【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

タイの自動車市場のセグメント別動向と構造変化(前編)

タイの自動車市場のセグメント別動向と構造変化(前編)

タイの自動車市場は2017年に前年比13%増の872千台に到達し、2013年以降の販売減に歯止めがかかった。本稿ではセグメント構造を分析することで、市場の変化ないしユーザーの変化をつかみたい。

タイ自動車市場のセグメント別動向

2017年のセグメント別動向をみると、1)4割以上を占める最大のセグメントである1トンピックアップが堅調に推移したこと、2)小型乗用車セグメント(1リッターから1.2リッターのPC-Aseg、1.2リッターから1.6リッター以下のPC-BSeg)が前年比2割以上と回復を牽引したこと、の2点が主に挙げられる。

ピックアップは、地方・農村部や都市部での小売・運送部門を中心に人気が根強く、2017年後半以降は農産物価格の回復と、政府による公共投資による景気の下支えから、36万台と2014年のレベル近くまで回復してきている。

ピックアップに次いで大きい小型乗用車セグメントは、2017年に23万台に到達し、2014年のレベルまで戻った。同セグメントの購入層は中所得層以下もしくは若年層であり、景気変動の影響を最も受けやすい。過去には2012年のファーストカーバイヤーの時期に急速な伸びを示し、2013年以降は景気の低迷を受け、2015~16年には20万台を割り込んだ。しかし、2017年以降の景気回復に加えて、2012~13年にファーストカーバイヤー政策で車を購入した人を対象とした5年間の再販規制が解除されることにより、ファーストカーバイヤーの買い替え需要が貢献している側面もある。

ただし、ファーストカーバイヤーは、中所得層でほぼ乗りつぶすまで乗り続けるユーザーと、比較的裕福な家庭の若年層で5~6年で買い換えて、より高級な車にステップアップしていくユーザーの二つに分けられる。特に前者は過去の家計負債で生活を切り詰めており、ファーストカーバイヤーの代替需要が今後大量に発生することは期待できない。他方で、高齢化により若年層人口は今後減少することから、ステップアップのために購入する小型乗用車ユーザーも今後大きく伸びないと推察される。

次稿では、主なセグメント別構成の変化をみながら、ユーザーの嗜好やニーズの変化について触れたい。

(ArayZ4月号に続く)

執筆者:野村総合研究所タイ


マネージング・ダイレクター
岡崎啓一


シニアコンサルタント
山本 肇

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