【連載第1回】千代田中央法律事務所 タイの労働法制 ~就業規則について~

chiyoda

日系企業がタイ国内で会社を運営していくためには、タイ人を雇用し、業務を滞りなく遂行できるよう指示監督していく必要がある。タイ人の雇用に当たっては、タイにおける労働法制をよく理解しておくことが重要。そこで、本稿では、タイの労働法制について取り上げることする。

就業規則について

就業規則の必要性

タイ人従業員を採用し、日常業務を効率よく遂行させるとともに、個々の従業員から、取扱いに対する不平・不満が上がることを防止し離職率を抑えるためには、従業員に対して統一化された客観的基準による公平な取り扱いを行う必要がある。
そこで、始業・就業時間、休憩時間、休日、賃金支払い日などの労働条件について、就業規則等全従業員に統一的に適用される書面を作成し、従業員に周知させ、それに基づく画一的な取扱いをすることが効果的である。

就業規則の作成

①作成義務
従業員が少数の場合は、使用者と個々の従業員との意思疎通が容易なため、画一的な労働条件を定めなくても問題ないが、従業員が増えた際には、画一的な労働条件を定める必要がある。
そこで、労働者保護法は10人以上の従業員を有する場合には、従業員数が10人以上になった日から15日以内に、タイ語で就業規則を作成しなければならない旨規定している。日本においても、従業員数が10名以上になった場合には、就業規則を作成・届出する必要があり、この点では共通している。
相違点としては、日本では事業所ごとに従業員数が判断されるが、タイにおいてはすべての事業所の従業員が10名以上になったか否かで判断されることが挙げられる。
就業規則に記載しなければならない事項(必要的記載事項)として、労働時間、休日、賃金などが定められている(表)。その他の事項を、各企業が必要に応じて定めることは問題ない。ただし、労働法で定められている労働条件に関する規定に比して、労働者にとって不利な労働条件を定めることは原則許されないので労働法の把握・理解が必要となる。

②周知義務
就業規則は、使用者が定める労働条件に関する規則であり、労働者を拘束するものである以上、従業員がいつでもその内容を閲覧できるよう、周知しなければならない。
そのため労働者保護法では、就業規則を作成したのち公示し、就業規則の写しを事業所または事務所に備え置かなければならない旨規定している。

③届出義務
就業規則を作成し公示したのち7日以内に、労働官に就業規則の写しを提出しなければならないとされている。労働官は、提出された就業規則が労働者保護法をはじめ労働法制に反しないかを確認し、法令違反がある場合には、就業規則の修正を指示する。企業はその指示に従い、就業規則を訂正し再提出する必要がある。
この手続きを踏むことで、労働法に反する就業規則が作成されることを防止し、労働者を実質的に保護しようとしているのである。
尤も、この労働者保護の趣旨を貫徹するためには、企業が就業規則を変更する際にも、やはり当該変更が労働法に反するものでないかについて、労働官の審査を及ぼす必要がある。そのため、就業規則の作成段階のみならず、就業規則の内容を改定した際にも、改定後7日以内に公示するとともに、労働官へ届出をする必要がある。

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佐藤聖喜 代表弁護士
千代田中央法律事務所・バンコクオフィス
1 Empire Tower, 23th fl., River Wing West,
South Sathorn Rd, Yannawa,
Sathorn, Bangkok 10120
02-670-1398
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