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通報制度の最新動向~通報制度のデジタル化における利点と運用例~

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      新たなオミクロン株の発生など新型コロナウイルスの脅威が過ぎ去ったとは言えないものの、タイにおいては活動制限が徐々に緩和されつつあります。一方で、コロナ禍で定着した文化・オペレーション・働き方の変化は今後も継続していくと考えられ、企業には引き続き柔軟かつ迅速に対応することが求められています。

      このようなクライシス下に発生・発覚する不正やコンプライアンス上のリスクの早期発見をテーマに、「通報制度・プラットフォームの効果的な活用」という題材で本誌2021年9月号に寄稿させていただいたところ、多くの企業様からお問い合わせを頂戴しましたので、本稿では最新の動向である「通報制度のデジタル化」及び実際の運用例をご紹介します。

      通報制度の重要性とメリット

      まずは、改めて通報制度が持つ重要性とその利点についておさらいしたいと思います。企業が通報制度を設置することの重要性及びメリットは大きく分けて三つあります(図表1)。

      通報制度の重要性に関する三本柱

      一つ目は「法律・規制」の遵守です。国によっては特定業種や企業規模により、内部通報制度の設置が義務化もしくはガイドラインとして定められている場合があり、それらを遵守するために通報制度の設置が必要となっています。

      二つ目は「不正発見・防止」に役立つことです。前回記事で述べた通り、不正リスク管理という視点では、効果的な通報制度はその兆候・事象の早期検出において最も重要な仕組みとなっています。

      三つ目が「より良い企業環境の構築」の手助けになることです。従業員や取引先、顧客などが臆することなく安心して声をあげることができる風通しの良い企業風土、モラルの高い企業文化を醸成する制度の一つとして通報制度が持つ意味の重要性は非常に大きいものとなっています。

      企業が抱える通報制度の課題

      タイにおいて通報制度を持つ日本企業は比較的多い印象ですが、我々の経験から実際の運用面で以下のような課題を抱えている場合が見受けられます。

      ● 通報チャネルは電話とメールのみで、営業時間外での通報が難しく、また多くの場合通報者の匿名性が確保されていない。

      ● 通報者範囲が不明確または従業員のみを対象としているため、取引先や顧客といった第三者からの通報は挙がってこない。

      ● 通報受付担当になっていた人事部門スタッフが、自身に都合の悪い通報をもみ消していた。

      ● 通報事案のリスク判断基準があいまいで、優先度を付けた対応ができず緊急性の高い通報への対応遅れが生じている。また、通報事案が一元管理されていないため、対応漏れが発生している。

      通報制度のデジタル化の利点

      前述のような課題を解決できるのが、通報制度をデジタル化したプラットフォームです。プラットフォームの活用には以下のような利点があります。


      □ ウェブやスマートフォンアプリ上から使いやすいインターフェースで簡単に通報できる。

      □ 匿名性・高いセキュリティ性、人為的なミスによる情報漏洩リスクが低い。

      □ 営業時間に関係なくアクセス・通報が可能。

      □ QRコード一つで従業員に通知可能。さらには通報対象範囲を、第三者に対して広げることが容易。

      □ 高度なケース管理システムにて一元管理されるため、各事案に対してある一定のスクリーニングルールを自動適応させ、リスク・タイプ別に分類が可能。これにより、利害関係のある従業員への通報情報の開示を制限したり、リスク別に優先度をつけることができる。また、事案対応のフロー(各担当従業員へのシステム内でのタスク割当から対応完了まで)をプラットフォーム内で作成・管理し、企業のマネジメントが直接各事案の対応状況をモニタリングできる。

      日系家電メーカーでの通報制度プラットフォームの導入・運用例

      1-導入

      クラウドベースの通報プラットフォームを導入。PCとスマートフォンのブラウザからアクセス可能で、通報内容を効果的に記載させるため、通報は必須質問への回答及びフリーテキスト入力をハイブリッドで行えるように設定。

      2-拡大

      通報対象者を従来の従業員(2,000人超)から、さらに第三者であるベンダー及びディーラー(500社超)に拡大。メールでの一斉告知に加え、プラットフォームアクセス用のQRコードを社員の名刺、社内掲示板、メールの署名欄などに添付。週に2、3件の通報を受領。

      3-分析

      外部専門家に通報事案の一括スクリーニングとタイプ・リスク別の振り分けを依頼。さらに明確な基準を設けて、事案対応を行う従業員との利害関係、タイプ別のリスク、対応マニュアル等を作成。

      4-運用

      事案対応の詳細・フォローアップをすべてプラットフォーム上で行う業務フローに変更。各対応担当者が自身で管轄している事案以外の情報にはアクセスできないよう制限を掛けた。リスクの高い事案(不正・法的リスク等)についてはマネジメント自らが対応にあたり、リスクの低い事案(不平・不満等)に関しては各部署へ対応を任せるようにし業務を分散させた。

      最後に

      通報制度の体系的な管理は複雑で、多くのスキルとマンパワーを必要とします。そのため、効率的な運用のために、通報制度をデジタル化する動きが盛んに進んでいます。効果的な運用は不正やコンプライアンスリスクの早期発見や法令遵守目的のみならず、従業員や取引先、顧客との信頼関係を築くためにも重要となっており、今や企業運営には欠かせない制度の一つです。

      本稿に関するご質問やPwCのCrisis preparedness assessmentやAfter Action Reviewサービスに関するお問い合わせは、著者までお気軽にご連絡ください。

      本稿は、一般的な情報の提供を目的としたもので、専門コンサルティング・アドバイスとしてご利用頂くことを目的としたものではありません。 情報の内容は法令・経済情勢等の変化により変更されることがありますのでご了承下さい。
      寄稿者プロフィール
      • 光永 隆人 プロフィール写真
      • PwCタイ コンサルティング部門

      • 光永 隆人 Manager

        PwCタイにて東南アジアにおけるフォレンジック専門家として、不正調査、データ分析、不正リスク管理体制の構築、反贈収賄コンプライアンス、内部監査等の支援を多数のクライアントに対して提供してきた。公認不正検査士(CFE)。

        対応可能言語:日本語、英語、タイ語。


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