2017.02月号

カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行経済レポート 2017年1月号

タイ経済・月間レポート(2017年1月号)

2016年11月のタイ経済情報

11月のタイ経済は前月よりも速いペースで改善基調

  • 2016年11月のタイ経済は回復テンポが加速しました。政府支出は上向いたものの、経済成長のけん引役となっている観光業の伸びは依然として鈍化しています。また、中国による農産物輸入増のほか、集積回路など多くの商品の海外需要が上向き続けていることにより、物品輸出が高い伸びとなりました。これに一致して輸出向けの工業生産も上向きました。
  • 12月の消費者物価の上昇率は、前年同月比1.13%の上昇で、前月の同0.60%増から加速しました。この結果、2016年通年のインフレ率は、前年比0.19%増となりました。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0.74%の上昇で、前月から伸びが横ばいとなりました。
  • タイ政府は経済成長につながると期待される「東部経済回廊 (EEC)」の開発を推進しています。既存産業強化から未来産業育成に向けて、タイ経済成長を押し上げるための新成長エンジンとなる戦略です。チョンブリ、チャチュンサオ、ラヨンのタイ東部3県を対象地域に指定してインフラ開発を始め、次世代自動車工業や、スマート・エレクトロニクスなどハイテク産業の10業種の投資促進を進めています。
  • EECの実現のため、空運、道路輸送、鉄道輸送、水運を含めた運輸インフラが重点的に整備されます。東西を貫くようにインフラを整備するEECプロジェクトは、雇用を創出し、国内経済を支援する新しいビジネス分野となる物流、倉庫ソリューションサービスの需要を創出することも期待されています。

タイ中央銀行が発表した2016年11月の重要な経済指標によると、前月に比べて回復テンポが加速しました。政府支出が引き続き拡大しており、景気の主要な牽引役となっています。また、回復基調は物品輸出が高い伸びとなったことを受けたもので、これに一致して輸出向けの工業生産も上向きました。しかしながら、観光業と民間投資は引き続き鈍化しました。

11月の民間消費は前年同月比1.6%上昇したものの、前月と比べ0.5%減となりました。耐久財と非耐久財への支出がそれぞれ前年同月比3.9%、2.0%下落しました。それに加え、タイ人観光客と外国人観光客の双方で伸びが減速した影響を受けました。一方で、農産物価格は天然ゴムなどで上昇しました。

民間投資は前年同月比1.3%下落しました。全体として幾分改善しましたが、なお収縮を続けており、上向いたのは政府の支援措置を受けている代替エネルギーなど一部の産業にとどまっています。代替エネルギー分野の資本財の輸入は増加し、この業界向けの融資は伸びています。また、サービス業の投資も物流販売や飲食業などで伸びています。

11月の輸出は、前年同月比10.1%増の189億米ドルとなり、前月のマイナス成長からプラス成長に転じました。中国による農産物輸入増のほか、集積回路など多くの商品の海外需要が上向き続けていることが寄与しています。また、電機の輸出は米国向けのソーラーパネルの輸出が好調で、中国のメー カーが生産拠点をタイに再配置した効果が出ています。このほか、石油価格に連動する製品の輸出価格が上昇するとともに輸出数量も増加しました。
工業生産に関しては、前年同月比3.8%の上昇で、4ヵ月連続で前年同月からプラスとなりました。輸出の好調に従い、工業生産も多くの製品で上向きました。特に、電子部品の生産は4ヵ月連続で増加しました。設備稼働率も前月比で上昇しました。観光業は外国人・タイ人観光客の双方で伸びが減速しました。とりわけ、外国人観光客数は、前年同月比4.4%減の240万人となり、前月の同0.5%増から大幅に減速しました。中国人向け「ゼロドルツアー」の取り締まりが最大の下振れリスクとなっています。しかしながら、サービス業では観光関連産業が鈍化しましたが、工業部門の経済活動の拡大による運輸業の成長が穴埋めしています。

2016年12月のタイのインフレ率

商務省が発表した12月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比1.13%の上昇で、前月の同0.60%増から加速しました。この結果、2016年通年のインフレ率は、前年比0.19%増となり、マイナス・インフレを脱しました。

品目別にみると、食品・飲料部門では、前年同月比1.36%の上昇で、前月の同1.49%増からやや減速しました。米・粉製品以外はプラスで、特に果物・野菜が同5.15%と高騰しました。また、非食品部門は同1.00%の上昇となりました。上昇は3ヵ月連続でした。たばこ・酒が同12.98%上昇したほか、燃料石油が同5.26%上がりました。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0.74%の上昇で、前月から伸びが横ばいとなりました。

2017年1月のタイバーツの為替レート

トランプ次期米大統領が、ウォールストリート・ジャーナルのインタビューで、ドルが「高すぎる」と発言しました。中国が人民元を引き下げているため、「我々の企業が彼らと競合できない」と主張し、ドル高に対する警戒感を示しました。これをきっかけに、外国為替市場はドルを売る動きが強まりました。


バーツ対ドルの変動は、一時1米ドル35.3バーツ台まで上昇し、11月上旬以来のバーツ高水準となりました。円対ドルの変動も、一時1米ドル112円台まで上昇し、11月下旬以来の円高水準となりました。

タイ産業構造の高度化に向けた東部経済回廊の開発戦略

現在、タイは経済成長につながると期待される「東部経済回廊(Eastern Economic Corridor : EEC)」の開発を推進しています。その目的としては、タイへの投資を促進し、タイ産業構造の高度化をさせることです。チョンブリ、チャチュンサオ、ラヨンの東部3県をカバーする広域特別経済区を形成し、経済成長を押し上げるための新成長エンジンとなる次世代産業をこの地域に集積させる計画です。インフラも重点的にこの地域に整備し、同時に産業都市開発も目指しています。

タイ政府は、EECにおける投資促進の対象産業として10業種をあげています。短期・中期的には、次世代自動車工業、スマート・エレクトロニクス、富裕・医療・健康ツーリズム、農業・バイオテクノロジー、および未来食品の5業種をタイの既存産業強化により育成することで経済成長の持続を確保し、タイ経済成長の第1次S字カーブとします。一方で、長期的には、ロボット産業、医療ハブ、航空・ロジスティック、バイオ燃料・バイオ化学、デジタル産業の5業種を未来産業として育成することでタイ経済の飛躍的な成長を実現し、タイ経済成長の新S字カーブとします。

EECの実現のため、空運、道路輸送、鉄道輸送、水運を含めた運輸インフラが重点的に整備されます。特に東南アジアにおける海上輸送のハブになるよう、ミャンマーのダウェー深海港、カンボジアのシハヌークビル港、ベトナムのブンタオ港との連結を強化する予定です。また、ウタパオ空港を航空ハブとして開発する計画もあり、同空港の拡張に加え航空機整備センターとしての機能を持たせることで、航空機部品などの産業の集積も図れます。
こうしたインフラ整備事業は、国内の物流網を有機的に結合させるだけでなく、その結果として物流コストの低減を可能にするものと期待されます。東西を貫くようにインフラを整備するEECプロジェクトは、雇用を創出し、国内経済を支援する新しいビジネス分野となる物流、倉庫ソリューションサービスの需要を創出することも期待されています。

EEC開発では、投資総額は2017〜2021年の5年間で約7000億バーツを予定しています。このうち国が国家予算から配分するのは1500億バーツで、残りは国営企業や官民連携(Public‒Private Partnership:PPP)手法による民間企業の投資を想定しています。
投資優遇措置としては、EEC内の対象産業に投資する企業には、50年プラス49年間の長期借地権を付与するほか、法人所得税の減免、外国人経営者や専門家、研究者に対する査証免除などの優遇措置を付与することになります。

“東部経済回廊(EEC)の開発はチョンブリ、 チャチュンサオ、ラヨンの東部3県に特別経済区を形成し、経済成長を押し上げるための新成長エンジンとなる次世代産業をこの地域に集積させる計画。”

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