【連載】千代田中央法律事務所 タイの業法・規制法

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タイの業法・規制法(第2回) 有害物質・産業廃棄物規制について②

前回から、有害物質・産業廃棄物の管理、処理にかかる規制について取り扱っている。
前回は規制体系を所管する機関、規制をめぐる法体系についてひととおり概観してから、各論の手始めとして、2005年工業省告示第6~14項に基づいて有害物質の排出者に対して課される義務を取り扱った。
今回は、前回に引き続いて有害物質の排出者に対して具体的に課される義務内容について見た後に、有害物質の処理にかかわる業者に対する規制についても取り扱うこととしたい。

1.有害物質排出者の義務内容②

以下では、有害物質の排出などを行う者に対して課される義務のうち、有害物質法に基づくものについて解説する。

(1)化学物質の分類

前回においても触れたとおり、有害物質法において、有害物質とは爆発物、可燃物、酸化物、過酸化物、有毒物、病原性物質、放射性物質、遺伝子変異の原因となる物質、腐食性物質、刺激性物質、人、動物、植物、財産に危険を及ぼす物質であるとされている。有害物質法では、有害物質に対して規制を行うに当たってそれらを4つのカテゴリに分類している。
分類の基準としては、①化学物質が有する影響力、危険性、②国際規約において規制物質とされているか否か、③有害性がより低い他の物質に置換できる可能性、④他の法律において所管されているか否か、といったものがある。

(2)各カテゴリに対する規制内容

(ⅰ) 第1種有害物質については有害物質の情報について届出を行い、指定された基準、方法に則って製造、輸出入、保管(以降併せて「取扱い」という)されなければならない。

(ⅱ) 第2種有害物質については仏歴2537年工業省告示に基づき、有害物質の生産量、輸出入量、保有量の通知を行うと共に、有害物質取扱事業者登録が必要である。また、指定された基準、方法に則って取扱いがなされなければならない。

(ⅲ) 第3種有害物質については第2種有害物質と同様の通知、登録と共に、営業許可が必要である。営業許可の申請方法は、製造業者、輸出入業者、保管業者それぞれで異なる。また、輸出入業者は、輸出入の度に通関手続に先立った申告が必要である。またやはり、指定された基準、方法に則って取扱いがなされなければならない。

(ⅳ) 第4種有害物質については事実上取扱いが禁止されている。

2.有害物質排出者の義務内容③

有害物質排出者の義務についての各論の締めくくりとして、2010年工業省告示に基づくものについて取り扱う。
同告示は、有害物質を取扱う業者に対して有害物質の取扱いに対する専門作業責任者の設置義務について定めている。①総量年間1000トン以上の有害物質の製造、輸出入業者、②保管面積300平方メートル以上の有害物質の取扱い業者および保存業者、③可燃性物質または酸化剤の取扱い業者に設置義務がある。

3.産廃処理、産廃収集業者に対する規制

有害物質、産業廃棄物の廃棄に際しては、専門の業者を使用すべしとの規定が工場法などに存在するが、規制の水漏れがないようにそれら専門業者に対しても一定の規制が行われている。このうち、有害物質、産業廃棄物を排出する企業が関心を有するのは、専門業者が有効なライセンスを保有しているか否かであろう。
産廃処理、収集業者にとって必要となるライセンスの取得方法は概ね通常の工場操業の際に必要な営業許可と差異がないが、下記要件が追加される。許可の期間は5年間(許可取得の5年後の12月31日まで)である。

(ⅰ) 国家環境質向上法に基づき、環境影響評価(EIA)を得なければならない。

(ⅱ) 焼却炉を設置する際には、焼却炉の機能性の証明書、焼却炉に付される大気汚染防止システムの詳細を記述した書面、受け入れる有害物質のリストを提出しなければならない。

(ⅲ) 有害、非有害に関わらず産業廃棄物埋立業者の設立には、埋立地の詳細のレイアウト、 受け入れる廃棄物のリスト、埋め立て前の廃棄物の保管方法、埋め立てガスの排気方法、 埋立地からの汚水処理の方法をDIWの基準に基づいて提出しなければならない。

(ⅳ) 産廃処理業者が操業する上では、保管・分別・リサイクルする場所を明示した工場レイアウト、リサイクルできない廃棄物が発生した際の処理方法(売却先や処理委託先)などの 詳細を提出しなければならない。

(ⅴ) 排出企業から処理・リサイクル業者へ産業廃棄物を運搬するために、工場設立とは別に 運搬許可をDIW から取得しなければならない(有害廃棄物の移動については別途運輸省の許可も必要)。

4.GHS

タイにおいては2013年3月からGHSの導入が開始されており、現在では、先行的にDIWが所管する物質に対してのみ適用がなされている。また、現在のところ適用の対象は単一物質に対してのみであるが、2017年3月からは、混合物に対しても経過措置が撤廃され、適用予定である。
国連GHSと同様に、物質を28に分類し実施している。

【共著:平井遼介弁護士】

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佐藤聖喜 代表弁護士

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平井遼介 弁護士

千代田中央法律事務所・バンコクオフィス
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