ArayZオリジナル特集

変化を遂げるASEAN~優位性と課題を探る~

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ASEAN加盟国、明暗を分ける

2017~2018年
国際競争力ランキング

世界経済フォーラム(WEF)が2017年9月に発表した「2017~18年国際競争力ランキング」で、ASEAN(ミャンマーを除く)のうち、インドネシア、ベトナムは前回から大幅にランクアップしたが、カンボジアとラオスは共に5ランク後退した。

対象となったのは137ヵ国・地域。ちなみに1位はスイスで、日本は9位とランクを1つ落とした。調査項目は、「基礎的条件(制度、インフラなど)」、「効率性を促すための環境(ビジネスをなど)」、「革新性や洗練度」の3つに分かれる。スコアは最高が7で、最低が1。

日本の6億人市場への
期待は、引き続き高い

日本の対ASEAN直接投資は約2兆円で対中国の約2倍。経済規模が大きいシンガポール、タイ、インドネシアが上位を占めた。

直接投資残高は23兆円(13・2%)で、米国(31・7%)、EU(25・6%) に次ぐ規模で、中国(7・6%)を上回る(2017年末)。

中印に次ぐ有望な投資先

国際協力銀行(JBIC)「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告(2017年度)」で発表された中期的(3年程度)な有望事業展開先国・地域ランキングによると、中国とインドが第1位と2位をそれぞれ占めたが、ベトナム、タイ、インドネシアが続き、フィリピン、ミャンマーがトップ10、カンボジアが20位に入るなど、ASEAN諸国の評価は依然高い。

ASEANの存在感が日本で高まる一方、ASEANにおける日本の存在感は中国の台頭で、相対的に低下している。ただ、ASEANから日本への直接投資は緩やかに増加し、残高はEU(44・6%)、米国(23・4%)に次ぎ、10・2%で約2・8兆円に上る(2017年末)。

日本の対ASEAN貿易は、輸出・輸入とも前年比で14%台の伸びを見せた。ビジネスパートナーとして、日本とASEANの経済的な相互依存関係は一層深まり、より広域な連携が期待される。

持続的成長への課題
増大する債務、不安定な政治

次期ASEAN議長国を務める
タイ、総選挙への影響は!

東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国は、1年ごとに各国が持ち回りで務め、来年はタイが担当する。「2009年の再現にならなければよいが…」――と懸念するタイ人。前回議長を務めた同年は、国内外で政治的な対立が先鋭化。

東部リゾート・パタヤで4月に開催された一連の首脳会議のホテル会場に、アピシット政権(当時)の退陣を求めるタクシン元首相支持派(通称赤シャツ)がなだれ込み、「ASEAN+3首脳会議」などが中止に追い込まれる異例の事態となった。

隣国・カンボジアとは世界遺産「プレアビヒア寺院」周辺の領有権を巡り、銃撃戦を繰り広げるなど、激動の年となった。

早ければ来年2月に、混乱が予想される総選挙が行われる。現軍事政権を率いる、プラユット暫定首相の再登板を支持する新党と、14年のクーデターで政権を追われたタクシン派のプアタイ(貢献党)、最古政党・民主党の三つ巴の戦いになる可能性がある。


プラユット首相

“11番目”のASEAN、
東ティモール

2002年にインドネシアから独立した小国の東ティモールは、11年にASEAN加盟を申請。正式加盟を目指しているが、一部の加盟国の反対で進展はみられない。主要産業は農業で、栽培が盛んなコーヒーを日本にも輸出している。


マハティール首相

ASEAN最大の経済国で来年、
大統領選挙

来年4月に実施される大統領選挙に向けてインドネシアが動きだした。現職のジョコ大統領が再選を目指す。前回の選挙に続き、最大野党の党首で元軍人のプラボウォ氏との一騎打ちになる見通しだ。


スーチー氏

他の経済圏との比較
英米の経済圏離脱は
ビジネスを拡大する好機

ASEANは、NAFTA(北米自由貿易協定)や欧州連合(EU)と異なり、新興国を中心とする地域経済統合体。人口では両経済圏を上回るが、経済規模では前者の10分の1、後者の6分の1に過ぎない。

域内貿易を比較すると、NAFTAとEUは加盟する先進国と新興国(例:米国、カナダとメキシコ)の産業構造が異なり、分業・交易によるメリットは大きい。

一方、ASEANは経済規模が小さく、産業構造が似ており、貿易量が限られている。2015年末にASEAN経済共同体(AEC)が発足された。非関税障壁は残っているが、域内の関税がほとんど撤廃された。

伸びしろのあるASEAN

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猶予を与えられている後発国のCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)も18年までに多くの分野で撤廃される見込みだ。保護主義に傾斜し、NAFTAからの離脱を示唆する米国や、1年後に迫った英国のEU離脱、経済に陰りが見え始めてきた中国を横目に、ASEANは伸びしろがある。

有利な点は28歳以下の若年層の割合が52・5%(15年)と高いことだ。EU(32・7%)、米国(39・7%)と、ともに40%を割っている)。

ビジネス環境も過去10年で改善されている。「起業にかかる日数(世界銀行)」をみると、ラオス、インドネシア、ベトナムを筆頭に軒並み半減以下となり、シンガポールは3日と米国(6日)、日本(11日)を上回る。

このような規制緩和の動きは新たな投資を呼び込み、競争力をビジネスチャンスの拡大につながると期待される。

(参考資料:アジア大洋州局地域政策参事官室、日本政策投資銀行など)

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