ビジネス・経済 2019.11月号

タイ人社員主体の組織変革への挑戦 タイ味の素社が取り組む「iCHANGE」プロジェクト

 ライフスタイルの変化と共に食品業界を取り巻く環境も大きく変わりつつある。さらなる成長を促すためには、企業文化を再構築し、新たな歴史を作る必要がある。従来の方法と過去の成功が変化を妨げる障害となるケースもあり、タイ味の素社は「それらを壊し、提案と挑戦に溢れた組織を創る」と2018年10月に組織変革プロジェクト「iCHANGE」を立ち上げた。プロジェクト責任者は嵐田高彰 副社長が担い、タイ人社員2名と共に陣頭に立った。組織改革を推進するリーダーの1期生として、タイ人14名と日本人4名が選ばれた。※「iCHANGE」の「i」とは、革新「Innovation」・発案「Idea」に加えて、
「I can change myself, and I can change our company」の「I」を指す。

「タイで最も信頼される食品会社になる〜社員は誇りを持って人々の笑顔と社会の発展に貢献〜」をビジョンに掲げ、事業展開してきた同社だが、食品ビジネス環境は激変。△競合や新規参入による市場占有率の低下△横ばいの売上高△社内意思決定の遅さ△市場・ライフスタイルの変化やデジタル技術の進歩に対する革新性の欠如――などを直面する課題に挙げる。

要因は様々だが、企業文化に関連した課題が少なくないとも認識している。「組織の壁」、「過度なヒエラルキー(上司に率直に意見を言えない文化)」、「受け身(日本人からの指示待ち)」といった体質が蔓延しており、喫緊の課題となっていた。

「事業が堅調なのになぜ働き方を変える必要があるのですか?」とあるタイ人社員から問われた嵐田副社長は振り返る。人は変化を拒む傾向にある。従来の保守的な体制を維持した場合、「衰退の一途を辿るのでは」と同社の経営陣は危機感を持ち始めたが、変革に反発する声も出た。

ただし、タイ人社員も、変革を成長に導く建設的なアイデアと意見を多く持っているはず。そこで、イノベーションへの挑戦を通じて、社員、組織、事業が一緒に成長するための施策として「iCHANGE」プロジェクトが産声を上げた(図表1)。

目的は、タイ人社員が主役になり、新たな実りある提案や様々な挑戦で溢れる、活性化した組織に生まれ変わること。そのために選ばれた次世代のリーダーは、自発性と情熱を持ち、優れたコミュニケーションスキルを備えているのが特長だ。

対話の技術としてコーチングを活用

「組織の内側から変化を起こす」「全ての能力と答えは、我々の内側にある」「視点を変え、世界全体を見えるようにする」「成功のカギは対話」といったプロジェクトのコンセプトをもとに、コーチングの概念を活用した。各リーダーはプロのコーチングを受けつつ社内の異なる部署のメンバー(6名)へのコーチングを実施。

その効果は、参加した126名(リーダー18名、メンバー108名)を含む社員500名への複数回にわたるアンケートで検証された。

参加者や組織はどのように変わったのか? 双方向コミュニケーションの重要さや自分と異なる意見を尊重する大切さなどの気づきに起因する行動を通じて変化したことがわかる。各人の「自己変革」から始まり、日常業務や会議でのコミュニケーションを通じて、影響は他の社員にも及んだ。

8ヵ月間(254日間)に渡る第1期の活動を通じて、会社のビジョン実現に向けた対話の頻度は、【同僚と】4・2→6・1人(週)、【上司と】1・1→1・9回(週)に増加。組織の状態でもっとも改善したのは、「会議において、全体最適で議論したり、顧客起点で議論できるようになった」であった。また、第一期終了時にもっとも点数が高かったのは、「タイ味の素社で働くことを誇りに思う」(7点満点で6・2点)であった。

ここでプロジェクト参加者のコメントを数件、紹介する。

⑴他の人達の能力を信じるようになった。
⑵周囲の人達ともっとコミュニケーションを取ることで全体像が見えてきて、個人の目標から互いの目標、チームの目標へと意識が変化した。
⑶指示を待つのではなく、改善のために自分ができることを考えるようになった。
⑷組織の問題と解決策を考えるために、より多くの時間を費やすようになった。
⑸変化は怖いものではなく、挑戦だ。
⑹自分の仕事が、会社のミッション実現に通じていることが分かった。

このように社員の意識改革が進み、「iCHANGE」を企業文化になるまで継続しようという機運が浸透しつつある。すでに「iCHANGE」プロジェクト第2期が開始され、新たにリーダー21名、メンバー105名が参加中。また、第1期リーダーによる各工場・各部門独自の「iCHANGE」の取組みも実施されている。さらにミャンマーに転勤した第1期リーダーは現地で「iCHANGE」プロジェクトをスタートさせた。

ただし、まだ道半ば。自分が変わる→周囲の人や職場が変わる→会社が変わる→外部ステークホルダーと共に変わるといった具合に、「iCHANGE」の輪を拡げて、個人・組織・事業・社会が共成長するようなムーブメントにして行きたいと、目指す夢は大きい(図表2)。

タイ人社員の可能性を信じ、タイ味の素社は走り続ける。

タイ味の素HR部長(プロジェクトリーダー リンサニット氏)によるiCHANGEプロジェクトの外部講演
タイ味の素HR部長(プロジェクトリーダー リンサニット氏)によるiCHANGEプロジェクトの外部講演

田 副社長(右)とiCHANGEプロジェクト担当の真田 氏
嵐田 副社長(右)とiCHANGEプロジェクト担当の真田 氏

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