日刊工業新聞

TANOI―精密部品ベトナム増強

国内需要減見越し、先手打つ/
海外シフト鮮明、製造・売上高7割

TANOI(栃木県鹿沼市、田野井純一社長)は、歯科・外科機器部品や自動車向けターボ用インペラー(羽)などの精密部品加工を手がける。2006年にベトナムのビンズン省に現地子会社「TANOI SEEBEST」(現SEEBEST)を設立。その後、ベトナムでの生産能力強化で17年に新会社「JONE TECH」を立ち上げ、ホアカイン工業団地(ダナン市)に新工場を整備するなど海外生産に力を入れている。

TANOIグループは、全製品の7割程度を海外工場で製造し、売上高に占める海外比率も全体の約7割と海外シフトが鮮明だ。同社が海外にこだわる理由は、日本国内の人口減による国内需要の減少にある。田野井社長は 「05年に人口減少社会に関する講演を聞いて、事業の継続と発展にはグローバル化しかないと考えた」と振り返る。進出先は、現地人の技能向上に対する姿勢や国民の平均年齢が若く、人口増加が期待できるベトナムに決めた。

進出先は、ベトナムとシンガポールの政府系企業が初めて造成した、ホーチミン市近郊の工業団地。当初海外の仕事はなかった。人件費をはじめとしたコストダウンなどを“武器”に国内で取引のあった顧客を説得し、メディカル分野に絞って進出。その後、リーマン・ショックの影響による国内の自動車部門の売り上げ減を受け、09年に新工場を建設し、同部門の現地製造に幅を広げた。

主力製品の一つのインペラーは18年度当初、月産6万個程度を見込んでいた。しかし、10月には注文が8万個に達し、12月には同9万個に拡大する見込みだ。引き合いの増加について田野井社長は、「インペラーは5年以内に削り出しタイプが主流になる。わが社が扱う鋳造製は内製から外注に切り替えられている」と推察する。「例え長期の仕事でなくても、現状の設備を最大限生かして引き受けるのがわが社の信条 だ」と説く。19年以降は月間要求数が現在の2倍程度になっても対応できるよう3,000万円程度を投じて、検査機など設備を増強する予定だ。

「コストダウンの面からも、ベトナムに製造拠点がある、という理由で仕事を発注する顧客もいる」(田野井社長)と話し、事業は順調に進む一方、ストライキや突然の停電など拠点の一極集中には懸念材料もある。そのため生産能力強化だけでなく、BCP(事業継続計画)対策にもつなげようと、17年に新会社「JONE TECH」を中部のダナン市に設立した。

リスク対策や技能・技術レベルの向上を着実に進める現地事業の今後について、田野井社長は「管理体制の向上が現地事業のカギを握る」と強調する。これまで生産管理などは日本から遠隔で管理し、現地人の担当者に指示を出していたが、8月に現地駐在の管理担当者として日本人1人を新規雇用した。今後も現地日本人駐在員を複数人雇用するなどして、管理体制の強化を進める。


シートベストのターボ工場(ベトナム)

※記事提供:日刊工業新聞(前田健斗2018/12/5)

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