2020.03月号

世界の路上ワーカー

30 【見世物経済】「大道芸人ユウさん」(日本/東京)

世界の路上ワーカー 路上に溢れる可能性

原宿に人だかり。赤い鼻を付けた一人の男性が、大道芸をしていた。外国人観光客や子ども達は地面に座り、笑いながら見ている。面白そうだったので、じっくり拝見させてもらった。

手袋、風船、ペットボトル、ボール、テニスラケットなどを駆使してパフォーマンス。最後は人形との一人二役でフィナーレを迎えた。人が人を呼び、大盛況だ。パフォーマンス後、観客が次々と投げ銭していた。

彼に話しかけてみた。「面白かったです。この仕事についていくつか質問させてもらえませんか」「話すと長いから今度文章で送るよ(笑)」「ぜひお願いします」そして受け取った文章は次の通り。

Q:なぜこの仕事を始めたの?
A:そもそも役者になりたくて演技を学ぶ大学に入った。でも、大学で擬似的に人気者になった時、なんとなく華やかな世界に憧れてここに来た気がしたのに「あれ?人気者になりたいなんて思っていない」と気付いた。誰かに自分を認めて欲しいのかとも思ったけど、そういう人たちの舞台をたくさん見ているうちに嫌気が差してきた。自分が観客として観てる時に「自分もやってみたい」と思う舞台は、概ね一人のものが多く、一人でやるのも良いと思い始めた。才能なんかなくても人前で演じることが好きで、行き着いた先が路上だった。 

最初は誰も立ち止まらなかった。荷物を持って来たのに、現地で勇気が出ず「今日は止めよう」という日が大半だった。立ち止まる人がいたら、逆に「面白いものは見せられない」と焦るだけの日もあった。見られているプレッシャーで何もできない時もあった。収入は0の日が4年くらい続いた。でも、なぜか自分にはこれしかない気がして、「ここで先に進めなければ自分はここまでだ」と、何度も挫折しながらここまで来れた。

大道芸の世界に知名度は関係ない。常に、はじめましての人たちを相手にできる。ダメならその場で帰られるだけでとても気楽。観客はなんの先入観もなく今ここにいるのだから。自分がやりたくない日は無理にやらなくてもいい。誰も困らない。なんて気楽なんだろう。

観客も負担がこんなに小さいものはなかなかない。払いたくなければそのまま行ってしまう。最高に笑っていながら1円玉ばかりということも多い。でもそれでいい。そんなことが好きでやっています。(4月号へ続く)

中野陽介
中野陽介

1987年福岡生まれ。19歳で渡米し、Los Angeles City Collegeを卒業。23歳の時、岡本太郎著「今日の芸術」を読んで衝撃を受ける。24歳で渡タイし、バンコクでサラリーマンと芸術家の2足のワラジ生活を3年間送る。28歳、1年間で22カ国を巡る世界一周旅を敢行。旅先での路上ワーカーたちとの出会いに感銘を受け、帰国後「路上ワークの幸福論」を出版。同書はKinokuniya Bangkok店&EmQuartier店でも発売中。2020年6月3日〜7日まで目黒区美術館で最大規模の絵の展覧会を開催予定。
HP:yosukenakano.com
Instagram:@yousukenakano


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