日刊工業新聞

大熊製作所―海外で“根を張り”成長潤沢資金で海外攻勢

トラック部品など地産地消/
タイ・インドネシア 現地人材を育成

大熊製作所(埼玉県川口市、大熊高志社長)は、トラックや建設機械、バスなど向けブラケットといった金属部品を製造するプレス・板金加工メーカー。汎用機を駆使して少量多品種に対応している。現在、中国、タイ、インドネシアに海外拠点を持つ。海外では基本的に、現地生産の製品を現地で販売する地産地消の戦略をとっている。

国内市場縮小への懸念や「海外事業に挑戦してみたい」(大熊社長)との思いから、2004年に中国・江蘇省の太倉市の開発区に工場を設けた。12年には同区内に第2工場も稼働した。当時は安い労務費の中国で生産した製品を日本に持ってくるなどし、収益を上げていた。だが昨今は「中国の労務費は上昇し、過当競争に陥る。日系・ローカル企業との競争は非常に激しい」(同)。このため、17年末に中国での製造から撤退した。

大熊社長は「早めに決断して良かった」と振り返る。中国法人には、商社機能を残している。大熊社長は今の中国について「経営者は優秀で、失敗を恐れずに投資する。ロボットありきの生産工程を組むなど何歩先も見通している。若者のハングリー精神も目を見張るものがある」と高く評価している。

タイには、09年にバンコクに貿易会社を設立して進出。11年には別の現地法人を設立し、工場を稼働した。タイ工場は、日本で間に合わない分の生産が3割で、7割は現地向け。「中国と陸続きのタイには中国製品が山ほど入っている。タイも中国化し、過当競争気味だ」(大熊社長)という。17年12月期の売上高は約3億1,000万円で、18年12月期は3億円を見込む。

許認可手続きが煩雑で厳しく、参入障壁が高いインドネシアには、中国やタイでの経験を生かして14年に進出した。インドネシアの現法は好調で、17年12月期は3億円、18年12月期は4億5,000万円の売上高を見込む。「マーケットに勢いがある」(同)という。インドネシア工場は現地生産・現地販売のみ。日系企業はもちろんのこと、ローカル企業との取引も多い。今期はすでにレーザー加工機やその周辺機器、クレーンなどの設備投資をした。19年半ばごろまでかかるとみられる倉庫建設などを含む総投資額は1億2,000万円となる見込み。

大熊社長は、グローバル経営を行う上で大変なことは「優秀な人材を集めること」だといい「その能力のあるローカルのトップを探すことが難しい。特にタイの人材は日系企業間で取り合い」と話す。

タイ・インドネシアの両工場で働く従業員は各70人で、そのうち3割を女性が占める。製造や事務など部門を問わず、海外拠点の従業員は必ず本社で研修を行う。海外工場を訪れた顧客が「職人の工場のよう」と評するのは泥臭い教育のたまものだ。大熊社長は「将来的に、海外工場での日本人の関与を減らしたい。現地に根を張り、現地に根付いて成長していきたい」と海外人材の活躍に期待する。

※記事提供・日刊工業新聞(石井 栞 2018/4/11)


タイ工場では70人が働く

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