【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

アセアンの電動化(xEV)政策動向

タイの自動車市場のセグメント別動向と構造変化(後編)

アセアンでは、xEV(EV及びPHEVを中心とした電動車)誘致の競争が早くも始まろうとしている。主要国はxEV関連投資を自国に引き入れるために、xEV産業ハブ化の戦略・ビジョンを発表し、具体的な投資優遇措置の供与や充電設備を中心としたインフラ投資の計画を進めようとしている。本稿では、アセアン主要国のxEV政策の概要を整理しながら、各国の政策の共通点と特徴をとりあげる。

アセアン主要国のxEV政策動向

アセアン主要国のxEV政策は下表の通りで、各国ともビジョンにおいて、意欲的なxEVの普及台数目標を掲げている。また、目標を達成する政策手段として、投資優遇措置や物品税率の引き下げなどを策定ないし策定中であり、現地でのxEV生産及びその普及を後押しする。各国で共通するのは、xEVの普及を図りながら、国際公約である環境負荷(GHG排出量)を軽減すると同時に、xEV生産ないし関連部品産業の投資誘致を目的としていることである。

タイは「Thailand 4.0」の産業誘致策の一環として、バイブリッドとPHEV/EVの生産の投資誘致を図り、ピックアップ、エコカーに続く3つ目のプロダクトチャンピオンとして地域の生産ハブを目指している。

マレーシアは、タイが既存の自動車産業の生産拠点化で先行されたことから、xEVで巻き返しを図るための政策の打ち出した。第一弾は2014年で、他国に先んじてHEVやBEVの生産促進のための物品税や輸入関税の免税措置を実施した。また、第二弾として2015年に「国家Eモビリティ計画」を発表し、2020年までに電動車の地域の中心市場になることを目指し、エネルギー・グリーンテクノロジー・水省(KeTHA)傘下機関のグリーンテックを中心に普及のための施策を実施する予定である。

地域の自動車生産でタイに次ぐ規模を誇るインドネシアは、他の主要国に比べるとxEV政策が後手にに回っている感は否めないが、その遅れを挽回するためか、昨年に唐突に2025年までにxEVを含むLCEV(Low Cost Emission Vehicle)の生産比率を20%まで引き上げ、2040年には化石燃料車を全面禁止する政策を発表した。官公庁間やその他ステークホールダーとの政策調整が長引いているものの、今年中には、具体的なLCEV政策を発表する予定である。

いずれの国でも共通するのは、意欲的な電動化ビジョンを実現するための政策の整合性(充電インフラ整備計画、電力源構成、ユーザーへのインセンティブ等)がまだとれていないことである。一言でいえば、投資誘致を目的としたビジョンや政策が先走り、普及のための政策調整や環境整備が立ち遅れている。次稿以降では、各国のxEVと関連する産業政策、エネルギー政策などとの政策の整合性を検証すると同時に、各国のxEV関連投資状況、産業構造から各国のxEV産業発展のポテンシャルを比較したい。

(ArayZ6月号に続く)

執筆者:野村総合研究所タイ


マネージング・ダイレクター
岡崎啓一


シニアコンサルタント
山本 肇

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