レストラン・生活 2019.06月号

21 【需要対応経済】「ハラルフードトラック②」(アメリカ/ニューヨーク)

(5月号の続き)

 「それはダメだ。僕はあなたの仕事を応援しているし、親切に僕の質問にも答えてくれた。だから払わせてくれ」と僕が言っても「いらない」と店主は断り続ける。

 「なんで!?」と尋ねると「僕もあなたの活動を応援している。俺たちはもうブラザーだから協力しあっていこうぜ。だからいらないよ」という答えが返ってきた。

 「……よしわかった。ありがとう。僕は今とっても嬉しいよ」「あなたが幸せなら僕も幸せだよ」。また会おうと別れを告げ、僕は店を去ったが、彼らは何事もなかったかのように黙々と仕事を再開した。

 巨額なお金が動き続けている世界一の金融街を有するマンハッタンのド真ん中。それとは真逆の、資本主義をまるで無視したコミュニケーションが生まれたことに僕は震えるほど感動していた。

 現代を生きる僕は、なんでも「これいくらくらいするんだろ?」とお金に置き換えてしまうのだが、この時だけは金勘定の計算をする思考がストップした。4ドルのカティ・ロールなんだけど、でき立てのそれはとんでもなく価値があるモノのように思えた。しばらく放心し、我に返るまでに時間を要した。

 頭を冷やすためにタイムズスクエア近辺を放浪していても、手の中にはカティ・ロールの温もりが残っている。この温かさを血肉にしなければいけないと思い、タイムズスクエアの足元で世界一美味いカティ・ロールを食べながら、僕は泣いた。


中野陽介

1987年福岡生まれ。19歳で渡米、Los Angeles City College卒業。23歳で岡本太郎著「今日の芸術」で芸術使命に目覚める。24歳で渡タイ、バンコクでサラリーマンと芸術家の2足のわらじ生活を3年間送る。28歳で1年間に22ヵ国を巡る世界一周旅を敢行。その後、路上ワークの研究を始め、現在、平日はサラリーマン、休日は路上ワーカーという生活を送っている。「路上ワークの幸福論」発売中。
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