中野陽介コラム

36【スキマ経済】 「仏像屋」(タイ/バンコク)

旅する芸術家が綴る世界で出会ったしばられない働き方 世界の路上ワーカー

 バンコクを歩いていると、路上でたまに見かける仏像屋。ブッダが彫られた小石や小さな彫刻を売っている。仏教が広く親しまれているタイならではの路上ワークである。

 確かに、ブッダの彫り物を首から掛けているトゥクトゥクの運転手や、それらをきれいにダッシュボードの上に並べているタクシーの運転手をよく見かけた。通の人はルーペを使って細部まで綺麗に彫られているか、価値があるものかどうかを見極めてから購入している。 

 メインターゲットはタイ人の仏像マニア、仏教信仰者などだが、観光客にとっても面白いお土産になるから、外国人が興味深そうに足を止めて眺めていた。ターゲットが狭くてもそれを見捨てず、逆にチャンスと捉えて狙う。

 どれも一個100バーツ(約300円)。週6日、14時~18時まで働く。平均して1日に20人ほどのお客さんが立ち寄っていくそうだ。1ヵ月の売上は1,500~3,100バーツ(約4,500~9,300円)になるという。 

路上でブッダが彫られた小石や小さな彫刻を売っている仏像屋

 「お金より大切なものは?」という質問には「No money No life」と答えた。「あなたにとっての神様は?」と聞くと、白髪の混じったダンディーな店主が「もちろんブッダさ」と元気よく答えてくれた。最後に「俺はバンコクを案内できるから、ガイドが必要なら言ってくれ」と営業トークまで挟み敏腕営業マンの側面も見せてくれた。

寄稿者プロフィール
  • 中野陽介 プロフィール写真
  • 中野陽介

    1987年福岡生まれ。19歳で渡米し、Los Angeles CityCollege卒業。23歳の時、岡本太郎著「今日の芸術」を読んで衝撃を受ける。24歳で渡タイ、バンコクでサラリーマンと芸術家の二足のワラジ生活を3年間送る。28歳から1年間で22ヵ国を巡る世界一周旅を敢行。旅先で路上ワーカーたちの出会いに感銘を受け、「路上ワークの幸福論」を出版。同書はKinokuniya:Bangkok店&EmQuartier店でも発売中。

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