カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行によるタイ経済・月間レポート 2015年11月号

タイの移動体通信で高速大容量の4Gサービスの普及が本格化

タイの移動体通信は、国家放送通信委員会(National Broadcasting and Telecommunications Commission:NBTC)による今月の1800メガヘルツと来月の900メガヘルツの両周波数で、4G移動体通信向けの周波数入札を経て、来年初めに4G通信の時代を迎えます。早ければ2016年第1四半期中にも商業サービスが始まる見込みです。免許を取得する事業者が、ネットワーク建設の設備投資を急ぐことや、モバイル・ブロードバンドを通じたベンチャー・ビジネスの拡大などが、2016年の景気を牽引する要素の1つになると考えられます。
現在、タイの移動体通信市場は、2Gから3Gへほぼ完全に移行しており、ユーザーはモバイル・ブロードバンドに馴染んでいます。
また、2.1ギガヘルツの3Gキャリアの一部は、15メガヘルツのバンド幅の一部を使って既に4Gサービスを開始しています。カシコンリサーチセンターでは、2015年のモバイル・ブロードバンドのユーザー数は、前年比23.1%増の3460万人となる見込みで、引き続き急増しています。
2016年には3Gと4Gを合わせたユーザー数は、前年比11.0〜14.7%増の3840〜3970万人となり、総人口の60.4〜62.6%を占めると予測します。
タイは交流サイト( Social Networking Service:SNS)の利用が盛んなモバイル大国となっています。インフラの世代交代が一気に進めば、インターネット通販など電子商取引(E-Commerce)やコンテンツ産業の発展にも弾みがつきます。カシコンリサーチセンターでは、4Gサービスのシェア争いにより、移動体通信のキャリアは、4Gのネットワーク建設の設備投資を急ぎ、2016〜2017年に既存ネットワークのアップグレードと新規ネットワーク建設の投資を合わせて、その規模は1580億バーツに達すると予想します。
4Gサービスの普及により、最も恩恵を受けそうなのは、電子商取引のビジネスで、2016年の市場規模は、前年比15.0〜20.0%増の2300〜2400億バーツとなると予測します。
それに加え、2016年のスマートフォン販売台数は、同7.1〜9.0%増の1670〜1700万台が期待できます。
タイでの4Gサービスの普及は経済効果に大きな開きがあります。高速で信頼性の高いモバイル通信は、大量のデータ通信サービスの発展をより一層促すと見込まれます。例として、HD動画の配信などモバイル・エンターテイメント・サービス、ストレージ・サービスなどモバイル・クラウド・コンピューティング、あらゆる機器をつなぐ「モノのインターネット(Internet of things:IoT)」なども後押しすると考えられます。4Gの導入にはデジタル技術を駆使した産業高度化の前哨戦という側面があります。

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■タイ経済最新情報 11月号 2015/11/30 (No.117)
監修:カシコンリサーチセンター
マクロ経済・投資調査部取締役副社長
Dr. ピモンワン マハッチャリヤウォン
マクロ経済調査主任研究者
ルチパン アッサラット
ハタイワン トュンカティラクン

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