不動産のプロ・GDM記事

第2回 どんな業種がタイを目指しているのか

事業用不動産から見るタイ事業環境の変化

弊社は2010年の創業以来、工場や倉庫、ホテル、オフィス、商業施設などの事業用不動産の売買を手掛けてきました。これまでに96万㎡を超える売買仲介を行ってきましたが、今、大きな流れの変化を感じています。端的に言えば中国系、台湾系企業のタイ進出意欲の高まりです。このコラムでは、不動産取引の現場から見えてきた今後起こり得るタイの事業環境の変化について、複数回に亘って考察してみたいと思います。


今回は、具体的にどのような中国企業がタイに進出してきているのか、いくつか事例を挙げていきたいと思います。

中国EC最大手アリババは2018年にタイ東部への投資を表明

中国EC最大手アリババは2018年にタイ東部への投資を表明

自動車では中国の大手自動車メーカー、長城汽車(GWM)がSUV(スポーツ多目的車)や電気自動車でタイ市場に今年参入します。撤退したGMのラヨーン県の工場を買収しており、タイで生産を開始する見込みです。将来的には電気自動車の生産も計画しています。上海汽車とCPグループの合弁会社がタイで生産するMGも年々、販売台数を伸ばしています。

タイヤメーカーでは浦林成山がチョンブリ県に約44万㎡の土地を取得し、工場を建設しています。2014年からタイで生産している山東玲瓏も、工場増強の計画が昨年報じられました。

長城汽車が今年タイに投入するSUV「HAVAL H6」

長城汽車が今年タイに投入するSUV「HAVAL H6」

自動車関連だけではありません。日本ではまだあまり馴染みがないかもしれませんが、海信(ハイセンス)という総合家電メーカーはテレビや冷蔵庫、エアコンなどをタイでも販売しています。

同社は17年にレグザなど東芝のテレビ事業を手掛けていた東芝映像ソリューション、今年3月には日本の車載用エアコン大手サンデンの買収を発表するなど事業を拡大しており、タイにはエアコン工場を建設する方針です。タイのエアコン普及率は30%程と見られ、まだ市場拡大の余地があります。

かつて日系企業の独壇場だったタイの家電市場はやがて韓国勢に席巻されましたが、その韓国勢のシェアも中国企業が奪いつつあります。これまで日系企業が高いシェアを誇ってきたエアコン市場においても、競争の激化が見込まれます。

ゼネコンの広西建工はCPグループ傘下の企業と合弁を組み、ラヨーン県で工業団地を建設。超硬合金メーカーの廈門金鷺特種合金(GESAC)は19年にラヨーン県で9万㎡の土地を購入して現地生産を計画中です。

幅広い業種が工場のリセールに関心

これらは公式発表やニュースなどの公開情報ですが、弊社ならではの情報も紹介したいと思います。弊社は昨年、チョンブリ県に所有していた土地建物のリセールを行いました。敷地面積は約2万5000㎡、工場面積は約1万3000㎡です。その際、多くの中国、台湾の企業からも照会を受けました。

業種はモバイル関連の部品メーカーやPC機材、半導体基板、モバイルバッテリーなど電子部品関係以外にも、水着、サーフィンウェア、LED照明、ビル清掃用具、医療用資材や住宅建材など幅広い業種の企業から問い合わせが来ました。

これらから分かることは、ニュースで取り上げられるような大企業から、一般には知られていない中小企業まで、幅広い業種の中国、台湾の企業がタイに関心を持ち、進出しようとしていることです。

弊社の所有物件には最終的に80社近くの企業からお声がけをいただきましたが、その内の50社程が中国、台湾企業でした。その中でも半分ほどの企業はまだタイに法人を設立していませんでした。

コロナ禍での入国制限の緩和が進み次第、彼らはタイに現地法人を設けて一気に工場を建設、製造を開始すると思われます。近い将来、新たなプレイヤーがタイ市場に出現することになり、事業環境の一層の変化が予想されます。(続く)

寄稿者プロフィール
  • 高尾 博紀 プロフィール写真
  • GDM (Thailand) Co., Ltd.
    高尾 博紀

    早稲田大学商学部卒業。2008年来タイ。ホテル・オフィス用地や工場倉庫用地及びホテルやオフィス、商業施設などの事業用不動産売買に強みを持つ。タイ国内において960,000㎡を超える不動産取引実績を有し、企業の不動産取得支援を行っている。

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