【連載】藪本 雄登氏がアドバイス! 新興メコンの最新法務事情 Vol.09

【連載】藪本 雄登氏がアドバイス! 新興メコンの最新法務事情

カンボジア編 カンボジア労働仲裁事例

2014年28号 裁定・事案内容

労働組合は、A社を解雇になった4名(B~E氏)の労働者の復職および解雇から復職までの賃金の支払い、および、その4人とは別に解雇になった4名(F~I氏)の労働者の解雇補償金の支払いを求め、労働仲裁委員会に労働仲裁の申立てを行いました。

判断内容 労働仲裁委員会は、1「B~E氏を復職させよ、B~E氏に対し、解雇から復職までの賃金を支払え、B氏を就業規則に基づいて罰せよ」、2「F~I氏に対して解雇補償金を支払え」との仲裁判断をそれぞれ下しました。

理由 今回は1の「解雇の正当性」について論じます。労働仲裁委員会は、A社がB氏を、B氏が無断欠勤を5回したため、就業規則の懲戒処分規定に基いて解雇したことを認定。その上で、同社就業規則の懲戒処分規定には「5度目の中程度のmisconductについてはserious misconductがあったものとする」との記載があること、他方、「5度目の軽微なmisconductがあった場合にはserious misconductがあったものとする」という記載がないことを認定した上で、A社によるB氏の解雇は就業規則に則って行われたものではないと判断しました。労働仲裁委員会は、労働法27条によれば、懲戒処分の懲戒事由の重大さに伴ったものでなければならないと述べた上で、当該懲戒事由には解雇処分を下す程の重大性は認められないため、B氏の解雇は労働法27条に反すると判断しました。

まとめ 本仲裁裁定などによって、解雇が不当解雇であると判断された場合には再雇用の可能性があり、解雇を行うことのリスクが飛躍的に高まったと言えます。当該リスク低減のために、就業規則の整備並びに就業規則に基づいた手続および証拠作成・収集をお勧めします。

◆ラオス編 ラオスの最低賃金 最新動向

労働社会福祉省より2015年2月9日付でラオス最低賃金改正に関するガイドライン(No.808/LSW)が発行されています。

1.最低賃金額

最低賃金は、今回ガイドラインの発行により2011年に改正された626,000キープ/月(約78USドル)から、2015年4月1日より900,000キープ/月(約110USドル)となることが決定しました。全ての事業者は、本年4月1日より、上記最低賃金に関する規制に従う必要があります。

2.適用対象

最低賃金規制の対象はあらゆる社会経済事業体の生産、サービス事業体で働く労動者、技術を持たず非熟練で専門性の無い非正規労動者および家庭内労動者を主に対象としていますが、別途規定される国際機関で働く労動者は除くと規定されています。

3.まとめ

下記表の通り最低賃金制度のないミャンマーを除いて、ラオスの最低賃金はカンボジアよりやや低く、メコン地域内では最低水準にあります。今回の賃上げ後も、安価な労働力を利用することができるという競争上の強みは依然として維持されるものと理解しています。

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