大学院Webサイト

      寄稿者プロフィール
      • 藤岡資正プロフィール写真
      • チュラロンコン大学
        サシン(Sasin)経営大学院日本センター所長
        明治大学専門職大学院教授

      • 藤岡 資正 Professor Takamasa Fujioka, PhD.

        英オックスフォード大学より経営哲学博士・経営学修士(会計学優等)。チュラロンコン大学サシン経営大学院エグゼクティブ・ディレクター兼MBA専攻長、ケロッグ経営大学院客員研究員などを経て現職。NUCBビジネススクール、早稲田ビジネススクール客員教授。神姫バス(株)社外取締役、アジア市場経済学会理事、富山文化財団監事などを兼任。
        撮影:石田直之

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