『健康×職場』環境改善で人もビジネスも変わる! Happy Workplaceへの道

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タイで事業を展開する上で、職場におけるヘルスプロモーションはどのような意味を持つのか。
タイ政府の専門機関Thai Health Promotion Foundation(通称:タイヘルス)が10年かけて推進している、職場における健康づくりプログラム「Happy Workplace Program」を中心に、タイならではの取組みや成功事例について、世界のトレンドも織り交ぜながら大和茂氏がレポート。
今回は、今後世界のモデルになるとも考えられている「健康寿命の延伸」に向けた日本の経済産業省(※1)や企業の取組みを紹介。
※1Ministry of Economy, Trade and Industry in Japan

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Happy Workplace Programとは?

タバコ及び酒の特別税を財源に、タイ国民の健康増進や幸福度向上に関わる様々な施策を、企業や大学などと推進するタイ政府の専門機関タイヘルスが開発した職場健康づくりプログラムの総称。
「Happy 8」と呼ばれる8つの項目から構成されており、8つの多面的なアプローチを通して、従業員の身体的・精神的な健康増進及び幸福度向上を実現させ、従業員の定着率向上や信頼関係構築を目指している。

 

第6回目のテーマは「健康寿命(Healthy Life Expectancy)」。健康寿命とは「健康上問題なく、自立した生活ができる生存期間」と定義できます。世界保健機関(WHO)によると、2012年の日本とタイの平均寿命と健康寿命は下記の通りです。

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世界最長寿国の日本において、さらには高齢化が始まっているタイにおいても、平均寿命と健康寿命には8年から11年という大きな差があります。この差は、人々が不健康である期間を示しており、世界的に健康寿命を延ばす取組みが重要視されています。
タイ政府の専門機関タイヘルスも成人向けにはHappy Workplace Programを通して職場健康づくりを推進してきていますが、「健康寿命」を意識した取組みという観点では工夫の余地があると考えられます。それではどのような取組みが重要となってくるのでしょうか。

日本の経済産業省が推進する健康経営の取組み

経済産業省は、現在、日本再興戦略の一つとして位置づけられている「健康寿命の延伸」に向けて、「企業」つまり「職場」に着目して従業員の健康づくりを促進する政策を展開しています。とりわけ企業経営層への意識喚起が重要との観点から、「健康経営銘柄」という新たな企業評価の取組みを通して、日常的な従業員の健康づくりがしっかりと認められる環境づくりを始めました。これは東京証券取引所の上場企業の中から、「健康経営(※2)」に優れた企業を選定し、投資家に対して長期的に企業価値が向上する可能性がある企業として紹介することで、企業による「健康経営」を促進することを目指しています。
銘柄の評価方法としては、従業員の健康に関する取組みが経営基盤から現場施策まで様々なレベルにおいて連鎖的に行われることが重要であるという考えのもと、経営から現場まで各視点から健康への取組みができているか否かを評価することが特徴です。

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バランスボールがオフィスの椅子に!

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バランスボールを利用して仕事をしているヘルスケア産業課の皆様

この仕組みを推奨する経済産業省としても、ヘルスケア産業課を中心にバランスボールに座って仕事をしたり、歩数やカロリーが分かる活動量計も利用したりするなど健康的な職場環境づくりに積極的です。
また昨年6月にタニタ食堂と提携して経済産業省本館地下1階にオープンした「KENKO食堂」では、一食のカロリーが500キロ程度にも関わらず美味しい食事を食べることができて、管理栄養士によるカウンセリングも可能です。

日本とタイ、国を越えて広がる健康経営

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健康経営銘柄に関して経済産業省の江原氏から説明を受ける筆者

健康経営に積極的に取組む企業も増えており、下記の表に記載した通り、各社が工夫をしながら取り組みを進めています。
こうした各企業の活動は実際に従業員の肥満解消や禁煙実現、医療費の削減といった具体的な成果へと繋がっており、健康寿命を延ばすために大きな役割を担っていることは明らかです。
最後に、経済産業省商務情報政策局ヘルスケア産業課の江原章太さんに、今後の抱負とタイの職場健康づくり政策に関して意見を伺いました。
「健康経営銘柄のように大企業の取組みを促進する仕組みはもちろん、今後は中小企業を含め、さらに多くの企業による健康経営の取組みを促進するような施策を進めていきたいと考えています。また多くの日本企業が進出するタイは、日本にとって重要なパートナーです。そのようなタイの政府専門機関であるタイヘルスが推進するHappy Workplace Programは、『従業員を大事にする』という企業経営の重要な部分を具現化しており、参考になることも多いです。経済産業省としても、タイをはじめとした海外の事例を学ぶと同時に、健康経営銘柄などの日本の取組みの情報発信も行いたいと考えています」。

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ヘルシーマイレージも貯まる就業後のヨガ風景(三井化学)

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旬の具材が使われる野菜たっぷりみそ汁(デリカフーズ)

 

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大和 茂 Shigeru Yamato
Thai Health Promotion Foundation
Happy Workplace International Project
ディレクター

1978年生まれ。株式会社NTTドコモを経て、タイにMarimo5 Co., Ltd.を設立すると同時に、タイヘルス公式プロジェクト責任者に就任。2007年から約5年駐在員として働く一方で、チュラローンコン大学労働経済学修士課程修了。帰任後は、ICTヘルスケア事業の海外展開等に従事。 健康的な職場と企業成長の関係性を研究すべく、早稲田大学スポーツ科学研究科博士課程在籍中。

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