カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行によるタイ経済・月間レポート 2015年7月号

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タイ経済・月間レポート(2015年7月号)

2015年5月のタイ経済情報

タイ中央銀行が発表した2015年5月の重要な経済指標によると、国内経済の回復ペースは前月までと同様に緩やかになっています。輸出や民間消費が低迷する中で、観光が経済成長をけん引しています。

タイの景気回復ペースは前月までと同様に緩やか

  • 2015年5月のタイの景気回復は、前月までと同様に緩やかになっています。輸出や民間消費が低迷する中で、観光が経済成長をけん引しています。
  • 農業所得が減少し、非農林水産業の家計の所得も横ばいとなっているため、家計が支出に慎重になっています。それに加え、消費者は、輸出減や干ばつ状況から景気の先行きに対する懸念を抱いており、半耐久財と耐久財の支出が低迷しています。一方で、アセアンと中国の経済減速や、米国、日本、欧州といった主要市場の回復の遅れに影響を受け、輸出が低迷しています。
  • しかしながら、中国やマレーシアからの旅行者が堅調に推移したほか、ロシア人観光客も回復の兆しを見せています。ホテル客室稼働率は65.2%から67.5%に上昇しました。
  • 現在、GMS地域での通関システムの基準や各種規則などが各国で異なっていることがGMS域内の貨物輸送の障害となっており、輸送に追加のコストを発生させています。従って、GMS加盟各国は、国境越えの貨物輸送の便宜を図るため、交通輸送に関連した協力枠組みに基づく取り組みを急ぐとともに、通関手続きを一元化し、早急に実践面でも成果が現れるようにする必要があります。

5月の民間消費は前年同月比で0.4%下落したものの、前月比では1.3%上昇しました。農業所得が減少し、非農林水産業の家計の所得も横ばいとなっているため、家計が支出に慎重になっています。それに加え、消費者は、輸出減や干ばつ状況から景気の先行きに対する懸念を抱いており、半耐久財と耐久財の支出が低迷しています。しかし、日用消費財や燃料、運輸・通信サービスへの支出は前月から改善しました。
一方、民間投資は前月比で0.5%、前年同月比で0.4%、それぞれ下落しました。政策金利の引き下げにもかかわらず、機械・設備投資に対する慎重な姿勢が見られました。国内外の需要がまだ不安定なことから、設備投資は先送りされています。
5月の輸出は、前年同月比5.5%減の182億2800万米ドルとなり、前月から引き続き収縮しました。アセアンと中国の経済減速や、米国、日本、欧州といった主要市場の回復の遅れが影響しました。また、世界市場の商品価格が依然として低迷しているほか、アジア経済の減速もタイの物品に対する需要に影響を及ぼしています。
商務省が発表した2015年6月の貿易統計によると、タイの輸出額(約181億6200万米ドル)は前年同月と比べ、5月の5.0%減から7.9%減になり、6ヵ月連続でマイナス成長となっています。長引く干ばつと世界経済の低迷は、タイの輸出低迷につながっています。

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品目別に見ると、農産物・加工品でキャッサバに加え天然ゴムも前年同月比4・4%増と回復傾向が出てきました。しかしながら、工業製品では、大手メーカーのモデルチェンジの影響でピックアップトラックが48.3%減と半減したことを背景に車両・部品が17.7%減となり、全体を押し下げました。
また、2015年上半期(1〜6月)の輸出額を見ると、前年同期比4.8%減の1068億5560万米ドルとなりました。輸出全体の30%を占める日米欧向けでは米国が前年同期比4.1%増の119億1600万米ドル、日本が6.6%減の102億4200万米ドル、欧州連合(EU)が6.2%減の99億1400万米ドルでした。
工業生産に関しては、4月の前年同月比5.3%減から同7.6%減となり、3ヵ月連続でマイナス成長となりました。国内向け、輸出向けとも低調でした。生産品目別ではハードディスク駆動装置(HDD)と車両が、それぞれ20.0%減、12.5%減と2桁台の落ち込みとなりました。HDDの生産減は世界市場の需要の減少によるもので、消費者の趣向はソリッド・ステート・ドライブを搭載したハイテク機器にシフトしています。自動車の生産は、新モデル導入のための大手メーカーの生産ライン変更の影響を受けました。しかし、石油生産は前年同期比で拡大しました。比較ベースとなる前年同月が首都での政治デモにより需要が減少していたことが理由です。また、化学品は需要が伸び続けている合成樹脂の生産増にともない増加しました。
5月にタイを訪れた外国人観光客は38.2%増の230万9000人で、前月の18.3%増から伸び率が大幅に拡大しました。中国やマレーシアからの旅行者が堅調に推移したほか、ロシア人観光客も回復の兆しを見せています。ホテル客室稼働率は65.2%から67.5%に上昇しました。
商務省が発表した6月のヘッドライン・インフレ率は、5月の前年同月比1.27%減から同1.07%減となり、6ヵ月連続で減少しました。
その主な原因は、石油価格が低水準なこと、電気料金に含まれる燃料費調整単価(Ft)の引き下げがあったことなどです。
品目別にみると、食品・飲料は全体で前年同月比0.51%上昇しました。卵・乳製品と肉・魚がそれぞれ3.40%、1.29%下落した一方、果物・野菜は3.07%上昇しました。食品・飲料の中で最も比重の高い惣菜類は0.65%上昇しました。一方で、非食品・飲料は1.90%下落しました。石油が19.69%急落したことで、ヘッドライン・インフレ率を構成する項目の中で2割強のシェアを占める運輸・通信が6.07%下落しました。
また、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0.94%上昇しました。
バーツ相場の変動については、タイバーツは、2015年6月末には1ドル=33.78バーツの終値をつけ、2015年5月末の終値1ドル=33.70バーツからやや軟化傾向になりました。その主な原因は、ギリシャの債務交渉難航の影響により、米ドルが対ユーロで上昇し、タイバーツが軟化したことです。一方で、バーツ対円の変動について、7月8日には100円=28.13バーツの終値をつけ、5月末には100円=27.15バーツから円高傾向を見
せました。7月上旬ギリシャ先行き不安の影響を受け、一時的に円高が進みました。

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