2020.11月号

ArayZオリジナル特集

変革期の自動車産業 ~タイにおけるCASE~

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TOYOTAモビリティカンパニー目指し、新車以外の価値提供を模索

トヨタ自動車のタイ進出は1957年、当時のトヨタ自動車販売のバンコク支店開設から始まった。昨年のタイでの新車販売は約33万台。長年、市場シェア首位を誇り、名実ともにタイを代表する企業の一つに成長した一方で、今後の社会の構造転換、価値観の変化を見据えて、コネクテッドをはじめとした新車販売以外のサービスを充実させようとしている。昨今の取り組みについて聞いた。

新車販売以外のサービスに取り組む背景は?

柳澤 トヨタモーター(タイランド)は1962年に設立されました。自動車社会のタイにあって皆様の生活の足として、ビジネスまたはプライベートに、様々な形でトヨタの車をお使いいただいています。また、サムロン(サムットプラカーン)、バンポー、ゲートウェイ(チャチュンサオ)の3ヵ所に工場を設けており、タイ国内のみならず世界各国に輸出もしています。

ただ、タイは少子高齢化によって中長期的に市場の大きな伸びは見込めません。また、社会の成熟により、お客様の価値観も多様化しています。特に近年は、そういった市場のタイにおいて車という「モノ」だけでなく、「サービス」を新しい付加価値で提供できないかを模索しています。

新たなサービス「KINTO」とは?

KINTOのサービス概要

柳澤 「KINTO」とはタイで今年3月からスタートした新車のサブスクリプションサービスです。毎月定額の利用料を払うことで、新車を3年もしくは4年利用いただくことができます。頭金は要らず、メンテナンスや保険も含まれており、月々の料金以外に発生する費用はありません。日本でも昨年から既に始まっており、東南アジアではタイでいち早く始めました。

先進国ではリースでの新車購入は既に30%程に上っており、毎月利用料を払って3、4年で乗りかえることが一般化しています。新興国ではまだ車を所有することがステータスの一部になっていますが、その価値観にも変化の兆しがあります。タイのような成熟してきた市場なら需要があるのでは、と導入しました。

大きなローンを負うより、携帯電話のような定額料金の方が新車購入のハードルが下がるのではと見込みましたが、現状は「車をあれこれ悩んで買うより、ひとまず必要だから契約する」というお客様が多いです。

また、子供が生まれるなどして家族構成が変われば、乗りたい車も変化します。そういったライフステージの変化に合わせて乗り換えることができる、という声もいただいています。

KINTOによる新車販売への影響は?

柳澤 今までは車を購入していたけれど、将来は買わなくなるかもしれない方たちが主に若い世代にいると考えています。様々な娯楽がある現代において、価値観の中心に車があるわけではありません。故障などで予期せぬ出費が生じて、自分の生活が圧迫されるのは煩わしいと感じる方もいます。そのような方々にとって利用しやすくなるのではないかと見ています。

最近では、アフターコロナに公共交通機関での感染リスクを回避したいというニーズに応えるべく、中古車による3ヵ月からの短期利用が可能な「KINTO ONE LIMITED」もスタートしています。料金も低く設定して気軽に始められるため、従来は車を購入していなかった層からも利用されており、新たな顧客層の開拓になるのではと期待しています。

コネクテッド分野への取り組みとは?

T-connectはスマートフォンで様々なサービスが利用可能(左) PHYDでは安全運転の度合いをスコア化して表示する(右)

竹村 まず2017年から「T-Connect」として位置情報などが分かるWi-Fi BOXを車に取り付け、車を盗難された際の追跡や意図せず車が指定地域から出た際に所有者に知らせるサービスを開始しました。

それに加えて今年6月からは、走行速度、距離、運転動態などの車両情報を基に、定期メンテナンスの連絡や24時間のコンシェルジェサービスなども提供しています。「T-Connect」によって実際に盗難された車を発見してお客様に元にお戻ししたり、山で遭難しかけたお客様が車まで無事戻って来れた事例もあります。

また、あいおいニッセイ同和損保と共同開発した、対象車から収集した加減速、ハンドル操作などの運転行動に関するデータを活用して事故リスクや保険料算出などを行う「PHYD」も6月から始まりました。タイは交通事故が社会問題となっています。安全技術を進めている自動車メーカーが、安全運転をインセンティブとして消費者の安全運転を促すサービスを保険会社と開発することで、両者が協力して交通事故の撲滅と社会環境への貢献を目指しています。

「FTS(Fleet Telematics Servise)」はタイ矢崎ネットワークサービスと共同開発したサービスです。新型のハイラックスとフォーチュナーを商用車として利用する運送会社などに収集された運行情報を提供して、車両管理の品質向上や燃費削減、事故の防止に役立てていただくことができます。

既にタイの物流会社などでは保有車両にGPSデバイスを取り付け、運行情報を管理しています。GPSデバイスのメーカーも無数にあります。弊社の場合は、車にデバイスが内蔵されているため煩雑な取り付け作業が必要なく、申し込みをするだけでFTSを利用できます。

衝突回避をサポートするプリクラッシュセーフティをはじめ、これまでも様々な安全機能を導入してハードの面から安全・安心を追求していましたが、これからはサービスの面からも安全・安心をお客様にお届けしていきたいと考えています。

今後に向けた取り組みは?

柳澤 トヨタは人々の「移動」に関わるあらゆるサービスを提供する「モビリティカンパニー」を目指しています。今はまだ安全・安心の観点から提供しているサービスに、今後はモビリティに軸足を置きながらお客様のライフスタイルを様々な形でサポートする、より魅力的なサービスを加えられないか模索しています。

例えば、商業施設と提携して来店時にテレマティクスで駐車場が予約できたり、入退場を自動的に管理したり、また他産業・業界との連携の可能性も探っていきたいと思います。

自動化、電動化については

竹村 電動化では今、ハイブリッド(HV)がタイのお客様に受け入れられて一般的になりつつあります。近い将来にはプラグインハイブリッド(PHV)やEVなど次のステージに移るので、そういった商品の投入がその時検討されると思います。自動運転の普及は、タイではさらにその先と見ています。

>次ページ:企業インタビュー

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