中野陽介コラム

35 【可動経済】「動く森」(タイ/バンコク)

旅する芸術家が綴る世界で出会ったしばられない働き方 世界の路上ワーカー

 バンコクの歩道を歩いていると、一瞬目を疑ってしまった。

 動くはずがない植木の緑が、向かい側からこちらに近づいてくる。オカシイ。

 正体を知って、思わず笑ってしまった。

 僕の動揺もつゆ知らず、路上を通り過ぎていったのは植木屋だった。

 僕は引き返して、彼女にインタビューしようと試みたが、忙しそうにしていて、残念ながら取材NG。写真だけ撮らせてくれると、彼女はまた歩いて行ってしまった。

 豊かな緑が路上を通り過ぎていく。なんて素敵なんだろう。

 ここは路上なのにこんな緑に出合うことができ、目にも心にも優しい路上ワーク。

 売る本人がそんなことを考えているかはさて置き、コンクリートジャングルの中で「動く森」に遭遇したような気分になって興奮した。

植木を載せたリヤカーを引く女性

寄稿者プロフィール
  • 中野陽介 プロフィール写真
  • 中野陽介

    1987年福岡生まれ。19歳で渡米し、Los Angeles CityCollege卒業。23歳の時、岡本太郎著「今日の芸術」を読んで衝撃を受ける。24歳で渡タイ、バンコクでサラリーマンと芸術家の二足のワラジ生活を3年間送る。28歳から1年間で22ヵ国を巡る世界一周旅を敢行。旅先で路上ワーカーたちの出会いに感銘を受け、「路上ワークの幸福論」を出版。同書はKinokuniya:Bangkok店&EmQuartier店でも発売中。

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