Book Review

仕事だけの人生からよいアイデアは浮かばない『わたしが旅から学んだこと』


New-Era International Co., Ltd.
幸長加奈子
兵庫県姫路市出身。「海外に住んでみたい」との思いを胸に、高校卒業後の2001年に来タイ。語学学校で学んだ後に、日系のアパレル関連会社、自動車部品加工会社での勤務を経て、09年に設立されたニュー・エラー・インターナショナルの社長に就任。今年で10年目を迎えた。
https://www.newera.co.jp/en/corporate/


兼高かおる著
小学館文庫 196B

 「私の人生のほとんどが仕事であり、旅だった」――海外旅行ブームの先駆けとなった長寿番組「兼高かおる 世界の旅」のリポーター、ディレクターなどを務め、約150ヵ国を駆け巡った兼高氏(今年1月に90歳で死去)が、旅を通じて得た人生観を綴った本書。「心を休めたときに頭は動き出す」と、日常生活を離れたときに、よいアイデアも生まれると、働き過ぎの日本人に説く。

 日系企業の社長を務める幸長氏も業務に追われる多忙な日々を送る。根っからの旅好きで、時間と旅行資金を工面してスリランカなど多くの国を訪問したが、趣味のダイビングなどを疎かにしてきた時期があったと振り返る。

 「贅沢が文化を、余裕がアイデアを育てる」「人生三分割-学んで、尽くして、あとは自由に」が印象に残った名言として挙げる。兼高氏の旅を通じて得た世界観・人生観に共鳴。二者択一ではなく、旅と仕事が一対になっており、どちらも充実させる生き様にあこがれるという。仕事を効率よくこなすと時間に余裕が生まれ、旅など自分が好きなことをできることにも気づかせてくれたと、独自の視点を持つ本書を薦める。

 若干27歳で社長に就任し、人生三分割の「学んで」を全うした幸長氏。旅と仕事に授かった子宝が最近加わった。現在は「尽くして」を実践しており、「これまでとは違った旅の楽み方ができる」と前向きだ。残り3分の1の「あとは自由に」も大いに楽しみにしていると笑顔で語る。

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