Book Review

身近で遠い貧しさに気づく 『世界から貧しさをなくす30の方法』

Vector Group Ltd.
川東真理
石川県生まれ。東京で大学を卒業後、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(株)にてビッグデータを活用したマーケティング事業、新規事業の立ち上げを経験。2017年より総合PR会社(株)ベクトルのタイ拠点に駐在し、現地責任者を務める。
http://www.vectorinc.co.jp


田中優、樫田秀樹、マエキタ・ミヤコ 編集
合同出版 531B

大学の准教授、NGOの代表、ボランティアセンターの事務局長ら13名が、いわゆる発展途上国での実体験に基づいて執筆した30話を3名の編者がまとめた本書。編者代表によると、貧しさをなくす方法といわれたら、多くの人は貧困層の生活の改善策を考えるが、変えられるのはごくわずか。それよりも、ガーナのチョコレート、マレーシアのパーム油(シャンプーなどの植物原料)といった、私たちが日常生活で食べたり、使っている作物や製品を生産する国々で生み出される貧困の仕組みに気づいてもらうことが大事と説く。

「日本にいた時には気に留めなかった国際情勢や環境・社会問題について意見する外国人の学生と接して、目覚めました」と、高校時代の1年間の米国留学から帰国した川東氏が手に取ったのが本書で、「ニュースで見るような遠い世界で起きていることが、いかに自分の身近な生活につながっているかを気づかせてくれた」と振り返る。

作物などを適正な価格で取引し、公正な貿易を継続することで、生産者の生活を支える「フェアトレード(第5章)」への関心が高まり、インドネシアから独立した東ティモールのコーヒー農家を支援する国際協力活動にも参加した川東氏。PR事業を軸に展開するベクトルの企業理念は、「いいモノを世の中に広め、人々を幸せに」。同書から得た気づきを生かして、タイでも社会貢献できる仕組みの構築に取り組む考えだ。

 

gototop