ArayZオリジナル特集

変わる日タイ関係-タイ人における日本の存在とは

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日タイ関係メディエーター

Mediator Co., Ltd. CEO
ガンタトーン・ ワンナワス(Kantatorn Wannawasu)

在日経験通算10年。埼玉大学工学部卒業後、在京タイ王国大使館工業部へ入館。タイ国の王室関係者、省庁関係者のアテンドや通訳を行い、タイ帰国後の2009年にMediator Co., Ltd.を設立。日タイの政府機関や地方自治体、日系企業などのプロジェクト・コーディネートの他、これまでに延べ1万人以上に講演実績を持つ。21年6月にビジネスにおける日タイ連携のサポートを行う「TJRI」プロジェクトを開始。
◎ 楽観シナリオ予測
タイ政府肝煎りのEEC(東部経済回廊)プロジェクトは日本企業が大きく貢献して成功、域内で新たなビジネスチャンスが見出される。日本とタイの大手企業がパートナーシップを組み、トライ&エラーを繰り返しながら、新規事業に次々と挑戦。「東南アジア」や「対中国」において、タイと日本の新たな戦略が展開される。その結果、タイは日本にとっての東南アジア統括拠点になり、アジア全体へ供給する自動車(EV)・電子部品・機能性食品の原料など高付加価値製品の製造輸出拠点に成長する。

△ 中間シナリオ予測
タイの経済成長を支える外国企業は日本企業から中国企業へ。街中を走る自動車の4~5割は中国メーカー、EVを支えるインフラをタイ大手、バッテリー製造はタイと中国の合弁企業が展開。大手日系企業の製造拠点はベトナムなどに移管し、中小の製造業は仕事がなくなり撤退が続く。残った企業は中国やタイ大手に買収され、日本企業全体の数も大きく減少。日本人駐在員の数が減り、日本企業に勤めていたタイ人は中国メーカーに転職。中国企業の本格的な進出でタイ経済が活発になり、年に一度の海外旅行で日本に遊びに行く。

今の二国関係は40年前に基礎

自分の国の強みを一つだけ答えてくださいと聞かれたら、皆さんは何と答えるだろうか。中国が世界経済の中心となったら、日本とタイの位置付けはどうなるだろうか。

日本語で日タイ関係に関する情報収集をすると「135年間の友好関係」「外国企業の投資国№1」「日本企業の集積地」「増え続ける日本食の店舗」「日本産食材・食品に対する需要の増加」など耳触りのよい言葉ばかり目にする。 日本人が感じている「タイにおける日本」と、タイ人が認識している「日本」にはギャップがあると疑問に思ったことはないだろうか。

今回は、過去の歴史から現在までのベクトルを鑑みながら、タイやタイ人にとっての「日本」という存在が今後どう変化していくのかについて考察していきたい。  今の日タイ関係はあくまでも約40年前に作られた「遺産」である。

1985年のプラザ合意の影響を受けて、円高を嫌った日本企業による本格的な海外進出とタイ政府の東部臨海開発との方向性が合致し、結果、タイは東南アジア最大の日系企業の集積地となった。

また、日本政府の積極的な支援により、タイでは「日本は経済発展に大きく貢献してくれた」印象が強く、日本企業に勤めることは「安定した収入を得る」という、一種のステータスでもあった。

かつては日本企業がタイに進出するためには「タイ側のパートナー」が必須だった。だが、タイ投資委員会の施策で100%独資が可能になると、日本企業はタイ人株主の存在を経営上の障害に感じ、この制度をフル活用した。

しかし、これにより「経営層」のタイ人とのコネクションがなくなり、経営に必要な情報を入手するルートが失われ、海外にいながらも日本企業同士の付き合いばかりで孤立するようになってしまった。

さらに追い討ちをかけたのが、新型コロナウイルスのパンデミックである。

最近ようやく収束の兆しが見えてきたが、新型コロナウイルスにより社会全体の在り方やニーズは驚くほど変化を見せたのは周知の通りだろう。

過去30~40年、日本企業はタイで一生懸命ものづくりに没頭し、タイ企業が絶対できないことで強みを発揮していた。

しかし、日本企業同士の付き合いのみで、タイの社会とコネクションを持たず孤立した日本企業は、残念ながらこのままだと近い将来淘汰されていくのではないかと私は危機感を抱いている。

押し寄せる中国経済の波

世界的な潮流として、中国経済の勢いはもはや食い止めることは不可能だ。タイの経済成長を支える外国企業は、かつての日本企業からこの先中国企業に変わっていくだろう。

中国製品の安かろう悪かろうはひと昔前の話。中国の技術力の進歩は目覚ましく、家電業界で起きたことと同じく、自動車や他の産業も中華圏の企業に買収される将来はそう遠くないと感じている。

今後10年ほどで、タイの街中を走る自動車の4~5割は中国メーカーに変わり、電気自動車(EV)を支えるインフラはタイ大手が展開、バッテリー製造はタイと中国の合弁企業が担っていくだろう。

このまま日本の大手企業の海外拠点の目的が「安定して安くモノを作る」から変化することなく、より安く作るために製造拠点をベトナムなどに移管すると、在タイの中小製造業企業の仕事はなくなり撤退が続く。

そして、残った企業も中国やタイ大手に買収され、日本企業全体の数が大きく減少。必然的に日本人駐在員の数も減り、在タイ日本人をターゲットにしていた飲食店や小売店も縮小する。

中国の本格的なタイ進出でそれまで日系企業に勤めていたタイ人は中国企業へと転職。タイ人にとっての「日本」は、消費行動においては数あるブランドの一つ、もしくは年に一度の海外旅行に行く場所の一つという位置付けが顕著となるだろう。

では、タイにおける日本企業の未来はないのか。私自身、今後日本とタイの経済協力や投資の在り方は変わっていくと考えている。

昔は、日本企業がタイに進出するきっかけは「安定して安く製品を作る」ことだったが、物価や人件費の高騰により、もうタイはその選択肢ではなくなってきている。

日本企業に求められるもの

日本企業がタイおよび東南アジアを製造拠点からレベルアップして、本気で市場を獲得していこうと考えるなら、これからの進出は「タイ企業との協業」が鍵を握っている。

タイの製造業以外の業界を見てみると、経済成長に伴いタイ企業もどんどん成長し、昨今では東南アジアを代表するグローバル企業が次々と誕生している。タイでは市場がもうでき上がってしまっているので、今さら日本企業が自分で新たな市場を開拓することはほぼ不可能だ。

今後、日本企業がタイや東南アジアで事業を拡大していきたいのなら、異業種の「タイ企業」との「パートナーシップ」を組み、お互いの強みを活かし、共に事業を大きくしていくことが必須になる。

ここ数年、タイの大手企業との合弁会社設立や業務提携のニュースをよく目にするようになったと思うが、特にコロナ禍でこの流れは加速し、すでに最近のトレンドだ。

これまで数十年間「官主導」で行われてきた経済成長戦略から、今後は企業同士の対話で活力を生み出す「民主導」に変わっていく・・・今まさにタイの市場はその過渡期にある。その中で、タイ企業が日本企業に何を期待しているか、お気付きだろうか。  それは、タイ政府の政策にあるような「日本(外国企業)からの投資」でも質の高い製品でもなく、実はタイを拠点にグローバルに事業を拡大させていく「協業パートナー」を求めている。

タイ企業は研究開発が得意でないことは自覚しており、常に世界中から技術力のある企業を探している。中でも、タイの資源を最大限に活用した農業・食品・医薬品技術、SDGsをテーマとした脱炭素や低炭素などの環境技術は、各社がこぞって投資している分野だ。

日本企業には、これらの研究開発・技術力はもちろん、これからタイも迎える成熟市場や高齢化社会で生き抜くための日本の豊富な「経験値」にも期待をしている。

そのため、言語の違いや商習慣の違いからくる壁を乗り越えて、日本企業とタイ企業の民間同士が対話の機会を作らないと、この先変革を起こすのは難しいだろう。

タイ人が好きな国「日本」。その日本と一緒にパートナーシップを組み、東南アジア・中国などの市場に一緒に攻めて行く、10~20年先のそんな未来に少しでも近付けるよう、私は今年6月からTJRIというプロジェクトを立ち上げた。「日本と手を組んでイノベーションを起こしたい」、そう望んでいるタイ人が多くいることを私はタイ人を代表して日本人の皆さんにお伝えしたい。


TJRI(Thai – Japanese Investment Research Institute:日本企業研究所)」は、今後益々必要となる日タイ連携強化に向けて、日本企業とタイ企業がお互いを知り、興味を持ち、ビジネスで繋がるきっかけを作ることを目的に、Mediator Co., Ltd.(株式会社メディエーター)が立ち上げた「日タイ情報発信プラットフォーム」。TJRIでは、企業ニーズの調査からセミナーの実施、商談やピッチングの場を通して、日タイ連携のサポートを行なっている。

「ソフトパワー」と ショールーム「日本国」

日本人が気付いていない日本の資産

japanthaiu

かつては家電や自動車と言えば「日本製」だった。Made in JAPANのクオリティは間違いないが、今は中国製や韓国製なども増え、日本製は選択肢の一つに過ぎない。日本人は自国をものづくりの国だと強く認識していて、日本の「ソフトパワー」の活用をあまり意識していなかったのではないか。

消費者ニーズが多様化してきた今の時代こそ、その「ソフトパワー」を発揮する時だ。それは、行事や作法、和食などの「伝統文化」と漫画やアニメ、ゲームなどを代表とする「近代文化」。実は、タイの消費者はこれら両方の日本文化を尊重し、好んでいる。今後の日本はこのソフトパワーの資産をもっと活かしてくべきだ。

そして、日本のソフトパワーをすべて集約しているのが、ショールームとしての役割を担う「日本国」そのもの。約1,000万人のタイの中上流層は、1年の節目に頑張った自分のご褒美として、気分転換に海外旅行を好む。日本は渡航先No.1、何回行っても飽きない。日本に行くとタイにない目新しいモノを発見し、タイに持ち帰りたくなる。つまり、タイ人が日本に行けば行くほど、日本の商品が売れる。

ファンにはリピートしてもらい、新たなファンを開拓するためにはソフトパワーを駆使する。このコンビネーションを戦略的に展開していくことで、タイ人の一般消費者にとっての「日本」がもっと身近になり、本当の意味でタイに「日本」が根付いていくのではないだろうか。

8分野の記事一覧

【タイ経済】MU Research & Consulting
>日タイの協力で産業構造転換の実現を

【日タイ関係】Mediator
>タイ人における日本の存在とは

【インフラ建設】SBCS
>接続性向上で人々のライフスタイルに変化も

【DX】ABeam Consulting
>東南アジアのデジタルハブ実現なるか

【金融】Deloitte Thailand
>IT技術の発展でビジネスモデルが変化

【タイ政治】タマサート大学
>新型コロナで浮き彫りになったタイ社会の矛盾

【不動産】GDM Thailand
>優れた工業団地、物流網でさらなる産業集積

【CLMV】みずほ銀行メコン5課
>ベトナム/ラオス/カンボジア将来予測


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