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加速する世界の調達DX-出遅れる日本企業〜実態調査から見えてきた現状〜

加速する 世界の調達DX
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      はじめに

      PwCは2022年4月に「PwCグローバルデジタル調達実態調査~第4版〜」を公表しました。

      本調査では、重点投資分野や調達領域における課題等を含む“調達のデジタル化”における現状と方向性を分析しており、本稿ではそのグローバルの傾向とそれに対する日本の現状を考察していきます。

      調達DXの波-世界的な逆風が 調達の在り方を変える

      この数年、様々な製品の世界的供給不足や価格高騰によるサプライチェーンの混乱、リモート環境によるプロセスの電子化やペーパーレス化の加速、ESGコンプライアンス問題、世界的なインフレや原油高等、企業を取り巻く環境が大きく変化し、調達活動の意義・在り方についても大きな転換期を迎えています。今や、調達活動におけるデジタル化は単にコスト管理や効率性という観点だけでなく、サプライチェーン・トレーサビリティ、コンプライアンス、サプライヤーとの信頼関係の構築といった課題への対応にも必要不可欠なものとして、世界的にその動きが加速しています。

      一方で、本調査の結果からは日本企業の調達デジタルトランスフォーメーション(DX)への認識や対応が、世界の潮流から遅れている状況も浮き彫りになりました。

      調達領域のデジタル化は今や世界標準に

      本調査に参加していただいた企業の約9割が、すでに何らかのProcure-to-pay(P2P)またはSource-to-contract (S2C)ソリューションを導入しており、その両方、Source-to-pay(S2P)ソリューションを実装している企業はグローバルで77%でした(図表1)。

      調達領域のデジタル化状況

      言い換えると約1割の企業は未だ調達活動にシステムを活用していないということですが、その内65%は25年までにS2Pソリューションへの投資を計画していると回答しており、調達プロセスにおける基本的なソリューションの導入に対する意識は「Nice-to-have(あったらいいな)」ではなく「Must-to-have(必要不可欠)」であることが見て取れます。  戦略的ソーシング、サプライヤー連携管理(SRM)、入札管理、サプライヤートレーサビリティ等、より広義かつ高度な調達デジタル化という観点から見ると、41%に留まっているものの、72%の企業は25年までの実装を目標としており、同領域における改善意識の高さが伺えます。

      一方で、日本企業を見てみると、P2P/S2C調達システムの導入をはじめ、同領域におけるデジタル化率がグローバルと比べて20%以上も低い結果になっています。特に、戦略的なソーシング(S2C)プロセスのデジタル化に関しては20%にも達していない状況です。さらに年間投資額から見ても、日本の大規模企業の25年度までの調達DX予算の平均はグローバルと比較して35%も低いなど、投資にも消極的な傾向が見られ、全体的に遅れを取っている印象を拭えません(図表2)。

      2025年までの調達DXへの推定投資額(年間)

      コスト削減だけでない調達部門の新しい課題とは

      調達部門の戦略的最優先事項としては、引き続きコスト削減および戦略的ソーシングが最も高い結果となっています(図表3)。この理由としては、これらが元来の調達部門の役割であることに加えて、近年の危機的状況下における安定供給の確保、価格交渉力の強化、サプライチェーンリスクへの対応に迫られていること等が挙げられます。

      調達部門の戦略的優先事項(最優先事項)

      一方で注目すべきは調達DX、リスク管理およびESGという新興テーマが前回調査に比べて増加していることです。特に、調達DXはハイブリッドな働き方への移行、プロセスの効率化、コスト削減など各アジェンダとも強く結びついているためか、前回調査より50%も増加する結果となっています。

      調達DXの先にある意識の違い

      グローバルと日本との比較で興味深いのが、25年に向けてグローバルでは「サプライチェーン・トレーサビリティ」「リスク管理」「サプライヤー連携」「CO2排出量のトラッキング」等の新興の改革テーマにデジタル化の力点を移しつつある一方で、日本企業はソーシングから支払い(S2P)のソリューション導入やデータの可視化という従来型テーマに注力している点です(図表4)。

      2025年に向けたロードマップにおける各デジタルユースケースの出現率

      グローバルではS2Pプロセスの電子化・業務の効率化という課題が一段落し、すでに、より中長期的でサステナブルな調達に目標をシフトしているためと考えられ、目標設定の時点で意識の差が現れてしまっていると言えるでしょう。

      寄稿者プロフィール
      • 吉川 英一 プロフィール写真
      • PwCタイ コンサルティング部門 ディレクター

      • 吉川 英一 

        M&A、各種ビジネスコンサルティング領域において日本国内外を含み計15年の経験を有し、2015年1月よりPwCタイに赴任。東南アジアにおける日本人リスク専門家の第一人者として、業務改善、サイバーセキュリティー、データ分析、不正対応、各種規制対応等の支援を多数指揮してきた。現在は、東南アジア域内における同サービスの日系企業向けの支援を管掌している。米国公認会計士。日本証券アナリスト協会検定会員。公認不正検査士。


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