2020.10月号

【野村総合研究所】タイ、アセアンの自動車ビジネス新潮流を読む

第34回 コロナ禍と自動車輸出への影響【インドネシア】

野村総合研究所タイ タイ、アセアンの自動車ビジネス 新潮流を読む

 インドネシアで新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。累計感染者数は9月8日には20万人を突破。ジャカルタ特別州では一時緩和していた大規模社会的制限(PSBB)を同14日から再強化した。その結果、自動車市場の先行きは不透明な状況にある。

国内販売の低迷、輸出拡大にも課題

8月の自動車販売は前月比48%増の37,277台と3ヵ月連続で回復している。ただし、対前年比で見ると1月~8月の累計で51%減、8月単月で59%減と、30%減まで戻っているタイに比べて落ち込みは大きい。

ロックダウンによる経済活動の低迷、消費者の購買力の低下に加えて、自動車ローンの引き締めが行われた。政府は経済対策の一環として、9月まで自動車ローンの返済猶予措置を講じたが、返済不払いが急増して頭金比率の引き上げなどローン条件が厳しくなった。同国では、購入者の8割以上がローンを利用しているため販売への影響が大きい。

自動車生産は5月以降回復している。生産を下支えしたのは輸出である。5月に販売が前年比95%減に落ち込んだ際も、輸出は同76.6%減、6月以降は約50%減で推移している。ただし、8月の輸出は中近東市場の減速もあり前月より減少し、回復に陰りが見えてきている。

インドネシアは近年、タイからの生産移転を受け、輸出が拡大傾向にある。インドネシア自動車製造業者協会(GAIKINDO)の統計では2015年の21万台から昨年は33万台に到達した。

ただし、輸出の内訳はタイと二つの面で異なる。第一に、地域別の仕向け先構成ではアジア向けが65%を占め、最大の輸出先のフィリピンが6万台を超えるなど、インドネシアは特定の国への依存度が高い。アジア、オセアニア、中近東などに相当数輸出しているタイと比べると、輸出市場の多様化が進展していない。

第二にインドネシアの車種構成では乗用車が97%以上を占め、その大半は7人乗り3列シートのミニバンや小型MPV(多目的車)、小型SUV(スポーツ多目的車)となっており、豪州など主要輸出市場の嗜好に合う車種が少ない。一方、タイはピックアップを中心とする商用車や小型乗用車、SUVなど多様な車種の輸出拠点化に成功している。

政府が図る輸出拡大への協力

GAIKINDOの見通しでは、今年の自動車生産は前年比50%減の50万台まで落ち込む。現在、生産能力は200万台以上に達し、余剰生産能力の問題がメーカーに重くのしかかる。

国内市場の回復が遅れる中で、政府は貿易収支の改善も見込める輸出拡大への協力を自動車メーカーに対して一層強めると予想される。特に19年3月に豪州と包括的経済連携協定(EPA)を締結しており、メーカーに豪州向けの輸出拠点化を強く求めると見られる。

しかし、日系メーカーは豪州市場に合う車種がないために、インドネシアが得意とする小型MPV/SUVや排気量1.2リッター以下の小型乗用車を周辺国や中東、中南米などの新興国向けへ拡大することで協力すると見られる。

寄稿者プロフィール
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  • 野村総合研究所タイ
    マネージング・ダイレクター田口 孝紀

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    シニアコンサルタント山本 肇

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経営・事業戦略コンサルティング、市場・規制調査、情報システム(IT)コンサルティング、産業向けITシステム(ソフトウェアパッケージ)の販売・運用、金融・証券ソリューション

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