ArayZオリジナル特集

8人の専門家が解説するタイの過去そして未来

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対話の力でこの国の未来をひらくリーダーをつくる

青木 美知子
COACH A(Thailand)
COACH A(Thailand)
Managing Director
青木 美知子
Michiko Aoki

早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。東京海上火災保険株式会社(現 東京海上日動火災保険株式会社)入社。商品企画および新規マーケットへの参入戦略立案などに携わる。2006年よりコーチ・エィ。エグゼクティブ・コーチとして、製造業、金融機関、サービス業、さまざまな業種において組織変革をリードする経営トップを支援。17年1月よりCOACH A(Thailand)Co., Ltd.にManaging Directorとして着任。株式会社コーチ・エィ執行役員・アジア事業本部長。

コーチング Last 10 Years
待ったなしの現地人材の「人財」化 見直される日本人の関わり方

「人をどう育てるか」。これまで経験したことのない人手不足時代に入ったすべての日系企業にとって、火急の経営課題ではないでしょうか。そしてタイをはじめとする東南アジアでは、この「火急」度が、日本国内で言われているような働き方改革やパワハラ対策などといった外的要因ではなく、「多様性の中で人と組織の開発を急がなくては、現地でのビジネスが立ち行かなくなる」といった、より本質的な要因によって、日本国内よりむしろ分かりやすく、先行して、現象として顕在化したこの10年だったように感じています。

いわゆる「人材の現地化」という課題が、単なる「経営の効率化」という文脈からの要請に留まらず、現地法人の業績向上のために必須であり、もはや日本人が答えを知らない、直接為す術のない領域で、現地社員がリーダーシップを発揮し、力を発揮していける、しなやかな組織へ移行していかなくては立ち行かない時代に入った、ということではないでしょうか。

もちろんこれは言うは易く行うは難し。これまでの働き方や考え方とまるで違うことを要求するようなものですから、言われた方はたまったものではありません。「人は環境の産物である」という言葉がありますが、今目の前にいるその人の考え方や行動は、今ここに居る私たちが影響し合って作り上げてきた賜物であって、もし未来を変えたいのなら、私たち日本人の関わり方を大きく見直していく、そういう時代に入った、と感じています。

先日、ある大手日系重機メーカーのHRトップであるタイ人の方とお話しする機会がありました。その方曰く「我々タイ人の危機感は高いです。なぜならもう、かつてのような優秀な日本人がたくさん来て、いろいろ教えてくれる時代は終わった。もう楽はできませんよ」と。ぐうの音も出ず、なんとも印象的なひと言でした。

コーチング Next 10 Years
タイ人「人財」と共に未来をつくる パートナーとしての在り方

私は、いよいよ双方が「Readyな状態」になってきたように感じています。日本人もタイ人もなく、教えるも教わるもない。これからの未来を共に作っていくパートナーとしての在り方が試されている、と思うのです。

かつて日本の高度成長期には、上司が答えを知っていて、それを部下に教える構図が成立していました。価値観が多様化する中で、今、上司は部下に教える答えを失いつつあります。もちろん部下も答えを持っているわけではありません。権力に依存せず社員を動かし、社員の能力を開発するという、より高度な関わり方の能力が、グローバルで活躍しようとする我々日本人に求められているということです。

その1つがコミュニケーション(対話)によって、未来に向けて相手の可能性を広げていく能力です。コミュニケーションの基本は「双方向」です。一方が話したらもう一方がそれを受け取り、話す。それをまた受け取る。この繰り返しによってお互いに「新しいアイディアや行動」が生まれる。「一人で考える」から「共に考える(Think Together)」へ。この対話の力で、社員の主体化を促し、さらには主体化した個と個が繋がって変化を生み出す、これが弊社が提唱している「システミック・コーティング™️」です。

指示命令型で育った私のような日本人は(歳がばれますが笑)、「仕事や経営について、一番知っているのは自分で、その知識を社員に教えるのが自分の役割だ」と考えがちではないでしょうか。タイ人が知らないことを教えることで満足していないでしょうか。それは本当に彼らの主体性を引き出し、彼ら自身の足で立っていく未来に繋がっているのでしょうか。

たくさんの恩恵を日本にもたらしてくれたこの東南アジアで、私たち日本人が、現地の方々が主体となり未来への可能性を開いていけるような関わり方ができるようになることは、意味のあることのように感じています。

ArayZへ一言

AとZとの間に全てがある。きっとそんな思いを込めて、付けられた名前と思います。これからも、そんな雑誌を目指していってください。応援しています!

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