カシコン銀行経済レポート

【連載】カシコン銀行経済レポート 2017年5月号

タイ経済・月間レポート(2017年5月号)

2017年3月のタイ経済情報

3月のタイ景気は引き続き着実に回復基調

2017年3月のタイ経済は引き続き着実に回復しています。物品輸出が引き続き改善していることに加え、農業所得の拡大や消費者信頼感の改善が支援材料となり、民間消費も拡大しました。しかしながら、供給面では製造業の生産が在庫調整で減少し、民間投資は縮小しました。

  • 2017年4月の消費者物価の上昇率は、前年同月比0.38%の上昇で、前月の同0.76%増から引き続き減速しました。国内燃料小売価格が上昇したものの、食品価格が前年同月を割り込み、全体を押し下げました。一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0.50%の上昇で、前月から伸びが横ばいでした。
  • タイの自動車産業は電装化の進展に伴い、車載用センサーの需要拡大が継続しています。カシコンリサーチセンターでは、2014年から2016年にかけてタイの自動車産業におけるセンサーの需要は年平均8.3%増加し、年間およそ9,000万個を超えると見積もっています。
  • カシコンリサーチセンターは、2017年のタイ自動車産業向けセンサーの需要が引き続き増大し、前年比13.1%増の1.12億個になると予測します。金額では前年比8.6%増の269億バーツになる見通しです。
  • 海外企業、特に日系企業は、タイにおける車載用センサーの需要急増に対応するために、タイに新工場建設や生産設備拡張を行なっています。タイの車載用センサー産業では、安全性向上関連の製造業者数が56.3%で最も多く、次いで動力伝道機構関連の31.3%、および快適性・娯楽性向上関連の12.5%となります。

タイ中央銀行が発表した2017年3月の重要な経済指標によると、足元の景気は引き続き着実に回復しています。輸出の回復が続いていることに加え、家計収入の上昇と信頼感の改善に伴い、民間消費が拡大しました。しかしながら、供給面では製造業の生産が在庫調整で減少し、民間投資は縮小しました。
3月の民間消費は前年同月比3.0%上昇しました。特に耐久財の消費が上向き、自動車の販売台数は増えています。ゴム相場の反発、コメの収量増による農業所得の拡大や消費者信頼感の改善が支援材料となっています。一方で、非耐久財の消費は微増にとどまりました。

民間投資は前年同月比2.2%下落し、前月から引き続き鈍化しています。建設投資と設備投資の双方で前年同期に比べて収縮しました。特に商業、エネルギー、通信業では前期に投資が加速していたことの反動で減小しました。

3月の輸出は、前年同月比10.8%増の208億米ドルとなりました。多くの物品で拡大しました。モノのインターネット(IoT)対応機器、自動車部品、スマートフォン用の電子部品の輸出が拡大したほか、原油相場に連動する商品は、原油価格が前年同期を上回っていることから輸出価格が上昇しました。また、ゴム製品や石油化学製品などの輸出は中国、アセアンからの引き合い増を受けて数量ベースでも拡大しました。
工業生産に関しては、前年同月比0.5%減となり、前月からやや横ばいとなりました。しかしながら、季節調整済みの前月比では上昇しています。前月に定期修理があった石油生産が正常化したほか、外需増にともないゴム製品、プラスチック、電機の生産が増加しました。

観光業では、外国人観光客数が前年同月比2.0%増加しました。中国、マレーシアからの観光客数が増加しました。しかし、欧州からの観光客は鈍化しました。今年の復活祭の連休が4月になっているため、これを前にした旅行の延期が関係しています。

2017年4月のタイのインフレ率

商務省が発表した2017年4月のヘッドライン・インフレ率は、前年同月比0.38%の上昇で、前月の同0.76%増から3ヵ月連続で減速しました。国内燃料小売価格は上昇したものの、食品価格が前年同月を割り込み、全体を押し下げました。

品目別にみると、食品・飲料部門では、前年同月比0.26%の減少で、前月の同0.68%増から縮小しました。米・粉製品と卵・乳製品が前月に引き続き落ち込んだことに加え、果物・野菜が同5.42%減と減少幅が大きくなりました。一方で、非食品部門で構成品目の2割強を占める住宅部門が前年同月比1.17%下落しました。そのほかは、運輸・通信が同3.07%上昇するなど、おおむね横ばいでした。
一方で、振れ幅の大きい生鮮食品とエネルギーを除くコア・インフレ率は、前年同月比0.50%の上昇で、前月から伸びが横ばいでした。

2017年5月の外為相場

米連邦準備理事会(FRB)の6月利上げの可能性が高まり、4月下旬から5月上旬にかけてドル買いを促す要因となりました。しかし、5月9日にトランプ米大統領による連邦捜査局(FBI)のコミー長官の突然の解任で、大統領自身に降りかかる政治的リスクが高まり、ドル売りの要因となりました。


円対ドルの変動は、5月17日には1米ドル=112.3円の終値をつけ、5月10日の1米ドル=114.3円からドル安傾向となりました。そして、バーツ対ドルの変動も同様にドル安傾向を見せました。今後、米政治が為替相場の波乱材料となる可能性があります。

2017年の車載用センサーの需要額は260億バーツを超える見通し

近年、自動車の「安全性」「快適性」「環境対策」「省エネルギー化」「情報化」に対応するため、カーエレクトロニクス化が加速しています。この流れの中、世界の自動車産業ではさまざまな車載用電子部品の技術開発・導入とともに、半導体素子であるセンサーの需要が引き続き堅調に拡大傾向にあります。タイの自動車産業においても、同様の傾向が見られます。カシコンリサーチセンターでは、2014年から2016年にかけてタイの自動車産業 おけるセンサーの需要は年平均8.3%増加し、年間およそ9000万個を超えると見積もっています。

車載用センサーは、3つのグループに分けられます。それは、①安全性向上に貢献するセンサー(例、ブレーキ圧力センサー)、②動力伝道機構に貢献するセンサー(例、燃料噴射装置の吸気温センサー)、および③快適性・娯楽性向上に貢献するセンサー(例、カーエアコンの温度センサー)です。現在、タイの自動車産業では、この3つのグループにおいて一部のセンサーがタイ国内で生産されています。

タイの車載用センサー産業では、安全性向上関連の製造業者数が56.3%で最も多く、次いで動力伝道機構関連の31.3%、および快適性・娯楽性向上関連の12.5%となります。製造業者を国別に見ると、日系企業が最も多く、タイでの車載用センサーの生産者数全体の約58.8%を占めています。
タイの自動車産業は電装化の進展に伴い、車載用センサーの需要拡大が継続しています。しかし、この需要の約65%は海外からの輸入に依存しています。
特に、日本、中国、米国、マレーシアからの輸入です。この輸入額全体の約47.5%は日本からの輸入です。現在、タイにおける車載用センサー産業は、年産約2.32億個の生産能力を有しています。このうち、約15%の3470万個は国内市場に供給されている一方、残り85%は輸出されています。

近年、海外企業、特に日系企業は、タイにおける車載用センサーの需要急増に対応するために、タイに新工場建設や生産設備拡張を行なっています。とりわけ、後工程と呼ばれる検査や組み立ての工程への投資です。一方で、集積回路をウエハーに形成する前工程では、日本を含む海外で実施し、タイで後工程を担い、タイ国内市場と世界市場に出荷する体制となっています。

カシコンリサーチセンターは、2017年のタイ自動車産業におけるセンサーの需要が引き続き増大し、前年比13.1%増の1.12億個になると予測します。金額では前年比8.6%増の269億バーツになる見通しです。

“2014年から2016年にかけてタイの自動車産業におけるセンサーの需要は年平均8.3%増加し、年間およそ9,000万個を超える見通し。”

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