2019.12月号

アジアでの「CFO経営」

Vol.20 2019年度の総論

アジアでの「CFO経営」Vol.20 2019年度の総論

日本とアジアで20年、1300社の経営に寄り添ってきたエスネットワークスが解説する、在アジア日系企業の経営管理術。

2019年に寄稿させて頂いた内容は大きく「不正管理」と「クロスボーダーM&A実務」の2つに分かれました。今回は、今年寄稿させていただいた総論をお伝えし、読者の方が20年も持続的発展ができるサポートができればと考えております。

1.不正管理

発展途上国において不正は一般的に多く発生しており、トランスペアレンシー・インターナショナル(国際透明性機構、TI)が1995年以来、毎年公開している不正関係を調査したTICPI(腐敗認識指数)によると、タイは180ヵ国中96位(順位が低いほど不正が多い)であり、まだまだ発展途上国であるということが確認できます。

それと比較し、日本は20位という成績でクリーンな国家と位置付けられています。タイに進出した日系企業は、日本と同様の仕組みで会社運営を行うケースが多く、日本では想定されていない不正行為が発生しているため、未然に防ぐことができないケースが多いです。事前に食い止めるためにはスタッフ各人にすべてを管理させるのではなく、運用フローで防止することが重要となります。

例えばスタッフ各人で不正の多い小口現金を管理させるには、小口現金管理表を必ず作成させ、月末に数えた現金と管理表を毎月取締役に報告させることが望ましいと考えます。

報告方法としては実際に取締役に金庫の中身を報告する方法や数えた現金を写真に撮って小口現金管理表の証憑として保管させるなど、常に実際に金庫にある現金を開示させる仕組みを設けることで運用フロー上、不正をやりにくくすることが重要です。

組織的に不正が行われているキックバックなどのケースでは、見積もりから意思決定までをスタッフが行っているケースが多く見受けられます。

また、コミッションなどのキックバックはタイでは一般慣習として存在しているため、未然に防止することは難しい状態ですが、最低限複数社から見積りを取り、職務権限規程を設け、意思決定には日本人を最終承認者とする運用フローが必要であると考えております。

また、内部監査として見積りから意思決定までが運用フロー通りに運用されているのか、発注した金額はマーケットと比較して妥当かを、定期的に外部や本社に依頼してチェックしてもらう事が重要です。

このように不正はどのようなビジネスフローでも発生する可能性があります。不正をやっていけないと就業規則に定めるだけでは、個人の不正に対する考え方に左右されてしまいますので、不正を未然に防ぐ運用フローを構築して、日々チェックできる体制を構築することが重要であります。

また、運用フローを構築することで、日本人が管理に割く工数が削減できるため、徹底した対策を社内で構築することが重要になります。

2.クロスボーダーM&A

近年日系企業が海外に進出したいという意欲が高まっております。日本のマーケットは縮小傾向で労働人口も減少しており、今後20年先を見据えた場合には、海外に投資することが重要であると考えている企業が多いためです。しかしながら、M&Aの80%は失敗すると言われており、海外になるとその成功確率は非常に低い傾向にあるといえるでしょう。

ではどのようにすればクロスボーダーM&Aが成功するのか。要約すると、セルサイド(売手)のFA(ファイナンシャル・アドバイザリー)がローカル企業の場合、ティーザー(買収スキームをまとめた匿名の企業概要書)やIM(Information Memorandum:売却対象となる企業・事業等に関する情報を詳細に記載した資料)の信憑性はかなり低いです。このような数値を100%信じて社内で検討した際には、実態との乖離が多く、事業よりこのリスクの議論ばかりになってしまいますので、正しいデューデリジェンス(DD:M&A実行した場合の対象会社に対する事前調査)を行って、正常収益力・実態純資産・ビジネスモデル・事業計画等について正しい数値を元に正確に判断する必要があります。

しかしながら、ローカル企業の管理レベルは、日本企業と比較して非常に低いということを前提として検討することが必要です。

通常、ローカル企業のデューデリジェンスを実行した際に、実態純資産、正常収益力が非常に低い、税務・法務の面などで、非常に多くのリスクが抽出されますが、危うさがあるのを前提で、どこまでそのリスクを社内で飲めるかをあらかじめ確定しておかなければ、危険性のみの検証を行ってコストと時間を費やすことになります。

また、最終交渉を行う際には、タイローカルは外国人ですので、日本の稟議や承認プロセスを理解しておりません。

そのため、なぜ交渉している人が、その場で決められないのか、持ち帰った決定事項に対して、なぜ1ヵ月も回答に時間がかかるのか(日本の役会決議事項等)、など売手が嫌悪感を抱くようになりますので、交渉する方はある程度意思決定の可能な方が担当する必要があります。

このようにクロスボーダーM&Aを行う際には、気を付けるポイントが多く存在しております。また、M&Aは買収することがゴールではなく、その後どのように事業の相乗効果をもたらし、持続的発展をさせるのかが非常に重要です。

M&Aの後はPMI(統合業務)にどれだけ時間とコストをかけるかで成功するか失敗するかが決定されますので、積極的に実行することをお勧め致します。

20年も世界で活躍する日系企業の成長をサポートできればと考えております。

奥村 宙己プロフィール写真

奥村 宙己
Hiroki Okumura
立命館アジア太平洋大学卒業。2014年、(株)エスネットワークスに新卒として入社。スポット支援として事業計画作成、事業デューデリジェンス、財務デューデリジェンス、M&Aアドバイザリーを担当。常駐支援として管理体制構築支援、月次決算体制構築支援、再生企業の事業計画実行支援、クロスボーダーPMIを担当。タイ国において進出サポート及び会計・税務コンサルティングに従事。

ES NETWORKS (THAILAND) CO., LTD.サービス内容

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