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知らないことがリスクです!国際相続

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CASE4:

夫(国内居住者:贈与者)が妻(海外居住者:受贈者)に贈与する場合  義雄さんは奥様であるピヤポンさん(タイ人)とバンコクのコンドミニアムに居住していましたが、帰国し、日本の博多の自宅に住んでいます。所有している博多の自宅・日本の銀行預金(国内財産)及びタイのコンドミニアム(国外財産)をピヤポンさんに贈与しますが、日本の贈与税は課税されますか。

→ピヤポンさんは日本の国内財産とタイの国外財産の両方に贈与税を課税されます。

解説:

贈与者である義雄さんは現在日本居住者で、受贈者のピヤポンさんはタイ人で日本国籍がないため、博多の自宅(国内財産)、日本の銀行預金(国内財産)及びタイのコンドミニアム(国外財産)の両方に課税されます。

受贈者であるピヤポンさんはタイで産まれたため日本の国籍はなく、日本の住所もありません。贈与者である義雄さんは帰国し、現在日本の住所があります。2013(平成25)年税制改正で、受贈者のピヤポンさんに日本国籍と日本の住所がなくても、贈与者の義雄さんが日本の居住者である場合は、ピヤポンさんに贈与する名古屋の自宅(国内財産)及びコンドミニアム(国外財産)の両方に課税されることになりました。

 

CASE5:

2017(平成29)年度税制改正ポイント  良太さんはバンコクに住んで3年になりますが、タイでタイ人と結婚して息子ティックくんが産まれてもうすぐ1年、ティックくんに日本の国籍はありません。このたび、息子のティックくんに良太さんが所有している日本の銀行預金(国内財産)とタイの有価証券(国外財産)を贈与しようと思っていますが、日本の贈与税は課税されますか。

→ティックくんは日本の国内財産及びタイの国外財産の両方に贈与税を課されます。

解説:

贈与者である良太さんはバンコクに住んで10年以下ですが、日本に住所があります。受贈者であるティックくんはタイで産まれたため日本の国籍がなく、日本の住所もないため、今までは「制限納税義務者」でしたが、2017(平成29)年度税制改正により、「非居住無制限納税義務者」となりました。この場合、日本の銀行預金(国内財産)、タイの有価証券(国外財産)いずれを贈与しても日本の贈与税が課税されます。

日本からの相続税を少しでも減税するには!!
相続税対策

最後に、事前にできる相続税対策の概要を説明します。

《タイの不動産・株式を妥当な評価に変更する》

タイの日系企業の資産評価(デューデリジェンス)を行っていると、貸借対照表上最も大きい割合を占めているのは、不動産・金融資産・棚卸資産です。

またタイに居住している日本人が亡くなった場合、「日本にいる相続人」に対して「タイの資産に日本の相続税」が課税されますが、タイ居住日本人の相続財産の中で最も大きい割合を占めているのは、不動産と株式です。

つまり、被相続人がタイで所有している不動産と株式の相続税評価額を減額できれば、日本の相続税は減額できるということなのです。

日本での相続時、資産は相続税法上の「財産評価基本通達」で評価され、「土地」の評価は主に「路線価方式※1」であり、「時価(実勢価額)」の8割程度、「建物」は「固定資産税評価方式※2」であり、「時価(実勢価額)」の7割程度となります。

これに対してBOIを取得した日系タイ法人の土地や、日本人個人がタイで取得したコンドミニアムは、日本国が提示している土地の「路線価」または建物の「固定資産税評価額」を適用できないため、「時価(実勢価額)」での評価となってしまい、日本の「路線価額」・「固定資産税評価額」と比較しても割高な評価となってしまいます。

しかし日本でも建築基準法や都市計画法、加えて借地借家法などに照らすと、国税庁が定めた財産評価基本通達ルールの範疇では判断できない複雑な環境や状況下に置かれている不動産があり、このような物件は不動産鑑定評価により減額可能なのです。

タイに資産を所有している日本人の不動産を、タイで不動産鑑定を行って評価額を減額していきますが、日本の国税庁は海外の不動産鑑定書を採用する上での条件があり、大前提は日本の不動産鑑定と同様の基準(日本はアメリカの不動産鑑定評価を採用)で評価しているかどうかです。

タイの不動産鑑定は、日本と同じアメリカの不動産鑑定評価方法(もしくはそれに準じる方法)を行っており、日本と同様の基準で不動産鑑定評価書を作成することが可能です。

アメリカの鑑定評価では①原価法(CostApproach)、②取引事例比較法(Comparison Method)、③収益還元法(Income Approach)を用いて加重平均を行いますが、タイでも同じ手法で不動産を鑑定していきます。

また日本の国税庁は、法定相続人が提出する相続税申告書に添付されたタイの不動産鑑定書について、次のような資料添付が必要としています。 ①海外不動産鑑定士の鑑定評価書 ②①のタイ語・英語・日本語での翻訳書 ③翻訳書に係る日本の不動産鑑定士の意見書 ④タイの渉外弁護士のリーガルオピニオン

この4つの資料がないと国税庁はタイの不動産鑑定評価を認めません。

タイの日系企業が不動産(工場など)を所有していることも多く見受けられますが、この場合会社が所有している不動産の評価を下げることで、会社の株価評価も下げることができます。未上場のタイ日系企業の株式を評価する場合、原則として「純資産価額方式」(資産─負債)に準じて評価を行いますが、資産(不動産含む)は全て相続発生時の時価(実勢価額)で評価します。

そのため以前に購入した不動産の価額(時価)が、相続発生時には取得時の数倍になっており、株価が高騰してしまい、法定相続人の相続税に重大な影響を及ぼしてしまうのです。

つまり会社が所有している不動産の評価額を減額できれば、相続時の株価評価も下がるため、法定相続人の相続税も減額できるということなのです。

※1 路線価方式 路線価とは相続税の計算をする上で課税基準となる土地の「単価」の事です。道路に面する標準的な宅地の1㎡当たりの価額であり、国税庁が毎年算定しています。「公示価額の8割」程度。

※2 固定資産税評価方式  家屋の相続税評価を行う場合、「固定資産税評価」という評価方法が採用されています。価額の水準は「公示価額」の7割程度とされています。根拠法は地方税法です。

POINT
銀行預金の解凍はやり方を間違えた場合、取り戻せずタイの国庫行きという可能性もゼロではない。その場合でも日本の相続税は額面通り徴収される。事前にできる節税対策もあるため、後手に回らないこと。

  

代表取締役・税理士  宮原 裕徳

1992年早稲田大学商学部卒業。1992年4月より吉木公認会計士事務所・㈱ビジネストラスト・飯塚公認会計士事務所勤務。1999年11月に宮原税務会計事務所(現ラムチップ・パートナーズ国際税務会計事務所)を設立し、2002年1月には株式会社ラムチップ・コンサルティング(現株式会社ラムチップ・パートナーズ)を設立、代表取締役就任。

2013年9月にLAMTIP PARTNERS (Thailand) Co., Ltd.を設立しMD就任、今に至る。

株式会社ラムチップ・パートナーズ ラムチップ・パートナーズ国際税務会計事務所 ラムチップ・パートナーズ社会保険労務士事務所

〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-1-3 紅花ビル3F TEL +81-3-6202-7174 FAX +81-3-6202-7175 E-mail miyahara@miyatax.com

LAMTIP PARTNERS(Thailand) Co., Ltd. 1 Glas Haus Bld., Floor Ⅱ Room 1104/2 Soi Sukhumvit 25, Klongtoey Nua, Wattana, Bangkok 10110

 

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ラムチョップ・パートナーズ タイ 国際相続について

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