もう悩まない!人材採用&育成のコツを解説 Vol. 15 タイ人事相談室



『獲得した優秀人材を定着させ、活躍させられる組織づくりのポイント』の最終テーマ、人材と組織について、日本におけるコーチングの草分け的存在であるコーチ・エィの執行役員 兼 タイ法人代表である、青木美知子さんにお話を伺いました。

青木美知子
OACH A (Thailand) Co., Ltd.
Managing Director

東京海上火災保険株式会社(現東京海上日動火災保険株式会社)商品企画部門にて、主に官公庁、団体、金融機関向けの新商品開発、および新規マーケットへの参入戦略立案などに携わる。その後、グループ傘下の生命保険会社に出向。カスタマーサービス事務の企画・運営、およびコールセンターの立ち上げに参画。100人規模の組織を率いながら組織拡大を図る中でコーチング・マネジメントを実践する。株式会社コーチ・エィ執行役員。

「人材と組織」を考える(前編)

下川 企業がマネージャークラス以上の人材採用にあたって求めているのは、即戦力としてのパフォーマンスです。優秀な人材はチャレンジ精神に溢れ、高い意識を持ち合わせていますが、採用したタイ人材の能力を十分に引き出せず苦心されている日本人経営者様が多いように感じます。

コーチ・エィさんは、エグゼクティブを起点に組織全体の能力開発を行う「システミック・コーチング」を提供されており、青木さんもコーチとしてご活躍ですね。経営判断に携わるエグゼクティブのコーチングに従事されてきたご経験から、日本人経営者が優秀なタイ人材の能力を活かせる組織マネジメントについてご意見をお聞かせください。

青木 採用した人材がどんなに優秀だったとしても、組織の中で機能的に活躍するかどうか、つまりは周囲とうまく協業できるかどうかが大切です。今までその方がパフォーマンスを上げていた環境や役割と、新しい環境・役割とは大きく変わっている、ということを採用した日本人側が理解しておく必要があります。

ご本人にとっては非常に大きな変化ですから、いかにスムーズに環境適用できるかを日本人マネジメント側が積極的に関わり、早期に活躍できるようフォローアップすることです。優秀な人材ほど、上司がコーチ的に関わるコーチングが有効でしょう。

下川 タイではコーチングについてどの程度の認識が得られているのでしょうか。

青木 タイに来て実感しましたが、タイ人エグゼクティブの中には、コーチをつけた経験のある方が想定以上に多くいらっしゃいます。日本では「コーチング=上司が部下を褒めること」というイメージがありますが、タイ人エグゼクティブの方は「コーチとは、自身のパフォーマンスを上げ、それを組織に還元するために活用するもの」と理解されている方も多く、むしろ日本人のほうがコーチングへの馴染みは深くないと感じることがあるくらいです。

下川 確かに、優秀なタイ人材には会社勤めをしながら、英語でMBAやそれぞれ専門分野の修士号を取得している方も多くいます。能力開発を、一種のステータスと捉えている方もいらっしゃるかもしれません。

青木 日系企業では、タイ人優秀人材をどれだけ活かしていけるかは、日本人リーダーのタイ人材への関わり方が大きく影響しているケースがほとんどです。タイ人リーダーへのコーチ依頼もありますが、日本人トップマネジメントに、コーチをより活用していただくことのほうが投資効果は大きいように感じています。「タイ人がより活躍できる、より育つ環境をつくるのは日本人マネジメントだ」と考えていらっしゃる経営者の方々は、人材と組織の可能性を引き出す手段としてコーチングを使ってくださっています。

(ArayZ来年1月号に続く)


下川ゆう yu shimokawa
en world Recruitment (Thailand) Co., Ltd.
日系チーム チーム・マネージャー
立教大学卒業。大手人材紹介会社の東京本社で経験後、2009年に来タイ。以来、在タイ日系企業への人材紹介に従事。顧客企業の組織発展のための採用支援を得意とし尽力している。

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