カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行によるタイ経済・月間レポート 2015年3月号

バーツ相場の変動については、タイバーツは、2015年2月末には1ドル=32.32バーツの終値をつけ、2015年1月末の終値1ドル=32.75バーツから上昇する傾向を見せました。欧州中央銀行が3月に量的金融緩和を初導入することを受け、余剰資金がタイを含むアジアに流入するとの観測が強まったことが一因です。一方で、2015年の円相場の動きは、日本銀行が量的金融緩和策の追加緩和を導入したことにより、軟化傾向にあると考えられます。日本銀行が昨年10月には購入する長期国債を年間30兆円積み増すことなどの追加緩和に踏み切りました。
(下記バーツ相場の変動グラフ参照)

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カシコンリサーチセンターは足元の景気について、観光業が改善傾向にあるものの、輸出と個人消費の回復が予想よりも遅れていることから、まだ経済主体の広範な改善をともなうものではないと見ています。
従って、タイ経済の現状から、カシコンリサーチセンターは、2015年通年のタイGDP伸び率の見通しを従来予測である前年比4%増から、新たな予測の同2.8%増に下方修正しました。

2015年のタイの格安航空事業の動向

タイの格安航空業界の競争は、ここ2、3年で激化し、新たな就航地へのルートの拡大競争になっています。特に国内線における旅客のニーズを満たすことが狙いです。それに加え、観光業の成長や様々な地方県の経済成長もあり、格安航空の国内線ルートも、より広範囲なものになっています。このほかにも、一部の航空会社は、空港のない主要都市向けの乗り合いバスやフェリーなどの乗り継ぎサービスも行なっています。こうしたサービスにより、航空会社の旅客数は増大し、人気の観光地を訪れる観光客数も増加しました。
これとは別に、路線の拡大や増便は、タイの格安航空市場への新規事業者の参入による事業者の市場シェア維持も目的としています。タイの事業者とASEANの格安航空事業者間の合弁による、新たな航空会社の設立が増えています。新規参入は、ルート確保を巡る競争のほかにも、特に競合する路線では激しい価格競争を引き起こします。
2015年のタイの格安航空事業は、国内線利用者数が継続的に拡大することから、さらに成長するものと予測されます。注目される点は、国際線の拡大です。2015年末のASEAN経済共同体(AEC)の発足により、さらなるASEAN域内の旅行需要が生まれ、拡大していく見込みです。ASEANの航空自由化による規制緩和もあるため、加盟国間の航空便が拡大すると考えられます。これ以外にも、路線の拡大競争や増便、価格プロモーション、そしてタイからの韓国、日本への中長距離格安航空の相次ぐ就航が、2015年のタイの格安航空事業の拡大を後押しする新たなセグメントになると考えられます。
現在、タイの格安航空事業の短距離国際線数は、30路線あります。タイとASEAN諸国を結ぶルートは、全部で16路線です。また、タイへの旅行者が最も多い中国とタイを結ぶルートはさらに7路線あり、香港、マカオ、インドを結ぶルートが計7路線あります。週ごとの運行便数を見ますと、2013年末におけるタイの格安航空のASEAN向け運行便数は週225便で、国際線総運行便数の週355便と比較して60%以上の割合を占めています。すなわち、ASEAN航空市場は、重要な可能性を持っていることがわかります。
中長距離格安航空の事業に関しては、現在、日本と韓国に就航しており、タイ人旅行者の人気の旅行先となっています。タイ人旅行者向けの旅客サービス以外にも、タイを訪れる外国人観光客向けのビジネス拡大のチャンスになる可能性もあります。また、タイの中長距離専門格安航空は、2015年に路線の拡大を計画しています。中長距離格安航空事業は成長が予測され、タイの格安航空事業を近い将来、さらに大きく成長させる駆動力となると考えられます。
以上から、カシコンリサーチセンターは、2015年の格安航空事業は引き続き拡大し、旅客数は合
計で2922万〜3063万人、前年比24〜30%増になると予測します。

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■タイ経済最新情報 3月号 2015/3/27 (No.109)
監修:カシコンリサーチセンター
マクロ経済・投資調査部取締役副社長
Dr. ピモンワン マハッチャリヤウォン
マクロ経済調査主任研究者
ルチパン アッサラット
ハタイワン トュンカティラクン

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