【連載】『健康×職場』環境改善で人もビジネスも変わる! Happy Workplaceへの道

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【第四回テーマ】『Emotional Intelligence』
タイで事業を展開する上で、職場におけるヘルスプロモーションはどのような意味を持つのか。
タイ政府の専門機関Thai Health Promotion Foundation(通称:タイヘルス)が10年かけて推進している、職場における健康づくりプログラム「Happy Workplace Program」を中心に、タイならではの取り組みや成功事例について、世界のトレンドも織り交ぜながら大和茂氏がレポート。
今回は、従業員の豊かでしなやかな心づくりを実現すべく『Happy Soul』に力を入れているLION Corporation (Thailand) Limited(. 以下:ライオンタイランド)のケースを紹介。職場に関する理解を深め、より良い職場環境づくり、そして従業員の健康と幸福度を高めていくための取り組みに学ぶ。

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Happy Workplace Programとは?

タバコ及び酒の特別税を財源に、タイ国民の健康増進や幸福度向上に関わる様々な施策を、企業や大学などと推進するタイ政府の専門機関タイヘルスが開発した職場健康づくりプログラムの総称。
「Happy 8」と呼ばれる8つの項目から構成されており、8つの多面的なアプローチを通して、従業員の身体的・精神的な健康増進及び幸福度向上を実現させ、従業員の定着率向上や信頼関係構築を目指している。

第四回目のテーマは「Emotional Intelligence(以下、EI)」。日本語では、『心の知能指数』と翻訳されます。
EIとは、『自分や他人の心の中で起きている感情を認識、理解、調整する能力』と考えられており、米国ハーバード大学のダニエル・ゴールマン教授が1995年に発表した世界的なベストセラー著書『Emotional Intelligence』を機に、ビジネスの場においてもEIが注目されるようになりました。そして最近では、米国グーグル社やインテル社で、瞑想などを取り入れたEIを高める従業員向けトレーニングが実施されるなど、グローバル企業において、改めて従業員のEIを重要視する動きが出てきています。

なぜ、グローバル企業でEIが再び注目されているのか

EI(心の知能指数)の対義語として利用されるIQ(知能指数)の高い人が必ずしもビジネスの現場で高い成果を発揮するわけではく、むしろEIの高い人が、自らの感情や行動を適切にコントロールし、様々な人を上手に巻き込み高い成果を出す傾向にある、という点が着目されています。
タイにおいても一流大学を成績優秀で卒業した人材を採用しても期待していたほどの成果を発揮してもらえなかったとの声を聞くことがありますが、このEIが影響しているかもしれません。
タイ政府の方針としては、タイヘルスが推進する職場健康づくりプログラム『Happy Workplace Program』を通じて、経営者が意識的に従業員のEIを高めていくことを重要視しています。特にタイ文化の基礎を成している仏教と深く関係する『Happy Soul (※左記コンセプト図参照)』は、多くのタイ人経営者や教授等からも重要であると考えられており、同プログラムを積極的に推進している組織においては、非常に高い優先順位で『Happy Soul』に繋がる活動が行われています。

ライオンタイランドが取り組む、毎週恒例の行事とは

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社員食堂にて御経を唱える僧侶たち

ライオンタイランドではタイ人のBoonyarith Mahamontri社長のリーダーシップの下、日本人の三上副社長らが中心となり、Happy Workplace Programを10年近く継続しています。その実績が評価されタイヘルスからも表彰を受けるなど、従業員を大事にする企業として広く知られています。
同社ではHappy Workplace Programを構成するHappy8(8つの領域)の中でも『Happy Soul』に力を入れており、特徴的な取り組みの一つに、毎週月曜日の朝7時半(シラチャ工場は毎週金曜日)に、9名の僧侶を招いて御経を唱えていただくと同時に、経営陣と従業員が共に托鉢を行う、という例が挙げられます。
朝7時過ぎになると、社員食堂に従業員が自らの意思で集まり、Boonyarith社長をはじめとした同社の経営陣も一緒にこの『Happy Soul』活動に参加します。慌しい月曜日の朝に、僧侶から御経が読み上げられ、各自が祈りを捧げる機会は、まさに個々人の心を豊かにする時間であり、従業員にとって心を整えることができる貴重な機会になっています。

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経営層・従業員ともに托鉢する様子

タイ社会における仏教とは

Boonyarith社長との対談の中で、特に強調して述べられていたことの一つに、『仏教との交わりは、多くのタイ人にとって生活の一部であり、家族と過ごすことと同じぐらい重
要なこと』という言葉がありました。
時間的制約でなかなかお寺に通うことができない従業員も少なくなく、なかでも地元を離れバンコクや工業団地で働いている従業員は、日常の生活圏内に親しみのある寺院が無い場合もあります。それゆえに、会社が従業員にこうした機会を提供することは、日本人が考えている以上に大きな意味があると考えられます。

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『Happy Soul』に関して議論を交わすBoonyarith社長(左)と筆者(右)

タイヘルスとしても健康の定義に『Spiritual Health』を含めており、心を落ち着かせて年始を穏やかに迎えるべく、静寂の中で瞑想をしながら元旦を迎えるイベントを開催す
るなど、タイ国民のEI向上に向けた機会を提供しています。Happy Workplace Programは、このようなタイ文化に基づいた価値観や生活習慣を大事にし、我々日本人がタイにおいて事業を推進する上で、職場という観点からどのような点に気を配り、どのようなことを積極的に進めていくべきなのかを教えてくれます。
次回2015年1月号では、健康的で快適な職場づくりに包括的に取組むROHM Integrated Systems (Thailand) Co.,Ltd.の事例をご紹介します。

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三上副社長(右から2番目)とMs. Sasithon Rochanacirin(右端)、Ms. Wanna Thamromdee(左端)を交えて

 

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大和 茂 Shigeru Yamato
Thai Health Promotion Foundation
Happy Workplace International Project
ディレクター

1978年生まれ。株式会社NTTドコモを経て、タイにMarimo5 Co., Ltd.を設立すると同時に、タイヘルス公式プロジェクト責任者に就任。2007年から約5年駐在員として働く一方で、チュラローンコン大学労働経済学修 士課程修了。帰任後は、ICTヘルスケア事業の海外展開等に従事。 健康的な職場と企業成長の関係性を研究すべく、早稲田大学スポーツ科学研究科博士課程在籍中。

Happy Soul ワークショップ
~『タイの職場でなぜHappy Soulが重要なのか?』~
【日時】2014年11月29日(土) 15:00~17:00(開場14:30)
【場所】Marimo House (Sukhumvit Soi16)
【参加費】無料(事前申込み制) ※定員10名
【言語】英語と日本語
スケジュール
15:00-15:30 挨拶及びHappy Workplace Program概要説明
15:30-16:00 講演『タイの職場でなぜHappy Soulが重要なのか?』
16:00-17:00 瞑想に関するレクチャー及び体験
主催:タイ健康促進財団、Marimo5 Co., Ltd.
【お申込み方法】※ 締切り11月25日(火)事前申込み必須
1. 名前 2. 所属 3. 電話番号 4. 瞑想経験の有無を明記の上、
下記アドレスまでご連絡ください。
E-mail: info@happyworkplace-international.com
URL: www.happyworkplace-international.com

【お詫び】 9月号掲載の本連載において、タイ全国民に対する肥満人口の数値に誤りがありましたことを、深くお詫びいたします。

 

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