日刊工業新聞

グローバル経営 適地生産適地販売 東洋アルミニウム−印にアルミペースト工場

現地インフラ整備需要狙う

東洋アルミニウム(大阪市中央区)は、アルミの特性を生かし、食品容器に使用するアルミ箔(はく)や自動車向けアルミペーストなどを開発・製造する。1982年のフランス進出に続き、米国、中国と製造・販売拠点を広げてきた。2017年には念願のインド工場をオープンし、同地から東南アジアへの輸出拡大を図る。

 自動車のメタリック塗装や印刷インキなどに使われるアルミペースト市場において、東洋アルミニウムは世界シェアの約5割、国内シェアの約7割を占めるトップメーカーだ。欧米・アフリカ・アジアと販路を広げ、売り上げを伸ばしてきた。現在では販売額の約5割を海外売り上げが占める。

 「中国の次はインドだと思っていた」と楠井潤専務執行役員は語る。インド進出の検討は2009年頃に始まった。人口約12億人を擁しインフラ整備が進み高い経済成長率も期待できた。「インドの消費は中国のように急速にとはいかなくても、確実に増える」(同)と見込み、工場の建設を計画した。

 インドへは単独進出ではなく、パートナー企業を探した。海外への単独進出に多大な労力を要することは、中国進出で経験済みだったためだ。ところが最初に交渉した最大手のアルミメーカーには7人のオーナーがおり、それぞれが異なる意見を主張したため話がまとまらず断念。16年に2番手のMMPインダストリーズ(ナグプール市)と合弁会社を設立し、工場立ち上げに向け動きだした。

 パートナー企業が見つかった後も苦労は続いた。現地調達の設備や機材の納入が遅れたほか、完成後にも設備の欠陥が見つかり、フル稼働するまでに1年半と、当初計画より半年遅れでマハラシュトラ州ナグプール市での工場稼働にこぎ着けた。

 ただ、英語が通じるほか政府との交渉もスムーズで、中国に比べ運営面においては有利な点が多かった。現在は工期の遅れを取り戻し、20年には日本での生産に匹敵する年6,000トンのアルミペーストを生産する計画だ。

 インド工場で生産するのは、「リーフィング」と呼ばれるボリュームゾーンの塗料が中心だ。耐候性や耐水性が良好で、橋桁など大型の建築物などに使用する。

 それまでは国内生産だったが海外からの受注も多く、インフラ投資の旺盛なインドが適地と判断した。まだ立ち上げたばかりだが、22年までに売り上げを「20億円に伸ばしたい」(同)と意気込む。

 さらに今後、同国や東南アジアの消費の伸びに応じ「高級塗料の販売も見込める」と楠井専務執行役員。ゆくゆくはリーフィング以外の高級車向け塗料も生産を増やし、アジア以外にも販路を広げる方針だ。市場に合わせて販売する商品を見極め、生産や出荷を柔軟に調整するかじ取りが試される。


※記事提供:日刊工業新聞(大川藍2019/4/3)

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