中野陽介コラム

アート旅行記 世界に隠れた美の力12 日本/高千穂

日本がより豊かで平和な国になるように、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が、孫の瓊瓊杵命(ににぎのみこと)を降臨させた天孫降臨の地として知られる、宮崎県の高千穂に行ってきました。

陸の孤島と言われるほどの、高千穂の周りを囲む豊かで美しい大自然そのものが、古代から残る神様の愛の結晶かと思われるほど神聖な空気が流れていました。天照大御神がお隠れになった洞窟「天岩戸」、その際に八百万の神々が集まり相談したという洞窟「天安河原」、高千穂の総社「高千穂神社」―と、日本国に重要な意味を持つ神様に、身の引き締まる思いでご挨拶してきました。中でもご挨拶したかったのは、天照大御神が天岩戸から出て来られるキッカケとなった、「神楽舞」を舞った芸術・芸能の神様「天宇受売命(あまのうずめのみこと)」です。

芸術は「舞」から始まっていました。普段見られない奇妙な動き、羞恥心を捨てた佇まい、バカと笑われる覚悟の「舞」は突如、現実空間に非現実のイリュージョン空間を作り出します。現実と非現実の実像世界を目の当たりにすることで、私たちは歓喜しますが、それは神様も同じだったようです。思えば、私たちも日々色んな佇まい(佇舞い)で、人生という大舞台の上で踊り生活をしています。家庭での「パパにならなきゃ舞」、接待時の「気に入ってもらわなきゃ舞」などありますが、仕事時の「マジメにしなきゃ舞」を踊っている時間が長すぎると、「ふマジメおバカ舞」が上手に踊れなくなってしまいます。

様々な人間関係が交錯する中で、楽しさを提供しなくてはいけない場面もあるでしょう。そんな時は、天宇受売命のバカに舞える「賢さ」と、自分をおもちゃにして遊び舞える「強さ」を見習い、この舞が家族、職場、自分自身を救うという自覚と誇りを持って、喜んで舞える自分で居たいと思うようになりました。
天照大御神が天岩戸から出て来られたことで、世界は再び光に包まれました。目の前の人のために舞う私たちの「人楽舞」は、結果、自分のための光になるということを、天宇受売命の「勇姿」が物語ってくれている気がします。

Artist Profile: バンコクの会社で出会って3年後に結婚した2人。夫でアーティストの中野陽介は本物の芸術を見つけるために、妻は次に住みたい国を見つけるために、1年間で23ヵ国を巡る“世界一周ハネムーン旅”を2016年6月からスタート。
yosukenakano.com

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