中野陽介コラム

31 【見世物経済】「大道芸人ユウさん」(日本/東京)

世界の路上ワーカー 路上に溢れる可能性

(3月号の続き)

Q:サラリーマンについてどう思う?
A:すごいと思う。毎朝同じ時間に起きて、電車に乗って、毎日同じことをやって社会を回している。単に自分にはそれができないだ け。朝7時に起きて8時には出発のようなことが毎日できない。給料をもらえて良いなと思うけど、もしサラリーマンをやっても、楽しめなさそうな自分が想像できるから、こっちの道に来た。

Q:将来に対する不安や心配は?
A:あるのかもしれないけど、あまりないかな。昔、「あなたは本当に 『今、この瞬間』を生きてる人ですよね」と言われた。大きな家に住みたいとか、カッコいい車が欲しいという欲はまったくないから、貯金しないし、保険とかも入らない。いつ死ぬか分からないから長生きしたい欲もない。死ぬ瞬間に「あぁ、自分の人生は楽しかったな」って思えるのなら、老後に備えるとかもない。未来のことは何も分からないから、人生は楽しいのかなって思う。

大道芸人ユウさん

Q:お金より大切なのものは?
A:今日初めて会った人の笑顔。自分が楽しめているか、楽しいと感じる時間をたくさん共有できるかどうか。自分が楽しくて、観ている人も楽しいならその楽しいには価値があるはず。あとは「今日」やっているかどうか。これまで何をしてきたかなんてどうでもよくて、「今日」やっているかどうかが大事。長くやってるから偉いわけでもない。経験が少ないから未熟なわけでもない。止める理由なんていくらでもある中で、「今日」も路上に立ってやっているかどうかが大事。甲本ヒロトの受け売りだけど。

路上に立つまでにはドラマがある、勇気がある、挫折がある、挑戦がある。だから美しい。路上に立つまでのドラマを誠実に答えてくれた真っ直ぐな心が素敵だった。

 
中野陽介
中野陽介

中野陽介 1987年福岡生まれ。19歳で渡米し、Los Angeles CityCollege
卒業。23歳の時、岡本太郎著「今日の芸術」を読んで衝撃を受ける。24歳で渡タイ、バンコクでサラリーマンと芸術家の二足のワラジ生活を3年間送る。28歳から1年間で22ヵ国を巡る世界一周旅を敢行。旅先で路上ワーカーたちの出会いに感銘を受け、「路上ワークの幸福論」を出版。同書はKinokuniya Bangkok店&EmQuartier店でも発売中。2020年6月3日〜7日まで目黒区美術館で最大規模の絵の展覧会予定。

HP:yosukenakano.com
Instagram:@yousukenakano

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